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市民後見人養成(読売新聞記事)

2013年10月22日 | 成年後見

市民後見人 養成急げ=秋田

2013年10月17日5時0分 読売新聞

 認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人に代わって預貯金や不動産の管理、契約行為などを行う成年後見制度。2000年の開始時は親族が担うのが一般的だったが、核家族化と高齢化で、弁護士や司法書士など専門家が担うケースが増えている。ただ、今後、専門家の不足も懸念されることから、県内では、横手市と湯沢市が「市民後見人」を養成しているが、法律知識が備わっていないため、後見できる対象者が限られるなど課題もある。

 横手市駅前町の市交流センター「わいわいぷらざ」。9日、ここで開かれた市民後見人の養成講座には約20人が参加した。講師の司法書士、藪本孝一さん(39)が成年後見の申し立て書類の書き方や財産調査の仕方を説明すると、受講者は熱心にメモ。同市上内町で福祉協力員を務める小松詳恵さん(73)は「町内にも一人暮らしの高齢者がいる。自分にできることがあればと参加した」と話した。

 秋田家裁によると、県内の昨年の成年後見の申し立て件数は149件で、このうち親族以外の第三者が後見人を務めたのは54件で全体の36%だった。年によって変動はあるものの、08年が113件のうち17件で15%だったのに比べると、大幅に増加した。

 県内の高齢化率は年々上昇、一人暮らしの高齢者世帯も増えており、30年には、高齢化率が全国で唯一40%を上回るとの試算もある。藪本さんは「“後見爆発”になれば専門家だけでは足りない」と話す。

 厚生労働省は11年度、市民後見人を増やそうと、養成モデル事業を全国の20以上の自治体で開始。県内では、横手市と湯沢市が参加し、昨年度、横手市で6人、湯沢市で19人が養成講座を修了して市民後見人の候補者となった。しかし、これまでに家庭裁判所から市に推薦の依頼がなく、実際の活動例はまだないという。藪本さんは「自治体がバックアップ態勢を整え、市民後見人の信用度を上げることが重要」と指摘する。

 専門的な法律の知識や経験を持ち合わせていないことも市民後見人の弱点。後見できる対象が遺産相続で紛争になる可能性の低い人に限られ、両市の担当者は「マッチングできる相手が少ない」と頭を悩ます。「制度自体の認知度が低い」のも広がりを欠く一因だ。

 横手市では今年度、20人が講座を受講しているが、湯沢市では希望者が少なく、開講できなかった。湯沢市の担当者は「単独の自治体で養成やサポートをするのは難しい」と話し、今後、両市で連携できる部分がないか検討する方針だ。