031:はずれ（今泉洋子）

台風の予想はづれて二十年ぶりに閉めたる雨戸開けゆく

030:財（今泉洋子）

花買ひて軽き財布をはたくほどの贅沢をせり空澄みわたる

0029:逃（今泉洋子）

大津波（おほなみ）に呑まれぬやうにひたぶるに往還逃げる春の夜の夢

028:幾（今泉洋子）

人生は哀しきことも多けれど日に幾たびもこゑ出し笑ふ

027:コメント（今泉洋子）

コメントの字数制限二十字はあれやこれやと歌より難し

026:期（今泉洋子）

思春期の乙女のやうに白木蓮（はくれん）は風が吹きてもすぐに傷つく

025:減（今泉洋子）

日々ごとに花減りゆけど未だ咲く宗旦木槿のしづかなる白

024:妙（今泉洋子）

小鼓の妙なる響きに羽衣を天女は春の空へ靡かす　

023:不思議（今泉洋子）

ひらひらと降る言の葉を掌（て）に受けて不思議なくらい歌できる夢

023:梨（今泉洋子）

ははそはの母に替はりて叔母さんが送り来し梨風の匂ひす