昨今の流行は「チョイ高」であるという。「節約に疲れた人々」ではないとしたら、
「チョイ高」を購入している人は誰なのか。
★★★超長い記事なので、時間があるとき読んでくださいね。
「“チョイ高”商品」
売れ行き好調のワケ
コンビニスイーツの流行と男子ファンの増殖の理由はさほど不思議ではない。
専門店だと敷居が高いがコンビニなら購入のハードルも低い。男も買える。
海外ではカフェやレストランで豪快にケーキを食する男性をいくらでも目にすることが
できるし、日本男子はアルコール離れだの草食化だのといわれる今日、食べない理由が
ない。そして、ケの日(日常)需要や男性需要を巡り各社は商品開発にしのぎを削り、
市場が形成されたのである。
紳士服チェーンの若年層と女性顧客増加もさほど難しい話ではない。
その動きが顕在化しはじめたのは、従来ロードサイドにあった店が都市部・街ナカに
進出してきた頃からだ。ロードサイド時代は沿道にのぼりを立て、新聞チラシを大量に
ばらまき、店内にはダサイ音楽がかかっているというオヤジの巣窟のような存在として
昔は若者の目には映っていたことだろう。
それらの紳士服各社は若者向けデザインのスーツを19800円・29800円などの
「2プライス」で販売する展開をはじめた。中国での大量生産をし、価格を低減するだけ
ではなく、デザインや縫製の細部にも徹底してこだわる。最上級のものではないが
イタリア産生地なども用いるようにした。女性用のスーツも展開した。デフレ時代に
「安い価格で中くらいの品質の商品を提供する」という「グッドバリュー戦略」は的中し、
若者だけでなく30~40代も取り込んで大成功した。そのデザイン・モノ作りのノウハウを
本体にフィードバックしたのだ。昨今はさらに撥水性や伸縮性などの機能も盛り込んだ。
男女の若年顧客層増加も時流に合っていた。バブル期のように百貨店で1着購入して
就職活動を行うのではなく、1着目も低価格であること。長引く活動期間で夏物などの
2着目も必要であるからには、低価格と丈夫で動きやすい機能性は必須要素である。
その要件に紳士服チェーン店はミートしていたのだ。
さて、コンビニスイーツも紳士服チェーン店も、年齢や性別という属性・セグメントを
拡大したわけであるが、昨今の流行は「チョイ高」であるという。「低価格で最高の品質を
提供する」という「スーパーバリュー戦略」は理想であるが、そうしたプライシングや
ポジショニングを実現するのは極めて困難だ。目指したのは、「中くらいの価格だが、
(最高の価格に匹敵する)最高の品質を提供する」である「高価値戦略」である。
例えば、コンビニスイーツをブラインドで試食した人は、口々に「専門店と区別が付かな
い」という。しかし、価格は300円近いものも少なくない。紳士スーツはこだわりの高級
素材と縫製。価格は7~8万円を超えるものも多い。しかし、売れているという。
今年の4月~5月頃にマスコミに頻出した「節約疲れ」というキーワード。ユニクロを傘下
に持つファーストリテイリングが、売上高、営業利益で中間期として過去最高を更新した
2010年2月中間連結決算の翌月、失速傾向を見せた。さらに、日本百貨店協会が各社の売上
げ下げ止まりや高額品に動きが見え始めたことなどを発表したことから、各メディアがこぞ
って取り上げたキーワードだ。
今日、「節約疲れ」のキーワードはほとんど目にしない。いつまで経っても消えない景気
の二番底懸念や、本格的な浮上は見られない。不安定な政権、円高、それにともなう産業
空洞化と雇用の不安。今年の前半、世間の多くが節約に疲れていたのは事実かも知れない
が、そのキーワードは、もはや世間の記憶からも消え失せつつある。
では、「節約に疲れた人々」ではないとしたら、「チョイ高」を購入している人は
誰なのか?
スイーツにしろ、紳士服にしろ、とにかく高級な専門店を利用するのが正しいという
志向は、バブル崩壊以降きれいさっぱりなくいなった。失われた「10年」のキーワードは
「華美な消費」の反動でもある「賢い消費」であった。そして失われた「20年」に突入して
いる今日。かつて「賢い」であった行動は、もはや「アタリマエ」になっている。
「華美を廃し、きちんと考えて購買行動をしている」。そんなことを誇れば、
「そんなのアタリマエじゃないの。アンタ、バカなの?」といわれること必定だ。
ハレの日とケの日は峻別され、ケの日の消費も厳選される。
だがしかし、である。
売る側(に、荷担しているマーケターといわれる我々も含めて)は、まだまだ、生活者、
購買顧客、を細かく見る。セグメントするということを怠っているのではないだろうか。
「バブルだ。みんなが高いものを欲しがっているから、それを作って売ろう。」
「バブル崩壊だ。デフレだ。みんながお金がなくて、安いものを欲しがっているから、
それを作って売ろう。」
ちがう。
日本の消費者は、ある意味「洗面器の中の水」のような行動をとる。傾けば一方に
ざーっと寄る。反対に傾けば、もう一方にざーっと寄る。華美なバブル消費と清貧なデフレ
消費とを行き来したこの20年間の消費。水面から底まで、全ての水=消費者が同様の動きを
していたのは、「一億人の国民が全て中流であるという幻想」に浸っていた時代だ。
人と同じものを求め、手に入れて満足し、差別化よりもむしろ同じであることを好む。
高度成長期からバブル経済の前まで。いや、バブル期も、こぞって「華美な消費」という
流れが水面から水底まであった。
では、今、日本という洗面器の中の水はどのような状態にあるのか。
昨今の経済状況のなか、高級専門店で「価格も高くて価値も高い=高価値戦略」の商品を
購入する人は少なくなっている。本当に「価格も安いが、価値の低いもの=エコノミー」の
商品しか購入できない層も少なくない。その環境で、「安い価格で中くらいの品質の商品を
提供する」という「グッドバリュー戦略」がウケるのはアタリマエだ。ケの日にはスイーツ
はコンビニで。普段使いのスーツなら紳士服チェーン店で購入する。
しかし、その中にも、少なからず「もう少しいいものが欲しい!」という層が存在し、
購入する能力(購買力)を有している層も確実にいるのだ。ケの日に高級スイーツや普段
使いに高級スーツを専門店で買うようなことはしない「賢い消費」は身についている。
かといって、もう少しいいものが欲しい。もう少しこだわりたい。そんな層が、洗面器の
波立つ表層の下にはいたのだ。
今日、洗面器の海の中にも実は複雑な流れができている。その流れを細かく読む。
それは、マーケティングでいう、市場の細分化=セグメンテーションなのである。
その巧拙が、ヒット商品として日の目を見るかにかかっている。底流の動きを浮かび上がら
せ、その層のKBF(Key Buying Factor=購入理由)にミートするものを開発することが
できた企業が成功を享受するのである。
(Insight Nowより抜粋引用)
長々とした記事でしたけれど、
興味深かったので、取り上げました。
>人と同じものを求め、手に入れて満足し、
>差別化よりもむしろ同じであることを好む。
今はひとと同じでないことを好む、というわけでもなく、
要するに、基本は国民性から?《ひとと同じであることを望んで》いても、
自分に本当に必要なものを、じっくり自分本位に選ぶ時代、
それを読み取るのが企業努力、てな気がしました。
でもそれをリサーチするのはたいへんでしょうね、
もちろんそういうことを仕事としている会社もあるんでしょうけれど。
街の《なんでも屋さん》的存在のコンビニ、
たしかに美味しいスイーツが増えました。
あ、そういうことじゃないか。
あそこはまだまだいろいろに使える伸びしろがあるようですね。
いえ、コンビニがばたばた潰れてたりするので、
今後どうなるのかなー、の不安はありますが。
紳士服チェーン、とりあえず、興味はないなあ(笑)←ずれてる^^
私としては、普段使いのものこそ、手入れをすれば、長く使える定番をそこそこのお値段で欲しいのですが、その定番がないのが不満。気に入ったものは2年、3年、10年と使いたいのに、定番があってフォローしてくれるのは、やっぱり老舗(ブランド)なんですよね。ユニクロがせめて5年後も同じシャツを売ってくれるなら、好きになるんですけど。
甘味は守備範囲外なねで分かりませんが、お酒で言えば強いのはやっぱり定番ものですね。
紳士服に関して、昔の彼氏が、「スーツは日本製のいいものを老舗で買う。ちゃんと手入れすればずっと着られるし、ボタンなんかも定番がいつでもあるから」と言ってました。手入れも几帳面にしてましたし、長く着る努力として体型を変えないと言ってたところ、別れた今でも好きだし真っ当な意見だと思います。
まろうさぎさんのコメントを読んで、
元カレが気になってしようがないです(笑)
そういう、地に足のついた男性、いいですね。
きちんと見通せている感じ。
なんでだめになったんだろうとか、すみません。
>長く着る努力として体型を変えないと言ってたところ
あー、面目ない(汗)
5年前のチノパンがはけません(笑)
リセに通う女の子なんか、とても地味な服装を母親に強いられると聞きました。
トラディショナルな服装のなかで、モードを学ぶとか。
そう、買わせる側の戦略に乗らされるのではなく、
消費者がさらに厳しく吟味しないといけないですよね。
「良いものを長く着る」のは基本。
家だって車だって、エコなんだの減税に躍らされるようなら、
本当のエコではないですもん。
って、記事の本質とは別のところに降り立ってしまった気が(笑)