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≪夕凪の街 桜の国≫ あなたに捧げたいこの映画・・2007-8-15

2022-08-06 | 本・映画・ドラマのレビュー&気になる作品

松山くんの主演映画「ウルトラミラクルラブストーリー」、
お相手役に決まった麻生久美子さんはこんなに素晴らしい映画が代表作です。
戦争と平和についていつも深く真摯に考える松山くんにとって、
最良のお相手役ではないでしょうか。
麻生さんと広島や戦争のことについても語り合って欲しいな。
ひとりでも多くの方にご覧いただきたい映画です。
(2007-8-15)



やっと観に行けました。最初ッから最後までずっと泣きっぱなしでした。
でも広島を愛しています、こころに広島をいつも抱いていたいです。
言葉で上手く伝えられないのがもどかしいですが、
ぜひこの映画をごらんください。祈・・




広島のある 
 日本のある 
  この世界を 
   愛するすべての人へ 

  ≪夕凪の街 桜の国≫



原爆投下から13年が経過した広島の街。
そこに暮す平野皆実(麻生久美子)は、
会社の同僚・打越(吉沢悠)から
愛を告白される。しかし、
彼女には家族の命を奪い、自分が生き残った
被爆体験が深い心の傷になっていた。
その彼女の想いを打越は優しく包み込むが、
やがて皆実には原爆症の症状が現れ始める。


皆実が26歳の若さで世を去ってから半世紀後。
皆実の弟・旭(堺正章)は、家族に黙って
自宅のある東京から広島への旅に出る。
その父を心配する娘の七波(田中麗奈)は後を追ううちに、
家族が背負ってきたものや自分自身のルーツに
思いを馳せていく・・・。



被爆して死に行く妹を看取り、
瓦礫のなか、母を捜した。
被災したみんなが肩を寄せ合って暮す
雨漏りのたえない長屋。
靴が磨り減るからと、
川原を靴を脱いで歩く皆実。
なのに皆実は
「どこかで、お前の住む世界は
そっちじゃないという声がする・・・。
うちは、この世におってもええんじゃろうか?」
と涙する。
自分が生き残ったことに負い目を感じ、
幸せに飛び込んでゆけない皆実を打越は
「生きとってくれてありがとうな」と
優しく抱きしめた。
皆実は言う、「広島に原爆が落ちたのではない。
落としたんだ。そこにいるひとがみんな
死ねばいいと落としたんだ」
また死に臨んで、
「原爆を落とした人は
原爆落としてから13年もたってから
またひとり殺すよ。やったーじゃね」
と淋しく笑う。
背中に背負った、死にゆく妹が
自分に「長生きしいや」と言ったのは
もっと生きたいという叫びだったのだと。
皆実も亡くなるとき、打越と旭に
「長生きしいよ」と言い残すのだ。

時がたって、
皆実の姪にあたる七波は父親の行動に
不信感を持って父を尾行、
広島を旅することになるのだけれど、
父が嫁に迎えた京花が長屋の住人で
被爆者であったため、自分と弟にも
原爆症の発現が今日明日かもしれない、
特に弟は被爆2世としての自分の
将来に不安を感じ、恋人である
七波の親友と別れを決意してる・・
そのことに気づく。

時間が交錯するなかで
繰り広げられる、
歴史の継続としての内なる「広島」。

私は原爆ドームがあんなに小さいのに
ずっと雨風のなかに晒されて
痛々しく想っていました。
だけどこの映画を見て想ったんです、
あれは建物のかたちをもった、
被爆したひとたち、ひとりひとりなんだと。
私ひとり想ったことですが、
原爆ドームの周辺に散らばったレンガたちは
捨て置かれているのではなく、
ひとつひとつが墓石なのだなと想いました。
ひとつひとつの墓石に手で触れて
冥福を祈りたいです。

広島が夕凪の街だとはしりませんでした。
でもたしかに去年訪れた広島は暑くて暑くて、
夫が熱中症にかかってしまったくらいでした。
あの日もこんなに暑かったと聞いて、
8時15分の原爆投下後、水を求めて
川原に下りた人たちのことを想うと
あらためて、胸がつまりそうでした。

だけど戦争に一方的な善と悪がないように
原爆を投下したアメリカだけが
悪いのではないと、そのことも我々は
きちんと考え続けなくてはなりません。
7月26日、アメリカ、中国、イギリスが
ポツダム宣言(降伏勧告の宣言)を
行ったのに、それを受け入れなかったのです。
日本がポツダム宣言を受諾したのは、
8月10日、長崎における原爆投下の
翌日でした・・。

内なる広島を抱いて生きるということ、
それは戦争の加害者、被害者を問わず、
歴史に学んで、よその家族単位からの継続する
幸福、不幸をわがものとして、
決して繰り返すまいと
日々決意をあらたにしてゆくことではないのかなと
想いました。

あなたに見てほしいです。
お近くでご覧になれなければ、
DVDになってから
きっとご覧になってくださいね。
長々と記事を読んでくださって
どうもありがとうございました。

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12 コメント

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「夕凪の街 桜の国」は (うらら)
2007-08-15 22:50:48
よく行く映画館で今上映されていて、見ようかどうしようか、迷っていましたが、ここで樹さんのレビューを読めてよかったです。L図書で取り上げられる本や映画はどれも、読んで(見て)よかったといつも思います。
夏が終わる前に、ぜひ見に行きたいと思います。
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うららさんへ ()
2007-08-15 23:46:32
この夏、怪談とこの映画で、麻生久美子さんを2回観ました。とても時効警察の三日月さんとは思えなかったです(笑)
怪談でもとてもせつない女心を演じてらしたし、すっかりファンになりました。もう、実生活でしあわせになってもらわないと困る、の勢いです。
うららさん、きっときついとは思うのですが、ぜひご覧になっていただきたいです。時制があちこち飛ぶのでちょっと観づらいかもしれませんが、田中麗奈ちゃんも毅然として、でも家族思いの素敵な女性を演じてました。麻生さんと麗奈ちゃんって伯母・姪の間柄なんですけど、ホントによく似てました。麻生さん、何曲か歌います。細くて高い声でせつなかったですよ、ぜひご覧になってくださいね。そして、感想を聞かせていただけたらうれしいです。
返信する
Unknown (ぽちたま)
2007-08-16 00:35:28
今日、この記事の前を何度も行ったり来たりしてたのはきっと樹さんにはお見通し・・・・ですよね(苦笑)

私は先月観ました。“一番観やすい席”に一人で座ってたんですが、両隣の方が気になってしまい、本編開始後すぐに前の空いてる席に移動しました。
ハンドタオルが冷たくなるまで、映画館で泣いたのは初めてでした、壊れた蛇口みたいに。

感想は・・・やっぱり書けそうにないです、ごめんなさい、樹さん。
樹さんの記事を拝見してる間にも泣けてきてしまって。
ただ本当に、たくさんの方に観ていただきたいと思います。
私はこの映画に会えて、良かったです。
原作漫画も、素晴しいですよね。
返信する
「夕凪の街 桜の国」 (hiro)
2007-08-16 00:57:17
今日は(もう昨日になってしまいましたが、)
終戦記念日ですね。
8月6日9日は毎年手を合わせています。
病院で千羽鶴を折って代表者が毎年原水禁世界大会に参加するのですが、本当にあの暑さを体験すると、その時の暑さを思いみんな涙してしまうそうです。
出来るだけ若い人達にいってもらい、感想を聞かせてもらうのですが、心が痛くて辛くなってしまいます。でも絶対に風化させてはいけない出来事ですね。
辛くてもこの映画は観ようと思います。
息子も連れて行きたいですね・・・。
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ぽちたまさんへ ()
2007-08-16 01:05:39
そうでしょ、そうでしょ、そうやってごめんなさいって言いに来るひとなんですよ、あなたは。私も相当苦しみました、あの素晴らしい映画をどんなふうに伝えたらいいのか。でもいいや、記事にしておくだけで、ご覧になってくださるかたは思い出してくださる・・て思いました。皆実を思って、ずっと泣いていました。京花のかわいさとせつなさを思ってずっと泣いていました。私もタオル地のハンカチが重くなってしまいましたよ。
金井くんでしたっけ、七波さんの弟役。
あの青年もいい映画を選んで出ますね。
≪学校≫3か4で屋久島に行く少年を演じてましたよね。
リアルなお芝居をできる俳優さんたちがいてくださってこそ、いい映画が残ってゆくんだと今更ながらにおもいました。


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hiroさんへ ()
2007-08-16 01:09:35
うちはももと一緒に見に行きました。「お母さんの泣き方すごい・・涙腺決壊時間更新・・」とか言ってましたが、自分だって泣いていたんです。でも感想は聞きませんでした。自分自身で気持ちを整理整頓して欲しいと思ったからです。
ももはポツダム宣言にこだわっていました。男の子は歴史が好きというけれど、
近代史、現代史は中々手がまわりません。せめて、映画だけでも見せてやりたいです。ぜひ、息子さんと一緒にご覧になってくださいね。
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Unknown (とも)
2007-08-16 08:33:54
広島は私が生まれたところから割りと近いのでよく
お婆ちゃんにあの日のことを聞きました
私は聞くたびにお婆ちゃんになにもなくてよかったと
思いました
山を越えたとこにきのこ雲が見えたそうです
広島は復興していろんなものが新しくきれいに生まれ変わりましたでも、あのドームをあのまま残しておくことであの惨いことを忘れないようにしたのでしょう
語ると長くなるし暗くなりますが、私達が忘れたら世界中を助けることができなくなるかもしれない
こういう映画こそ世界の人々に見せたいですね
私もDVDで子供達と見ようと思います
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ともさんへ ()
2007-08-16 23:55:02
コメントしにくい、難しい記事に寄り添ってくださってありがとうございます。
ともさん、ともさんの言葉にとてもとても感動しました、

>私達が忘れたら世界中を助けることができなくなるかもしれない

すごい言葉ですよ、ともさん。泣いてるばかりじゃだめです。ともさん、ありがとう。そうですよね、原爆の記憶があるがゆえに、世界に発信できるのですもんね。映画のパンフレットもゆっくり、きちんと読みます!!記憶のために。
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皆実の姿が忘れられません。 (うらら)
2007-08-19 01:14:05
「夕凪の街 桜の国」見ました。
皆実から皆実の母へ、旭から京花、そして七波へと渡って行った桜の髪留めが、家族の繋がりの象徴であると共に、何十年も後の世代へ影響を与え続ける原爆の恐ろしさをも表しているようでした。そして私たちに、いつまでも忘れてはいけないよとも訴えかけているようでした。

原爆の本当の恐ろしさを再認識でき、個人的には娘としての立場で、家族のあり方についても考えさせられました。この作品に出会えて、本当によかったと思います。映画館で久しぶりに大泣きしました。



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うららさんへ ()
2007-08-19 01:48:27
 うららさん、ありがとうございます。これほど、感想を言葉にまとめるのが難しい作品はないと思います。皆実のことを思うと、もうつらくて悲しくてせつなくて、たまりません。だけどそういう皆実の姿をどうして原作者が世に送り出したのか、また映画化しようと思ったのか、そのことを考えなければと思いました。
そうですね、うららさんがおっしゃるとおりです。髪留めは語り継がれるべき記憶でもあったのですね。髪留めを胸に押し抱いて号泣する姿、それは私たちがこの映画をまさに観たのにも重なる気がします。この映画を伝えたいですね、ひとりでもおおくのひとに。それがこの映画を通して、私たちのできる祈りと誓いかもしれません。
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