長嶋さんのことは最初知らなかったのです。最初に知ったのは「ジャージの二人」という面白そうな映画が去年だったか作られ、その原作を書いたのが長嶋有さんという方なんだなぁ・・・という位だったんです。ところがその後、佐野洋子さんの本を読んだ時に、佐野さんと長嶋さん親子がお知り合いだというのが載っていて、なんだか興味がわいて来て、映画から先に見たかったのだけれど、図書館に行ったら「借りて行ってください」とでも主張するように目の前に本があったので、つい手に取ってしまいました。
で、読んだら面白かったんです。 それで、「ジャージの二人」の続編とも取れる作品「パラレル」も続けて次の日借りてきて読んだというわけです。同時に「猛スピードで母は」も借りて来ました。
まずは「ジャージの二人」 表紙は大島弓子 (2003/12)
2つのお話が入っていて、最初がジャージの二人の次に「ジャージの三人」というのが入っているのが笑える。
結構のんびり~とした雰囲気の小説。とはいえ、映像がぱっと浮かんでくるような描写があって、そこが凄く良かったです。レタス畑の真ん中で、手を掲げている女の子・・・。次の日もまた別の子が・・なんのために? そのシーンがとても映像として見たい! って思ったんです。
妻が他の男を好きになって、でもその男の子供を産みたいと言ったら、その男に引かれてしまい失恋。家に二人失恋した人間がいる(主人公と、その妻と)という語り口が悲しくて辛いんだけど、なんだか少しおかしいような・・・感じなんですよ。同様な感じで、バツ2で今も夫婦仲が壊れてるダメ人間っぽい父と、義妹(この中学2年の子も、どうやら友達が少ないようだ)。
父と主人公が、軽井沢の古い別荘で数日滞在するんだけれど、登場するちょっとオバカな犬君とか、カマドウマや足長グモなども、いい味出してます(本だからで、実際いたら虫は気持ち悪いだけか?)
あと、持って来る物とか(魚肉ソーセージ)、もちろんジャージのエピソードも(和小学校ってなんて読むのかな?って気になったよ~)面白かったです。
小説に漂ってる雰囲気が全体的にどこかノスタルジックで、ちょっと哀しいんだけど、くすっとしちゃう・・・そういう感じでした。でもほんのちょっとだけ、結構じとっとした男性の心の内みたいのが書かれていて、そこがスパイスにもなってたかもな。4つ☆
「パラレル」の方がそのどろっとした心の内の部分の割合が多かったかも。
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「パラレル」 (2004/6/26)
ジャージの二人で、離婚するのか?否か?って中ぶらりんだった主人公が、その後妻とは離婚した・・・というお話。離婚した後だというのに、割と近所に住み、今でもメールや電話を妻側から用事もないのに友達によこす様な感じで時々来る・・。その元夫婦のお話と、主人公と大学時代唯一の友人だった津田という男の話が軸になっています。お話は、現在や大学時代、そして二年前と時代が行ったり来たりするんですが、でも全然わかりにくく無かったです。
津田は会社経営などもしていて、とにかくやり手って感じの男。若い頃から「おねえさん」と気軽に女性の声をかけ、現在はキャバクラや水商売の女の子とお盛んだ。小説の中で、「ラブよりも弟子に憧れる」とか「まあまあの女・・・とりあえず性欲用ってことで口説くかな」とか・・・他にもあったと思うんだけど思い出せない・・・色々印象に残りました。
「ジャージの二人」もそうですが、男に浮気されて凹む女性の心理を描いた本は一杯読んだことがあるけれど、逆の小説(男が女に浮気されて・・)は、ほとんど読んだことがなかったせいか、すごく新鮮に興味深く読めました。
そうそう、紅茶を入れるのがとても上手な男ってのは初めて読んだかも。作る時のこだわりの様子を、本人が「こういう性格が妻の気持ちを冷めさせて行ったのかも・・・」とつぶやく・・・。
こちらの「パラレル」も面白かったんだけれど、赤い口紅の女と主人公が良い感じになる・・という展開はあまり好みじゃなかったかもな・・・。 あとコンピューターゲームのこととか詳しかったら、もっと楽しめたのにな~。残念。3つ☆半
二冊とも、ご自分の事を書かれたんじゃないのかな?と思うほどリアルです。(実話なのかな?)二冊とも、ご自分の事を書かれたんじゃないのかな?と思うほどリアルです。(実話なのかな?) そうそう、二冊ともに何度か出て来たセリフ「死んじゃえ・・・」ってのが、私的にはあんまりだったかな・・・。
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「猛スピードで母は」(なんと芥川賞なのね?) (2002/02) 表紙は佐野洋子
2つのお話が入っていて、最初は「サイドカーに犬」、次にタイトル作です。
「サイドカー」は映画版で以前見たことがありました。読みやすくて、映画版よりもさらっと短く仕上がっていて良い感じでした。百恵宅を訪問した後、今度は、きょーしろーのお家に行ってみようと言った洋子さん。洋子さんが最後に薫にくれたテープはRCのテープでしたね・・。4つ☆半
映画「サイドカーに犬」感想
「猛スピードで母は」
これも長嶋さんの子供の頃の実話なのだろうか・・・?長嶋さんが育ったのは室蘭市らしいし・・・。舞台が北海道のM市とS市、夏でもガスで曇りの日が多いこの場所。夏休みがこれから始まりますって言われても、夏が終わってしまうんじゃないか?と思ってしまう・・というのも凄い良く解る感覚です・・。
サイドカーもこちらも、さばさばした美人の颯爽とした女性。「ジャージ」「パラレル」も割とそういう感じだし、弱々しい女性よりもこういう男勝りで、でも綺麗な人が長嶋さんは好みなのかもな。
お母さんは映画の2本だてを見るのが好きだった。なぜなら映画館に入る時は昼間だったのが出る時には夜になっていたり、雨が降っていたのが晴れていたり・・そういう入った時と出る時では全く違った状態になっているのが不思議な感覚がして・・ってのを懐かしく思い出しました。2編の小説はどちらも忘れていた昔の事を思い出しました。4つ☆
長嶋有 埼玉県草加市生まれ、北海道登別市・室蘭市育ち。登別市立幌別西小学校、室蘭市立港南中学校、北海道室蘭清水丘高等学校普通科を経て、東洋大学2部文学部国文学科卒。1997年にシヤチハタに就職、結婚。ASAHIネットで知り合った仲間と俳句の同人に参加する傍ら「パスカル短篇文学新人賞」に応募するなどしていたが、作品が予選通過や佳作を取るようになったため1999年にシヤチハタを退職、作品執筆に専念する。
2001年に5つの文芸誌に同時に応募、このうち『文學界』に送った「サイドカーに犬」が第92回文學界新人賞を受賞し、小説家デビュー。同作で第125回芥川賞候補となる。2002年、「猛スピードで母は」で第126回芥川賞受賞。
最新作「ねたあとに」は、「ジャージ」の姉妹編のような作品でした。
父と主人公と友人たちが、軽井沢の古い別荘でインドアなゲームをしてるってだけの本です。
こちらもたぶん気に入ると思いますよ^^)
最新作「ねたあとに」は、「ジャージ」の姉妹編のような作品でした。
父と主人公と友人たちが、軽井沢の古い別荘でインドアなゲームをしてるってだけの本です。
こちらもたぶん気に入ると思いますよ^^)
レタス畑がね、キャベツ畑に映画ではなってる気がしました。
か、かったいレタスか。
そういうどうでもいいことをツッコミたくなるテンションでした。
「ねたあとに」を一番最初に読んで、面白かったんですよ。
ほんっとに、どうでもいいゲームばっかしてて。
家中の電気をブレーカーが落ちないように消して、豚か何かをレンジで温めるとこで、「ヤシマ作戦」(エヴァンゲリオンにそういう日本中の電力を集める作戦があるらしい・・・私は見たけど失念した)と名付けるあたり・・・
「おい、世界のオオエケンザブロー賞を貰っておいて、最初の作品がこれとは良い度胸だ、あんた、理屈抜きに好きだよ、ゆるく応援していくよ」ってエッセイ(「電化製品列伝」だったかな、ブンガクにおける電化製品のことを書いたとこだけを論じた書評っていうか・・・)も読んだのですが、それも私の相性とよくて。
どうしてこんなどうでもいいことばかり書けるんだ!って笑ってしまいました。
今度、未読なので「猛スピードで母は」も読んでみますね。
そうそう、「骸骨ビルの庭」良かったですよ。
ただね・・ほかの宮本作品にも多いんだけど、ひとつ、読者を引っ張る謎をいつも用意しておくんですよ。
でね、最後には、まあ、その謎はほっとこう、って主人公はどうでもよくなるんですよ。
それがね、また繰り返されていて!
「おいおい、どうでも良くないよ、馬の前にニンジンこんだけちらつかせておいて、どうしていつもニンジンを自分で食べちゃうんだよ、食べたいんだよ、こっちは。あんた、サドか?」
って以前の私なら思うんだけど、まあ、宮本さんはね、もう、いいですよ、好きにやれば・・・って寛容な気持ちになりました。
どうしてかというと、魅力的な人をえがいているから。
激動の昭和を生き抜いた人を生き生きとえがける人ってもう、少ないから。
どの作家も、若い人しか主人公にしないでしょ、ホントの戦後なんてよう書けないでしょ。
ただね、初めて宮本作品読むなら、お勧めはできません、これは、宮本さんを受けいれる下地があれば面白いです。
まあ、「流転の海」がこんだけ待たされていることに比べれば、オチが宙ぶらりんなことなど屁でもない、って言う人にはお勧めです。
もしかしたら、本屋大賞に私は一票入れるかもしれません。
でも、「運命の人」がまだ未読だから。
「1Q84」はもう入れることは決めてあるの。
すごく上手で。私は芥川っていう匂いがしたけど・・・
あと、御苦労さんっていう意味で前は山本兼一さんが取ったので、葉室麟さんが取ると、時代小説がもっと売れて嬉しいんですけど・・・
道尾修介さんだったかな、この人が取ると、文庫ももっと売れるから嬉しいです。
あと、北村薫さんの「鷺と雪」はとっても上品な作品だったし、まだ貰ってなかったの? みたいなかんじなんで、貰ってくれると嬉しいです。
万城目さんはいいです・・・別にコレをステップアップっていうキャラじゃないし、もう、固定ファンがいるし。
芥川は何か知らないのばっかで・・・
本谷有希子さんは、今までの作品(戯曲も)をいくつか読んでいるけど、まあ、自意識過剰を題材にしたものは他の人も書いているから別にこれ以上天狗になる材料を与えなくても・・・なんか、この人、今、引き出しが空になって、ため込む感じの時期にみえます・・・
今あげたら、これをしゃぶって、あと、数年っていう感じがするんで、今自力で何とかしなよ、って思います。
もしかしたら、このブログの反応が遅かったか、悪かったかで、コメントが消えてしまった・・・と思われ、再度コメント打ってくださったのかもしれませんね
ありがとうございました
>最新作「ねたあとに」
これも要チェックですね。情報ありがとうございます。是非近く読んでみようと思います
>レタス畑がね、キャベツ畑に映画ではなってる気がしました。
ギャハハ!そうですか。映画版も楽しみだな~!誰が奥さん役なのかな?と、今見て来たら、水野美紀さんで、大楠道代さんがあのおばさま役か~^^結構合ってるな~
牧場主さんは、「ねたあとに」を一番最初に読んだんですか~。今度私も読んでみます!
>初めて宮本作品読むなら、お勧めはできません
そうか・・・辞めておきます。長編は元々読むのにパワーが凄くいるので、、、。でも色々宮本さん情報をありがとうございました!いつか宮本作品を読んだ後、ここに再度来て読みたいと思います
西川美和さんの「きのうの神様」、まさか直木賞候補になるとはびっくりでした。発売とほぼ同時に図書館にリクエスト入れられたので、もう少ししたら順番回って来ると思うんです。以前「ゆれる」の時、映画も面白かったんだけれど、小説版も凄く良かったので、、それでリクエストしたんです。2週間ほど前に、NHKのトップランナーに西川さんが出てて、それも凄く興味深かったんです~。
あと、他の候補作家さんで私が読んだことがある人はいなくて、道尾さんの本は、色々読んでみよう・・と思って「鬼のあし音」とかあと数冊何ヶ月か前にリクエストして、でも人気があるみたいで、ずいぶん待たされたまんまです。
本谷有希子さんって、全然知らなくて・・・。今ウィキペディアで見て来たら、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」って(映画未見)彼女の作品だったんですね。せっかく色々書いてくださったのに、知らなくて反応出来なくて残念!でも、牧場主さんの印象を聞いた感じでは、読まなくてもいいかな?とか思っちゃいました
いや~、きっついっていうか、いったいっていうか・・・あちゃ~っていうか。
でも、戯曲は結構、あれですよね、私がそうなんですが、敷居が高くて・・・
宮本さんのは、他の人がお勧めしてたら読んでみて下さい。
同じ事言ってるけど・・・
トップランナーの西川さんのは見逃しました、残念。
また今度落ち着いた時来ますね。
今の処、本谷さんの本は全然話題に出たことがないんですよ。
宮本さんもなの。でも頭の中にインプットしましたよ~
そうかあ・・・残念! 誰一人として、あの日のトップランナーを見た方がいないんですよ~。