暮らしのヒント館

身近な生活

認知症高齢者の見守り(読売新聞記事から)

2013年12月24日 | 認知症

認知症を考える]<9>見守りキャンペーンに違和感

2013年12月22日3時1分 読売新聞

 愛知県のいまいせ心療センター・認知症センターの水野裕先生は、私の友人で、認知症の専門医です。先日、水野先生と雑談中に、最近、あちこちの自治体で推奨されている、認知症患者さんを地域で見守り支えるというキャンペーンが話題になりました。地域で見守るためには、患者さんの情報が開示されていなければなりません。しかし、本人の了解なく、そうしていいものかどうかという話です。

 徘徊(はいかい)の結果、発見が遅れて命を落とす高齢者も少なくないので、こうした社会システムの構築は、家族の負担を大きく減らし、患者さんの安全性を高めます。システムを効率的に運用するには、できるだけ細かい個人情報をあらかじめ集積しておく方が安心です。

 一方、顔や名前や病名が不特定多数の近隣住民に広く知られることを本人は望んでいるでしょうか。私が最も危惧するのは、こういうキャンペーンをしている役所や福祉・医療関係者に、この微妙な問題に対する配慮があまり感じられないことです。私も、近所の目を気にするご家族には、「堂々と、病気ですから何かあったらよろしくと言ってしまいましょう」と勧めますが、誰に話すか、どの程度話すかは、あくまでご家族の判断に任せます。地域は個人を支えますが、同時に個人を圧迫します。地域とのつながり方は、場所により、人によって違います。

 患者さんやご家族など個のニーズを起点として周囲に広がるネットワークと、「地域づくり」が先にあり、全体の利便性から個に向かうネットワークは似て非なるものです。個から周囲に広がるシステムはしばしば非効率ですが自由があります。一方、全体から個に向かうシステムは効率的ですが窮屈です。これを拒む人に対しては冷たくなりがちだからです。(斎藤正彦、都立松沢病院院長)