車好きオヤジのブログ

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エリック・アラン・ドルフィーは知らないけれど

2020-05-08 18:07:01 | 日常
実名で登場させている以上いくら人前に出るプロの演奏者とはいえ
勝手に使用せずに本人の許可を取るのは当然である。

事後承諾にはなってしまったが高阪照雄氏にも連絡し既にここを訪問済みでもある。
尚、前回2枚目に掲載の写真に高阪氏のHPより拝借したのに許諾もしてもらった。

少なくとも客観的な部分については間違いないと返答もらったのは
私の書いた彼の演奏能力の高さや姿勢について謙遜しているからであり、
性格も皆さんきっと私の説明通りだと考えるに違いないだろう。

流石にライヴやレッスン等は自粛の為、暇にはなったようだが、
大学のテレワーク、オンデマンド授業の準備の為、
ハード、ソフトの新たな勉強はドラムを叩くようにはいかないらしく、
「頭がパンクしそうですが、落ち着いたらまた一杯やりましょう!」
と締めくくられていた。

早くそういう日が来るのが待ち遠しい。



第10話「TERUOⅡ」



真新しいウッドのカウンター席は7、8名程度。
静かなジャズがBGMで流れている。
店主は痩せて柔和、優しそうで寡黙なスキンヘッド、
例えりゃ大勢が並んで待つ法律事務所の弁護士Kのよう。
一番奥に常連と思しき男性客が一人だけ座っていた。

阪急宝塚駅から梅田に向かう東方向は二人とも帰路になる。
タクシーで15分ほど行った線路沿いにある店だった。
入ったのは初めてだったが通りすがりに開店したのを目にしたのは
は丁度一年くらい前だったろうか。



米国人ジャズメンに因んだ店名も余程マニアックなジャズファンしか
知っている者は少ないだろう。
串揚げ屋で散々飲み食いし馬鹿話をした男二人の仕上げには
静かに語るバーが良い。
と言っても酔って調子の良かったのは俺の方だけなのだが。

洋酒だけでなく焼酎を置いてくれていたのも丁度良い。
俺が麦の水割りとミックスナッツ、チーズの盛り合わせを注文すると、
照雄の頼んだのはスミノフ、ロシアのウォッカである。
指定する度数を聞くと『ン?』と思うような40度、それのロックだった。



飲んだことはないが同じような40度みたいな酒はかなり前に
沖縄に行った時の宴席で話半分とネタ代わりに出された泡盛しか記憶にない。
お猪口で舐めた程度だったがとてもじゃないが飲めたものじゃない。
冗談抜きに喉が焼けると表現すべき酒だったのは覚えている。
テーブルに垂れた滴を指で触れば粘々でライターを翳せば本当に火がつきそう。
間違っても胃や腸に入れては危険だと本能的に感じたあの時以来だ。

「いやボクこれが結構好きで割とよく飲むんですけど置いてる処、
案外少ないんですわ。」と平然と口にする。
思った通りやっぱり酒が強そうではなく間違いなく強い。
相変わらず照雄は平然と落ち着いて飲んでいる。

プロのドラマーとジャズバーで音楽談義なんてこれくらい王道の利用の仕方はない。
マスターに紹介すると「何かリクエストがあればお掛けしますよ。」
照雄も「いやそれほどボクもマニアでないのでオスカーピーターソンでも」
と応えBGMは多分オスカーピーターソンの曲だと思われるピアノ演奏に変わった。

因みに照雄はジャズ専門ではなくクラシックからロック、ブルース、演歌まで
何でも演奏するオールマイティプレーヤーである。
現実的に何でもやらんと食っていけない厳しい世界だとも言えるのだが。



その内に奥の客が先に勘定し出て行ったのと入れ違いに入って来たのが
一人のトランジスタグラマーな中年女性だった。

「あらっ?」
『おっ、いや、こんばんは。』

この店の近所の飲み屋でちょくちょく見かける女性だった。
年の頃なら50代半ばか?
名前も知らないが滅多に行かない店なのに何故か毎回彼女がいたのは
そこの店の常連だったからだろう。
決まったように入り口近くの隅に一人で座っているので印象に残っていた。

俺も一人で行くのもあって店のマスター相手に喋っているのを黙って
聞いているようなタイプで自然と気にはならない存在になっていた。
となればやはり彼女も素の俺、カッコつけないと書けば聞こえは良いが、
やれ女を口説いたとかフラれたみたいなグダグダ加減も知っている女性とも言える。

「今日はご来店有難うございます。」
『うっ、ぅうん?』

聞けばバーのマスターは彼女の亭主。
定年後の生活を考えた時に趣味で集めた多くのジャズアルバムを活かして
出来る商売と1年前に開業したという。

彼女も昼間は働いているが定年まではまだ何年かあるし、
お互い好きにやりたいように生活しているのだという。
所帯臭さがないのは子供がいないからではないだろうか。

おそらく儲けより家賃が出れば御の字と考えているようだ。
通りすがりでも防音もあるし、中の見えない造りの建物で、
重厚な木製の扉ではスキ者、いや同好の士しか入ってはこないだろう。

彼女にも照雄を紹介して引き続き色々と話していると、
「だけどオヤジさんいつもと全然違うね。ちょっと見直しちゃった。」

どういう意味か聞くのも野暮、毎回一人で飲んだくれて
ウダウダ言うだけのジジイとして認識されているに違いない。
そういえば彼女が酔っぱらっているのも見た記憶もない。
折角テルちゃんと来た記念にとスマホを渡しパチリと1枚撮ってもらおう。



気がつけばもう22時を過ぎていた。お互い翌日も仕事がある。
マスターにタクシーを手配してもらい最寄り駅で別れることに。
照雄のお陰で今日は俺の株もちょっぴり上がったかな?

「また行きましょう!」
『いや、テルちゃんこちらこそおおきに。』

次に彼と一緒に飲む時は体調を整えておかねばなるまい。
今度は大阪辺りになるかな。

リアル投稿連続で少々疲れ気味、次回はリハビリ記事になるだろうか。


(おわり)


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (akatuki1227330)
2020-05-08 19:00:22
こんにちは一年生です。

こう言うお店や、音楽家にとって新型コロナウイルスで

かなり酷い目に遭ってることでしょうね~

不要不急って何?人生って何が大切なの?

生きてるだけで良いの?(確かに生き延びるのは大切でしょうが)

このまま年間死者数が例年のインフルエンザなどの関連死の

1万人以下(今のところ10分の1以下)になった場合。

騙されたとは言え、こういう人に対しよかれ思い発言するステイ

ホームって只のいじめとそんなに変わらないのかも?

もうそろそろおかしいと気づいて来た人も少数ながらいるのかも?

テレビの論調が明らかに変化して来ましたが、まだまだ自粛基調

段々マスコミがもう大丈夫という感じになっていき、多くの人々

は自分で考えてもう大丈夫かなと思ってるつもりになるんでしょうね~(笑)

しかし今後もこんな出来事が繰り返されるんでしょう。?

ところで業界の裏話は無し?(笑)

本人見てたら無理か~?
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Unknown (kurumazukioyaji)
2020-05-08 19:07:56
一年生さん、こんばんは。

そうですね、ここのバーも現在無期限休業中です。
また高阪氏のようにテレワークの出来ない普通の演奏家は
かなり悲惨な状態になっているでしょうね。

因みに私は中身は別としていつものように毎日出勤し、
単に夜出ない生活をしています。
個人的に不要不急でないからとの解釈です。

業界裏話は本人が見ようが見まいが出所が判明している
時点で公には出来ないですよ。
まあ毎度のことながら期待されるような話でもないですけどね。
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Unknown (sinjyusai)
2020-05-08 21:14:58
こんばんは。

カウンターで一人で呑む姿が絵に成る人に成りたいと思った事が有りましたが
一人では飲み屋さんに行けません。(笑)

楽しい友達と呑むのが良いですね

そこで友達が出来れば最高。
翌日は忘れてますが。(笑)
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Unknown (kurumazukioyaji)
2020-05-08 21:21:07
彩さんみたいに常に沢山の仲間に囲まれているのは
ある意味贅沢、羨ましい限りです。

但し自分の場合は絵になるかどうかみたいに、
特に近場ではカッコつけたくないもので、
却ってそれが良かったり悪かったりだと思います。

もうそこそこ歳行くと今更性根は変われないですからね。
返信する
Unknown (vell24)
2020-05-09 00:34:37
こんばんは。
2軒目に入られたお店も良いお店ですネ。

プロのミュージシャンと音楽談義が出来るなんてスゴイです。

40度ものアルコール度数のお酒は飲んだ事ないです。一口口をつけただけでも目が回りそうな気がします。

ミュージシャンでもテレワークをするためのシステムの勉強もしなきゃいけないなんて大変ですネ。

マァ昔と違い今は随分簡単にネットワーク通信出来るようになってますけど(^^)
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Unknown (kurumazukioyaji)
2020-05-09 06:05:28
ヴェルさん、おはようございます。

まあ複数で飲みに行く方が少ないし、
本職と一緒なら能書きも必要ないし楽しかったですね。

極端に強い酒はやっぱり止めておくのが良いでしょう。
自分が美味しく頂けるものがやっぱり1番ですよ。

彼はテレワークが出来るだけまだ恵まれていると思いますよ。
全く収入が無くなっているアーティストが殆どですから。
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