http://diamond.jp/articles/-/8496
ついに総合商社までもが参入開始!
「コンビニ農業」革命の全貌をリポート
<特集> コンビニ農業 フランチャイズ方式と貸し農園で進む革命 Part 1 フランチャイズ型で安定供給を実現 独立支援プログラムで作る絆 Column 農業生産法人への転換 売上高1000億円を目指すワタミ 産地の危機に備えたスクラム 6次産業化で年商40億円達成 Column 超大規模な小作農 FC農業で安定供給を約束 Part 2 貸し農園が自給力を高める 憩いや食育等で人気の貸し農園 List 今からでも入会できる大都市近郊の「貸し農園・農業スクール」リスト 農家と借りたい個人をマッチング 体験と労働力の交換 田植えワークショップ 「究極の田んぼ」の市民農園 Column 世界が注目する新農法SRI セレブ御用達のサロン付き農園 人気講師が伝授! 超簡単なベランダ農園 入門「栽培キット」を買って自分用に育てる Part 3 農業を活性化する企業 競争力を奪う政争 農地法改正で企業参入が加速 Column 4500農家との契約栽培 全国展開を決めたイトーヨーカ堂 ばらまき度強める民主党農政 Interview 一川保夫●参議院議員(民主党) Interview 赤澤亮正●衆議院議員(自民党) Interview 浅尾慶一郎●衆議院議員(みんなの党) -------------- |
まず、米穀卸の大手2社と資本提携を結んだ。2年前、ミツハシ(本社:横浜市)に33.4%出資。今年4月には国内最大手の神明(同:神戸市)に20%出資した。関東と関西のそれぞれの最大米卸と提携し、米の流通インフラを押さえた。
昨年7月には、米の生産や販売を行なう農業生産法人「まいすたぁ」に出資した。過去、子会社が農業関連会社に出資したことはあったが、三菱商事本体が農業生産法人に出資するのは初めてだ。
同社は、こられを農業の収益性を見極めるための投資と位置づけている。「稲作は収益性が低い」「肥料・農薬代がかさむ」などと巷間言われているが、それは見方を変えれば、生産性を伸ばす余地が大きいとも考えられる。その仮説を検証するため、稲作に1から参加し、コストをきちんと測ることを今年から始めている。
三菱商事が出資した農業生産法人の代表は、起業家精神あふれる米業界のリーダー的存在だ。法人設立の狙いは、山形県庄内地区の稲作基盤を維持していくことにある。
彼が代表を務めるもう1つの株式会社「庄内こめ工房」には、稲作農家120人も出資し、その耕作総面積は700ヘクタールほどになる。しかし、「各農家とも高齢化が進み、後継者難で今の生産者が倒れたときに引き継ぐものがいない。万が一のとき、その生産を法人が請け負うことができるようにしたい」と代表は言う。
いつか米の生産から販売までを、商社が一気通貫で担う日が来るかもしれない。そうなれば、総コストが下がって日本の米作りの競争力がつき、非合理な700%超の関税で輸入障壁を作る必要がなくなるだろう。
三菱商事の農業参入を後押ししたのは、昨年12月に施行された「農地法改正」などの規制緩和の流れ。機を見るに敏な三菱商事が動き出したことは、農業のビジネスチャンスが広がったことの明確な証左と言える。ここ1年、企業の農業参入は加速している。
一方、起業家精神に富んだ農業生産者が続々と台頭するという明るい兆しも見えてきている。本特集では、そうした新しい農業の動きのなかから、Part1では個人農家の組織化と農業の経営化に焦点を当てた。
それは、ちょうど1970年代に個人商店が、巨大資本のスーパーによって次々と閉店に追いやられるなか、コンビニエンスストアがフランチャイズという手法によって、その競争力を高めていった構造に似ている。
小売りのコンビニは、大資本がそのシステムを構築したが、今日の農業で見られるのは主に、個人の生産者が仲間を募って構築していくパターンである。
生産者間で生産性の高い生産技術を開発したり共有したり、物流や加工機能を共有化して効率化を図り、小売りと直接結びついて、消費者ニーズに基づく生産物を作ることで、競争力を高めている。
さらに、新たな自給力向上策として注目されるのが、「貸し農園」だ。
週末に、あるいは定年後に農業をしたいという人が増え、都市近郊の貸し農園は人気沸騰だ。「通常の農業では小規模でなかなか収益性が上がらなかったのに、貸し農園にして収益が上がった」という農家が多くなっている。借り手の立場からは、住まいの近くで気軽にできる文字通り「コンビニエンス(便利な)農業」だ。
NHKの番組『趣味の園芸 やさいの時間』で人気の藤田智先生による「ベランダ農園超入門」講座や、「今からでも入れる貸し農園リスト」も掲載している。ぜひ、手にとってご購読いただきたい。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 大坪 亮)