さてもう前編を読んで飽きた者もいることだろうな。
後半は更に盛り下がる展開となるので
俺の様に懲りないやつ以外は読み進まぬようにと忠告だけしておこう。
例えていうなら懲りないとは毎回ポン引きに引っ掛かるスケベなおっさんみたいなもので、
騙されても裏切られても今度こそはエエ娘、別嬪に当たって惚れられるのではないか、
またこちらも惚れてしまったらどうしようなんて考えられるタイプである。
まともな人間なら99.9%そうならないと判っている事を0.1%の幸運にもしやと思える奴の事だ。
但しこれがギャンブル系に向かうと大変危険なのは俺自身は自覚しているつもりである。
早速本題に戻ろう。
一応は事実に基づく内容であり小説の様に劇的な展開は
そうそうないのが言いたかっただけなのだ。
どこまで話しただろか、おっそうだ晩飯をどうするかというところだったな。
今回は同じ轍は踏むまい。
道路も空いておりもうすぐ今晩宿泊するビジネスホテルに到着してしまうぜ。
胸ポケットからメビウスと改名されたマイルドセブンワンを取出しながら考えるとするか。
仕事とはいえ地元の旨いものを味わうのは出張の楽しみのひとつである。
今回は冒険や失敗は許されないと紫煙を燻らせながら思い巡らせる。
そうだ!駅前反対側の大通りにある結構立派な店構えの割烹○○なる所にすることにしよう。
実は何度か車で店先の道路を通った事があり
その店の存在は以前から一応認知はしていたのだが
値段も張りそうで何とはなく避けていたのだ。
仕事も順調、新幹線も使わずに頑張った俺にご褒美があっても良いではないか。
いやすまない、少し見栄張って嘘をついてしまった。
博多や小倉の駅前なら超高級店も沢山あるだろうが
実はこの辺りの場所ならたかが知れているはずなのだ。
気が小さいので単に一見で大きな店に入りにくかっただけだった。
無論予約して行くなんて堅苦しいのも俺の性ではない。
行き当たりばったり鬼が出るか蛇が出るか婆ちゃんが出るかお楽しみとするか。
車をホテルの駐車場に停め早速目当ての店へと向かう。
扉を開けるといきなり正面の座敷側に天然木の上がり框が目につく、
外観以上に立派な感じだ。
比べてはいかんがあの寿司屋とはえらい違いである。
その横のいけすには鯛や鱧が泳いでる、やはり魚屋はこうでなくっちゃいかん。
着物姿の女性が出て来て「△△商事の方は奥の広間です」と言われるが俺は一人。
どうやら団体の宴会が入っていたようだ。
お一人様はあちらへどうぞと指さされた奥まった側にある場所は
丁度小さな寿司屋みたいになったカウンターのある席だった。
時間は早いが隅に和服の年配の女性が一人すわって握り飯を頬張りテレビを見ている。
「ありゃりゃやられちゃったか・・・。」
ちょっとトラウマになったシチュエーションに心の中で呟いたものの
俺を見たあちらの方が更にビックリしたようだ。
客が来るまでの賄い飯を慌てて片付け身づくろいしたそのババ、いや昔の娘さん、
気を落ち着かせてじっくりと見れば高そうな絣の着物もキリッと似あう
なかなか年期の入ったご婦人であった。
この展開であの寿司屋みたいなのを期待された向きには申し訳ないが、
カウンター向かいに立ったその女性、話を聞くとなんとこの店の女将であった。
それも地元でこの道50年、筋金入りの本職なのである。
数年前に亡くなった亭主の跡を継いで現在は息子が板場を取り仕切っており、
女将は専らカウンター席の常連の接客をするだけになっているようだ。
幸い客は俺一人。
カウンター越しに人生経験豊かなプロの話を聞くのも悪くない。
地元に密着した老舗の女将だけに上場有名企業の役員から議員、役所の人間達の裏話から
この町の名所や問題点、はたまた最後は女将自身の半生までなかなか面白い話だった。
だが冷静に後から考えると決して聞き上手とも思えぬ初対面の男にこれだけ喋るというのは
コンプライアンスや個人情報の保護などと声高に叫ばれている昨今でも
人の口に戸は立てられないものだと自省せねばなるまい。
明日は我が身なのだ。
出された刺身や揚げ物、焼き物も十分に満足するものだった。
旨い料理に楽しい話で本場の麦焼酎もつい杯が進むというものだ。
入店時には気が付かなかったがここには表通りに面した小扉があって
そこから出入り出来るようになっていた。
常連らしき親父がその扉から入って来たのは帰るに絶妙なタイミングだった。
入れ違いに機会があればまたと声掛けし店を出る。
予想した通り価格もリーズナブルで文句はない。
今回の選択は大正解だったとほろ酔い上機嫌でホテルで床につく。
2日目は一旦大分から福岡へ九州北部を東西に縦断する形で120キロの道中になる。
「よし明日も頑張ろう!」
翌朝気合を入れて行こうとホテルを出て駐車場で愛車に乗り込もうとしてタマゲてしまった。
「何じゃこりゃ!」と思わず声が出そうになるではないか。
長旅だったので車が多少汚れているのは仕方のないところだが、
フロントガラスにこびりついたソレは全く異質な物だった。
霜の張ったフロントウインドにあるのはゴビ砂漠から巻き上がり中国からやってきた
黄砂がびっしりと凍結していたのだ。
最近はPM2.5とやらがえらく騒がれているがあいつは目に見えないレベルの物質で
その影響被害は経過しなくては判らない性質のはず。
だがこれは全面泥を被ったようになっている窓にはウィンドウォッシャー程度では
黄色いワイパー筋がつくだけにしかならないという惨憺たる状態だった。
何とか前方視界を確保の上、運転しながらふと気づくと
対向車線の車の運転座席の半分以上はマスク着用者なのであった。
自覚症状はないながらも思わず俺もグローブボックスから取出してマスクをする。
耶馬渓から日田に掛けて通過した国道212号線の道路状況も酷いものだった。
去年のゲリラ豪雨によって川沿いの車線半分が土砂崩れになり
未だに復旧工事が終わっていない。
元々片側1車線を交互に通行させる規制の為に
1時間30分で行ける行程が2時間半近く掛ってしまう。
ま、仕方ないさ相手と時間の約束をしていないのも幸いと気長にエコ走行とするか。
荻野目ちゃんのダンシングヒーローのボリュームのツマミを少し上げながらリズムを取っていると
ようやく大分自動車道に合流地点まで車はやってきた。
そこから目的地まで高速道なら非常に快適なドライブである。
・・・となるはずだったが例の黄砂を運んできている強風に車はえらく煽られる。
以前阪神高速の湾岸線でも感じたことだがスタッドレスのせいなのかこの車の少ない欠点のひとつなのかは不明だが横風に対しては少し不安の残る高速インプレッションになろう。
客先との所用も次々と無難に終わり、昼飯も通りかかったファミレスで済ませた。
後はそのまま一路関西へと向かうだけとなった。
時刻はまだ午後1時を少し廻ったところである、いざ出発しよう。
それにしても今日はどんよりとした天候なのに蒸し暑いぜ。
もう春を通り越して初夏並みの暑さにエアコンのダイヤルを26度から22度に廻して「???」
全然涼しくならないのだ。
そう言えば納車は8月末で冷房のお世話にはほとんどなっていないのを思いだす。
自棄になって最低温度まで下げても全く変化なく、やや生温かい風が来るだけだった。
色々と調整した結果1番しのぎ易いのは少しだけ窓を開けてエアコンを切るのに落ち着く。
エアコンなしで過ごせる時期で良かったが
この車のオーナーならば真夏を迎えるまでに一度チェックした方が良いだろう。
何事も備えあれば憂いなしと言うではないか。
今日も曇りがちだが雨が降る気配は全くなく日中走行での運転はやはりとても楽だ。
静かで良く走る走行性能は前回同様にやはり素晴らしいとの印象は変わらないが、
あの時と比べて運転していて1番大きな違いは何と言ってもシートである。
前回は試行錯誤であったのもあり常に前後させたり、背もたれを起こしたり寝かせたりした
忙しないポジショニングだったが
今度ばかりは既に決められた位置から触る事は一切なかったのである。
くどいようだが流石のレカロである。
腰痛に次いで妻より長い付き合いのレカロに私情が入るのは仕方のないことなのだ。
あのタコ焼き爆弾の徳山もゲリラ豪雨の岡山もノンストップでやり過ごす。
福岡~佐賀~関西の帰路700キロは単調で少し飽きが来る以外に何の問題もなく
7時間半の所用時間で自宅に無事到着となった。
平均速度など聞かないでくれ、そりゃ野暮というものだからな。
少し飛ばしたのもあったが17キロの平均燃費には十分満足している。
明日は久々に洗車でもして元の夏タイヤにおニューのアルミに履き替えるとするか。
オドメーターはもう18,000キロを越えてしまったが
コイツとは長い付き合いになりそうな予感がするぜ。
他人には面白くもおかしくもない距離だけハードなドライブはこうして難なく終えたのであった。
ホッとしたこの時点ではその翌日にフロントガラスが飛び石で破損するなんて事は
全く想像もしていなかったのであるが・・・。
(了)
コメント
- 若隠居 [2013年3月18日 17:20]
- あははは?
相変わらず面白い様だけど、
遅読で
今、時間がないので
後でゆっくり
読ませてもらいます~ - 車好きオヤジ [2013年3月18日 17:30]
- ご隠居。
あまりじっくり読む程ではなかろうかと(汗!) - はやてこまち [2013年3月19日 12:50]
- こんにちは。
九州への出張、大変お疲れ様でした。
長距離の出張ドライブもアルティスで、しかも自分の身体に合ったシート装着とあらば、疲れはだいぶ違うでしょうね。
出張先にて一見で地元の店に入るのはホント勇気が入りますね、後編の様にイイ店に当たれば次の機会も利用できて財産になるのですが、前編の様にトンデモない店だと、私の場合はその土地に行く事すら嫌になったりしますから。
BGM荻野目ちゃんなんですか、オヤジさん若いですね。 - 車好きオヤジ [2013年3月19日 13:02]
- はやこまはん。
シートは腰や体を支える重要な部品のひとつやと思います。
それと若いと言われたのは昭和の曲でっせ?
若いと思われるはやこまはんもそれなりの年齢でしょうかね。 - settai [2013年3月20日 7:47]
- 700kmの一気運転ですか、タフです。
でも今回の割烹○○は大当たりですね。
通常では聞けない町の中の情報など面白そうです。
私も数年後引退したらカムリで日本一周旅行をしたいと思っておりますので、その時にはお店の名前教えて下さい。 - 車好きオヤジ [2013年3月20日 8:19]
- settaさん、おはようございます。
この日は朝からですと800キロ以上走りましたが、
その気になれば案外と走れるものです。
店には失礼ながら遠方からわざわざ行く価値あるかどうかの所ですが、
いつでもお教えしますよ。
但し女将がこちらを覚えていることはないでしょうね
(笑)! - オジジ~ [2013年3月23日 23:22]
- 車好きオヤジさん。
またしても、乗り遅れてしまいました。
小料理屋のカウンターで饒舌になっている車好きオヤジが浮かぶようです。
もう18,600kmも走っているのですね。
私は、まだ250kmですよん。 - 車好きオヤジ [2013年3月24日 6:00]
- オジジさん、おはようございます。
距離は毎日仕事で使っておりよく走ります。
実はもう19,500キロを過ぎており2万目前です。
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