Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

ファイアフォックス

2010-04-03 19:45:17 | 映画(航空)
1982年のアメリカ映画。クリント・イーストウッド主演。
原作小説はクレイグ・トーマス著。ソビエトで完成した最新鋭高速戦闘機ミグ31ファイアフォックスを盗んでアメリカに乗って帰ろうという工作員(に任命された米国人戦闘機パイロット:ミッチェル・ガント)のお話。

 著者は函館空港へのベレンコ中尉亡命事件(当時世界最速のミグ25フォックスバットに乗ってソ連軍基地を脱走。日本の防空警戒網を突破して函館空港に強行着陸した大事件。)にヒントを得たと言われている。

 当時は「鉄のカーテン」と呼ばれるほどソ連の情報が少なく、ミグ25の存在が判ったのは「イスラエルのレーダーが敵機を捕捉し迎撃したが、迎撃戦闘機(マッハ2.1)を楽々と振り切って逃げ去った。後からレーダーの記録を解析したらマッハ3.3と算出された。」という状態。当時の対空ミサイルの最高速度はマッハ3だったので、この敵機が最高速度で逃げ続ければ自動追尾ミサイルは追いつけないまま燃料切れになる。西側諸国は慌てて対空ミサイルの軽量化・高速化に追われる事になった。
 2010年現在、対空ミサイルの最高速度はマッハ3.3~3.5に上がっており、各国の戦闘機は高速化よりもステルス化やデコイ発射によってミサイルから逃れる工夫に注力している。

 当時はまだミグ27までしか登場していなかったので、ミグ31は想像上の機体にすぎなかった。その数年後、本物のミグ31(フォックスハウンド)が登場したとき、映画とは似ても似つかない外観だったので、この映画は「見て見ぬふり」をされる存在になってしまった。

そう言えば米国のステルス戦闘機F117ナイトホークも本物が飛行する何年も前から想像図を元にF-19ステルスの名前で数社から違う外観のプラモデルが発売され、結局本物が登場したときは全く違った外観だったというような笑い話がある。

 原作小説はミッチェル・ガント操縦士のベトナム戦争のPTSD描写及びソビエトへ潜入後のロシア人鬼刑事の執拗な追跡とポーランド人協力者の命がけの援助というサスペンス部分が中心の「スパイもの」だが、映画は離陸後の空中逃亡が中心の「航空アクションもの」の味付けが濃くなっている。

 海面近くや雪原を音速飛行したときの「衝撃波で飛沫が巻き上がる」描写は「民間人が自分で体験する機会が全く無い」ので、とても迫力が有る。ただし空中戦の描写は「明らかに模型使用と判るチープな造り」なので、過大な期待はしないほうが良い。

 ステルス化装置、自動追尾ミサイル、脳波感知操作システムなど空想的な要素が沢山出てくるが、当時の航空ファンから見ると「お笑い」でしかなかった。
 函館のMIG25の実地検分の結果、ロシアは電子装置の技術が米国に比べて大幅に遅れており、強力なエンジンとブースターで最高速度だけは出せるものの「レーダーを含む射撃管制ソフトは米国より20年以上遅れている」と分析された。つまりドッグファイトに弱い「高価すぎる高速偵察機」としての価値しかない機体だと判明したのだ。

 余談だが、米国のマッハ3級航空機(SR71偵察機)は高い摩擦熱に晒される翼前部に高価なチタニウムを使っていたのに対し、MIG25は比較的安価な鋼鉄を使っていた事がこのとき判明し、米国軍事関係者を驚かせた。こうすれば安く出来るが機体は重くなり、エンジンパワーを余分に必要とし燃費も悪くなる。


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