ツグミ、おいツグミ!起きろってば。もう朝だ。
うるせーなー。もう少し寝かせとけよ、ヒモの癖にうるせーんだよ。
それとこれとは関係ないって、仕事に行ってもらわないと僕も養って貰えないからさ。
ツグミは美人だ。しかし口がすこぶる悪い。「噤み」という言葉の影は全く見えない。
だがそんなところにも私は惹かれていた。
ツグミの仕事はバリバリのキャリアウーマンだ。何の仕事をしているかは教えてくれない。昔酔っ払ったときに愚痴られたが難しくて9割は理解できなかった。翌朝聞いてみようとしたら問答無用で殴られた。濡れたタオルでのビンタは酷く痛かったから私はもう聞かないようにしている。
こんなに口が悪くて仕事ができるのか、というとこれはいわゆるスイッチオフの状態らしい。仕事場では同世代の男性社員をうまく使っているようだ。しかし信頼は厚い、と自分で語っていた。
どうせまた遅刻ギリギリになって僕に当たるんでしょ!やめてよね!
うるせぇーんだよー。まじでー。外追い出したろかー?
はいはい、どうもすいませんでした。とりあえずシャワー浴びてきなよ!朝ご飯はなにがいいの?
牛乳とソーセージとご飯と納豆
朝ご飯のメニューだけ枕に伝えると、布団の中で服を脱ぐツグミ。昨日の晩は二人でイケない事をしていた布団で。
私とツグミが出会ったのは学生の頃。しかしそんなことを語っている時間はない。朝のシャワーは早いのだ。急いで準備しないとまた尖った言葉が突き刺さる。
朝ご飯を食べているツグミは可愛い。見た目通りというか、子供っぽいというか。
それが見たくて私は何をされてもツグミの朝ご飯を用意する。それだけの価値がツグミにはある。
シャワーを終えたツグミは何も身に付けぬまま食卓に座る。こんな冬の朝に木の椅子に裸で座るのだ、冷たくて怒られるのはもちろん私。朝食を食卓に並べ終えたらツグミはテレビを点けニュース番組をみる。その内に私はツグミの脱ぎ散らかしたネグリジェをバスタオルの散らかった脱衣所に持っていき、またベッドに戻り布団を畳む。
ツグミを会社に送り出す、玄関に立つツグミのスーツ姿。私の嫌いなスーツ姿。私を置き去りにするのはこの後姿。
おい、ちょっと。
ツグミに呼ばれ傍に寄る、いつもどおりなのに不意にキスされドキドキする自分。
ツグミは置いていかれる私の気持ちを知っていてこんな事をするのだろうか。本当にずるい人。だめだ、愛してる。
ツグミが出社したあとの部屋は何か寂しい。あんなに憎まれ口を叩かれたのにやはり私にツグミは必要なのだと感じる。
私はツグミが入らないと知っていても浴槽にお湯を毎日張る。もちろん私が後で入るのだが、ツグミは自分が使わなくてもバスタブにお湯がたっぷり入っていて、ゆらゆらと湯気を上げていなければその日の朝ゴハンの前に服を着てしまうのだ。それはどんな叱責よりも私の心に突き刺さる。
ツグミと夫婦同然の暮らしをして数年。私は結婚したい。だがそれは叶わない夢。あの人は私との結婚なぞ考えてもいないだろう。そう、それは叶わない夢。
ツグミが帰ってくるまでに私は家事をしてしまう。掃除、洗濯。育児の項目が無いのは寂しいがそれもやはり叶わないだろう。
テレビを見ながら今日の夕食を考える。
ツグミ、愛してる。そう繰り返し呟きながら鍋と睨めっこする私。きっと傍から見たら危ないヒトなんだろうなっとふと思うときがある。でも駄目。これは譲れない。だって私はツグミを食べてしまいたいほどに愛しているのだから。できたらそう、小指から順番に嘗めまわして…。
ドアの開く音と共に怒声が聞こえる。
このウスラトンチキがぁぁぁ、スリッパがでてねぇんだよ糞野郎!何べんいやわかんだこのボケがぁぁ!
ごめんごめん、今出すから。はいっ、どーぞ。
このぐらいすぐできるんだから帰ってくる前にやっとけってんだよ!何考えてんだただ飯食ってんだてめぇは!
うんうん、ごめんごめん。いつも美味しく食べさせてもらってるから。
朝のツグミよりも、ご覧の通り機嫌が悪い。社会の荒波とはこういう物なのか。
ゴハンにする?お風呂にする?それとも、わ・た
酒。冷やしてあったやつあんだろ。あれ2合な。はやくしろよ。
…し。うん、わかった。今準備するね!
お酒を徳利に移しお猪口を出し、テーブルに持っていくと既にツグミは服を脱いでいた。それを見るだけで私は欲情しかける。
お酒を飲んでいる時のツグミは静かだ。ゆっくりと味を楽しんでいるようで、私のことなど見えてやしないのだろう。正直少し寂しい。だがお酒を飲んでいてもやはりツグミは可愛い。じきに顔がぽーっと赤くなって揺れだす所なんて最高に美人だ。あぁ、ツグミ愛してる。
ツグミ、愛してるよ。
酔っ払った時とベッドの中でしか言えない言葉。耳までも赤くなるツグミ。
にゃはー。わ・た・し・も。
正直私はもう死んでも良いと思う。こんなツグミ。耐えられない。あぁ。ツグミ!
ご飯を少ししか食べて貰えないのは寂しいけど、でも今日は大丈夫。ツグミが可愛いから、大丈夫。
テーブルで寝てしまったツグミを抱きかかえてベッドまで運ぶ。優しくマットに降ろし、掛け布団をかけ部屋の電気を消す。
私は余ってしまったご飯をラップし冷蔵庫に入れ、洗い物をする。もちろんさっきのツグミを思い出しながら。
お風呂の予約まで全て終わらせダイニングの電気を消し、私も寝室に入る。
少しお酒くさいツグミも、また愛らしい。
静かに大きなベッドの逆側から布団に入り眼鏡をはずす。
おやすみ、つぐみ。愛してる。明日も明後日も、ずーっと愛してる。
私の毎日はこうして終わる。
窓の外には月が明るいのだろうか、カーテンもうっすらと上気しているようだ。
ベッドサイドには読みかけの本と、トトロの縫いぐるみがひっそりと佇むばかりだ。
-----------------------
元カノさんが久しぶりに読みたい気分だと言うので書いた。お題は深そうで浅いトトロ。
一時間ちょっとかかったかな。
書いたのとか久し振りだったけど相変わらず下手だ。
大体オチを決めとかないから訳わかんなくなる。書いてて嫌になる。全く…
ねよかな
うるせーなー。もう少し寝かせとけよ、ヒモの癖にうるせーんだよ。
それとこれとは関係ないって、仕事に行ってもらわないと僕も養って貰えないからさ。
ツグミは美人だ。しかし口がすこぶる悪い。「噤み」という言葉の影は全く見えない。
だがそんなところにも私は惹かれていた。
ツグミの仕事はバリバリのキャリアウーマンだ。何の仕事をしているかは教えてくれない。昔酔っ払ったときに愚痴られたが難しくて9割は理解できなかった。翌朝聞いてみようとしたら問答無用で殴られた。濡れたタオルでのビンタは酷く痛かったから私はもう聞かないようにしている。
こんなに口が悪くて仕事ができるのか、というとこれはいわゆるスイッチオフの状態らしい。仕事場では同世代の男性社員をうまく使っているようだ。しかし信頼は厚い、と自分で語っていた。
どうせまた遅刻ギリギリになって僕に当たるんでしょ!やめてよね!
うるせぇーんだよー。まじでー。外追い出したろかー?
はいはい、どうもすいませんでした。とりあえずシャワー浴びてきなよ!朝ご飯はなにがいいの?
牛乳とソーセージとご飯と納豆
朝ご飯のメニューだけ枕に伝えると、布団の中で服を脱ぐツグミ。昨日の晩は二人でイケない事をしていた布団で。
私とツグミが出会ったのは学生の頃。しかしそんなことを語っている時間はない。朝のシャワーは早いのだ。急いで準備しないとまた尖った言葉が突き刺さる。
朝ご飯を食べているツグミは可愛い。見た目通りというか、子供っぽいというか。
それが見たくて私は何をされてもツグミの朝ご飯を用意する。それだけの価値がツグミにはある。
シャワーを終えたツグミは何も身に付けぬまま食卓に座る。こんな冬の朝に木の椅子に裸で座るのだ、冷たくて怒られるのはもちろん私。朝食を食卓に並べ終えたらツグミはテレビを点けニュース番組をみる。その内に私はツグミの脱ぎ散らかしたネグリジェをバスタオルの散らかった脱衣所に持っていき、またベッドに戻り布団を畳む。
ツグミを会社に送り出す、玄関に立つツグミのスーツ姿。私の嫌いなスーツ姿。私を置き去りにするのはこの後姿。
おい、ちょっと。
ツグミに呼ばれ傍に寄る、いつもどおりなのに不意にキスされドキドキする自分。
ツグミは置いていかれる私の気持ちを知っていてこんな事をするのだろうか。本当にずるい人。だめだ、愛してる。
ツグミが出社したあとの部屋は何か寂しい。あんなに憎まれ口を叩かれたのにやはり私にツグミは必要なのだと感じる。
私はツグミが入らないと知っていても浴槽にお湯を毎日張る。もちろん私が後で入るのだが、ツグミは自分が使わなくてもバスタブにお湯がたっぷり入っていて、ゆらゆらと湯気を上げていなければその日の朝ゴハンの前に服を着てしまうのだ。それはどんな叱責よりも私の心に突き刺さる。
ツグミと夫婦同然の暮らしをして数年。私は結婚したい。だがそれは叶わない夢。あの人は私との結婚なぞ考えてもいないだろう。そう、それは叶わない夢。
ツグミが帰ってくるまでに私は家事をしてしまう。掃除、洗濯。育児の項目が無いのは寂しいがそれもやはり叶わないだろう。
テレビを見ながら今日の夕食を考える。
ツグミ、愛してる。そう繰り返し呟きながら鍋と睨めっこする私。きっと傍から見たら危ないヒトなんだろうなっとふと思うときがある。でも駄目。これは譲れない。だって私はツグミを食べてしまいたいほどに愛しているのだから。できたらそう、小指から順番に嘗めまわして…。
ドアの開く音と共に怒声が聞こえる。
このウスラトンチキがぁぁぁ、スリッパがでてねぇんだよ糞野郎!何べんいやわかんだこのボケがぁぁ!
ごめんごめん、今出すから。はいっ、どーぞ。
このぐらいすぐできるんだから帰ってくる前にやっとけってんだよ!何考えてんだただ飯食ってんだてめぇは!
うんうん、ごめんごめん。いつも美味しく食べさせてもらってるから。
朝のツグミよりも、ご覧の通り機嫌が悪い。社会の荒波とはこういう物なのか。
ゴハンにする?お風呂にする?それとも、わ・た
酒。冷やしてあったやつあんだろ。あれ2合な。はやくしろよ。
…し。うん、わかった。今準備するね!
お酒を徳利に移しお猪口を出し、テーブルに持っていくと既にツグミは服を脱いでいた。それを見るだけで私は欲情しかける。
お酒を飲んでいる時のツグミは静かだ。ゆっくりと味を楽しんでいるようで、私のことなど見えてやしないのだろう。正直少し寂しい。だがお酒を飲んでいてもやはりツグミは可愛い。じきに顔がぽーっと赤くなって揺れだす所なんて最高に美人だ。あぁ、ツグミ愛してる。
ツグミ、愛してるよ。
酔っ払った時とベッドの中でしか言えない言葉。耳までも赤くなるツグミ。
にゃはー。わ・た・し・も。
正直私はもう死んでも良いと思う。こんなツグミ。耐えられない。あぁ。ツグミ!
ご飯を少ししか食べて貰えないのは寂しいけど、でも今日は大丈夫。ツグミが可愛いから、大丈夫。
テーブルで寝てしまったツグミを抱きかかえてベッドまで運ぶ。優しくマットに降ろし、掛け布団をかけ部屋の電気を消す。
私は余ってしまったご飯をラップし冷蔵庫に入れ、洗い物をする。もちろんさっきのツグミを思い出しながら。
お風呂の予約まで全て終わらせダイニングの電気を消し、私も寝室に入る。
少しお酒くさいツグミも、また愛らしい。
静かに大きなベッドの逆側から布団に入り眼鏡をはずす。
おやすみ、つぐみ。愛してる。明日も明後日も、ずーっと愛してる。
私の毎日はこうして終わる。
窓の外には月が明るいのだろうか、カーテンもうっすらと上気しているようだ。
ベッドサイドには読みかけの本と、トトロの縫いぐるみがひっそりと佇むばかりだ。
-----------------------
元カノさんが久しぶりに読みたい気分だと言うので書いた。お題は深そうで浅いトトロ。
一時間ちょっとかかったかな。
書いたのとか久し振りだったけど相変わらず下手だ。
大体オチを決めとかないから訳わかんなくなる。書いてて嫌になる。全く…
ねよかな
私にも何か書いてよ。