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[2012年1月 更新]
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GhostTownsSpirits

2010-08-23 04:20:33 | ますべ的書き物風落書き
こんばんは、はじめまして。そしてさようなら。
また夢か?いいえ、おめでとうございます、あなたは晴れて自由の身です。
お葬式は一昨日終わりましたよ。

もう何も思い残すことはございませんか?
あの頃の恋をもう一度やり直したい?

ははっ、何を馬鹿なことを仰っているのですか、あの時貴方は彼女のことを嫌いになったと仰っていたではありませんか。
でもね、知っているのですよ。ずっと、ずっと心の片隅にはあの子がいたことを。

いいでしょう。貴方の魂が完全に還ってしまう前にもう一度だけ夢を見させてあげましょう。



なんだ、夢か。

学校から帰ってきて、昼寝をしていた。
友達から借りたマンガのせいで変な夢を見てしまった。
公立高校入試までもう時間がない。私立の入試は既に終わってしまった。
2校しか受けなかったが、どちらも受かった。家からはどちらも遠いが偏差値は65オーバーの進学校だ。悪くない。


なんてね、今は入試のことよりも明日彼女からバレンタインデーのチョコを貰えるかどうかの方が俺には大きな問題なんだ。

塾とは名ばかりの気のいいクラスメイト達。12月の切羽詰った時期に、数人のクソマジメな奴や女子達を横目に教室でトランプゲームに興じるアホなやつら。
でもそんなカスみたいな奴らでも今の俺には心地いい奴らなんだ。

彼女は同じクラスの女の子。
勉強しにきてます!っていう感じで、他の女子との会話も程ほどに自習に打ち込んでいる。
俺はカワイイとずっと思ってたけど、付き合ってることを教えたときの仲間達のリアクションから察するにそうでもないみたい。

10月の夜中、電話でどちらともなく好きだと言い合った。そのまま電話は朝日が昇るまで続いた。もう寝ないとね、明日も学校あるし。って彼女が言うから電話を切った。ずっと喋っていたかったけど。

僕が彼女を好きになったのは塾に入った時、だからもう2年半前。中学1年の4月か。
一目ぼれだった。初恋だった。席が隣になることは遂に1度もなかったけど、後姿も横顔も全部見てきた。大好きだった。
2年半の恋が実って付き合うようになった。
付き合うようになって知ったけど、彼女は中2の時から好きでいてくれたらしい。

どこが好き?って聞いてみたんだ、この間。
うーん、強いて言うなら声って言われた。ちょっと凹んだけど、でも俺に同じ質問されたら答えに困る。多分サディストっぽいとこって答えると思うけど、彼女が喜ぶとは思えない。


いよいよ今日だ。女の子にチョコを貰うなんて2回目。初めてじゃないのがちょっと残念。でも去年の冬は別の子と付き合ってたから。その子の事も確かに好きだった。というよりも依存していた。今思えば「彼氏・彼女」っていレッテルに憧れていただけだったんだと思う。

いってきまーす。

ぐしゃっ
鈍い音が住宅街にこだました。でも何も聞こえなかった。何も見えなかった。



なんだ、夢か。
懐かしい夢をみた。

隣で寝ている彼女の布団を直してやり、少し心苦しく思った。
本当はあの日に事故なんて起きなかった。しっかりと塾に1時間早く行き、彼女からチョコを貰った。みんなの前だと恥ずかしいというので、冷やかしに来ていた友達たちを廊下に出させて。どうせドアの前で聞き耳を立てているのが2・3人いるんだろうな、って思ってた。

今でも鮮明に思い出せる。照れているのか興味が薄れてきていたのか判らないけれど、やけに素っ気無く渡された、小さなバスケットに水色の細いリボンでラッピングしてあるチョコレート。

その場で開けて良いか尋ねると、ダメだといわれた。仕方がないから家に帰ってから開けたっけ。

手作りチョコがはいっていた。トリュフが。
6つ、綺麗に並んでいた。

でも先に目に付いたのは、トリュフの上に汚れないように綺麗な紙を敷いて置いてあったキットカットだ。
俺は悲しくて、切なくて、悔しくて。割らずに食べた。しょっぱかった。

ごめんな。とひとりごちて今の彼女の顔を見る。
かわいい寝顔、マジックで猫のようなヒゲを描きたくなるようなかわいさ。

大好きだよって良いながら頬にキスをする。小柄な彼女は手足を屈め、胎児のような格好で寝ている。

結局彼女には公立高校の入試1週間前に別れを切り出された。
県内1の難関校だった。もともと半分ぐらい記念受験のつもりだったけど、もはや何も考えられなくなってた。
メールで振るなんてずるい。深夜だから会ってくれとは言わないけど、せめて電話で話をしっかり聞かせてくれ。と食い下がったが、答えはNoだった。

朝まであと3時間ある。もう少し寝るか。

悲しい思い出。でも自分の過去を否定するつもりはない。
今は彼女の横で、彼女の体温を感じながら幸せの海に沈もう。




なんだ、夢か。

くそっ。毒づく俺は20歳になっていた。
そうか、バイトから帰ってきて深夜に中学の時の彼女と電話したんだっけ。
もう少し押したらヨリ戻せるんじゃねーの?とか思ってたな。笑える。
今の彼氏とウマくいってねーとか。しらねーって、あー。セックスしてえ。

電話の後、マンガを読んで寝落ちしたのか。枕元にマンガが置いてある。
やべー、全然話覚えてねーな。また読むのめんどくせぇ。

高校の頃の彼女との一夜とか、懐かしかったな。
でもあの時見た夢はナイトメアだった。2泊の旅行に行って、まさか二晩とも彼女が死ぬ夢見るなんてな。一体俺は何考えてたんだろ。目が覚めてから彼女に泣きついて起こしてしまったっけ。懐かしい思い出だな。

あと2週間で夏休みも終わりか。
やべ、あと3時間もしたらバイトじゃん。くそっ、だりぃな。

いってきまーす。


ぐちゃっ。

お前、だれだよ。なんか見たことあんな。
あーてめぇクソウサギだろ。たまに夢にでてくるやつだ。

空が近いな。



ははっ、あなたが空ですから。

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2 コメント

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Unknown (うぐいす)
2010-08-24 04:54:33
怖い話にするつもりはなかったし、今でも怖いとは思ってないよ。

多分これが俺の憧れだから。
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Unknown ()
2010-08-23 07:57:07
朝もういちど読んでもやっぱ泣いた
なんでこんなにひとりなんだろうね?誰といてもみんなひとりなの?
状況はなにも変わっていなくても昨日の自分の気持ちが馬鹿馬鹿しくなるのは予防線?
思い出を入れた箱の中にはいつからゴーストが住みつくの?
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