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コンピュータの世界を変える、ハードウェアの雄が仕掛けるITの新しい形

2014-07-03 19:02:33 | 日記
コンピュータの世界を変える、ハードウェアの雄が仕掛けるITの新しい形  という記事を見つけました

 米Hewlett-Packardは、7月2日からインド・ムンバイでアジア太平洋地域向けのイベント「HP World Tour」を開催している。初日と2日目はMedia Summitと題し、日本を含む同地域の100人近いメディア関係者に同社が2013年から提唱している「New Style of IT」というビジョンに関する最新の取り組みを紹介した。

 このイベントは2013年に中国・北京でスタート。2回目となる今回は、近年成長著しい新興国の1つであるインド西部のムンバイが舞台だ。ムンバイは近世に港湾都市として成立し、今では同国最大の経済都市となった。街中には近代的な高層ビルが立ち並ぶが、その合間には低層住宅もひしめく。職を求めて多くの人々が地方から集い、大都市としてダイナミックな発展を遂げている最中のムンバイは、まさに“New Style”を体現するにふさわしい場所と言えるだろう。

コンピュータのアーキテクチャを変える

 まず登壇したアジア太平洋・日本地域担当エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント ゼネラルマネージャ兼日本HP社長のジム・メリット氏は、直近のHPの経営状況について触れた。ハードウェアビジネスなどの低迷から過去数年間に大規模リストラを敢行した同社だが、2013年は財務面が大きく改善。メリット氏は2014年を「再建&拡大」の1年に位置付けているとし、2016年にIT業界をリードする企業として復活すると宣言した。

 New Style of ITはこうした同社自身の変革のみならず、IT業界の新たな潮流であるモバイル、クラウド、ビッグデータ、セキュリティを顧客が駆使することで変革を成し遂げ、そこから生じる価値を存分に享受してもらうというメッセージにもなっている。

 メリット氏は、その一例として「The Machine」というハードウェアの方向性を示した。The Machineは特定用途型のコアと「Massive Memory Pool」、その2つをフォトニクス技術をつなぐというもので、HPの中央研究所(HP Labs)で研究開発が行われているという。

 特定用途型のコアとは、現在まで主流の汎用型コアを用途に応じて利用する伝統的なスタイルから脱却し、ワークロードごとに最適化することで高効率性や低消費電力化などを実現しようというもの。その第一弾が2013年に発表した「Moonshot」サーバになるという。Massive Memory Poolは、SRAMやDRAM、フラッシュなどの異なる特性を持つメモリを組み合わせることで、データの高速アクセスや不揮発性などを両立させることを目指している。

 こうしたハードウェアの能力を引き出すには、熱の発生や電力効率、微細化などが限界に近づきつつあるとされるメタルケーブルから光ケーブルへの転換が必要になるため、フォトニクス技術でこれを実現する。メリット氏はThe Machineが新たなコンピュータアーキテクチャを創造するとし、2020年までに順次OSやSDK、エコシステムの形成などに取り組んでいくと説明した。The MachineはHPの将来の成功を約束するものだという。

New Styleの道筋を示す

 New Style of ITによって実現される姿とはどんなものか。エンタープライズサービス担当シニアバイスプレジデント ゼネラルマネージャのブルース・ダルグレン氏は、その姿は企業の求めるところによって様々ではあるが、そのためにはまず現在の姿を理解し、企業が目指すべき方向とその道筋を具体的かつ明確に描くことが必要だと語った。

 例えば、企業のIT予算のうち運用・保守など現在の環境を維持するためのコストが6~8割と占め、新規開発などに割り当てられる予算は2~4割ほどしかない。IDCなどの調査機関はIT予算の総額が今後も横ばいになると予想している。新規分野に対する投資を増やすには維持コストの比率を減らすか、比率を変えずにROIを確実に生み出さなくてはならない。

 ダルグレン氏は、新たにIDCと連携してアドバイザリーサービスを拡充し、New Style of ITとアプリケーションの近代化、モビリティ、データ分析、セキュリティの分野で企業顧客に、現状評価からワークショップと通じたビジョンや戦略の策定、手法、プロセスまでを一気通貫で提供していくと述べた。

 この取り組みは6月に米国の同社カンファレンスで発表されたものだが、「第三者機関による正当な分析評価をもとに、変革に必要なものを包括的に提供することによって、顧客の新しいスタイルを実現する。先のカンファレンスでは参加企業の半数以上がこのサービスの利用を希望した」(ダルグレン氏)とのことだ。

 なお、インドではNew Style of ITによる具体的な成果が遠隔医療という形で生まれている。HPは医療機関やNPOと協業して、「eHealth Center」という遠隔医療サービスをインド国内の6州で展開する。インドでは人口の7割以上が農村部に住み、医療機関の75%が都市部にある。eHealth Centerは、輸送可能なコンテナにクリニック設備やコンピュータ・通信システムを備え、地域の医療格差を解決する仕組みとして期待されている。

 利用者は2年間で2万3000人に上っており、病気や怪我をした人をケアするだけでなく、診療データをクラウドに集約、分析して農村部における疾病予防に役立てる取り組みに発展しつつあるという。HPでは9月以降にeHealth Centerをフィリピンやブータンにも拡大し、順次グローバル展開していく計画である。

ヨドバシカメラも登場、ITインフラは生命線

 New Style of ITでいうモバイル、クラウド、ビッグデータといった領域は、ともすると新規ビジネスのためのアプリケーション層に話題が集中し、ベンダー各社もここで差別化を図ろうとしている。それらを支えるITインフラ層では汎用化、標準化といった流れからベンダーの差異が生まれにくなり、ユーザー側の関心もアプリケーション層に比べれば薄まってしまっている感がある。

 この点でHPは、ハードウェアベンダーとして歴史を刻んてきたことからも、とりわけこだわりがあるようだ。初日後半のセッションではITインフラに関する話題に時間が割かれ、サーバの仮想化と集約、クラウドとの連携、ソフトウェア定義のデータセンターというITインフラのステップを示しながら、同社の取り組みが説明された。

 例えば、統合型システム「HP ConvergedSystem」では仮想化集約やビッグデータ分析などのワークロードごとに、同社のノウハウをもとにハードウェアやソフトウェアの構成を最適化した製品をラインアップを展開する(日本では4月に発表)。コンサルティングサービスやIaaS、統合インフラ管理ツールの機能強化など、ITインフラ層を巡ってはあらゆるユーザーニーズに対応するための体制を拡大させている。

 HP テクノロジーコンサルティング バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのモハン・クリシュナン氏は、ITインフラにこだわるユーザー事例として、韓国の新韓銀行グループとヨドバシカメラを挙げた。

 新韓銀行グループではウォン高による韓国経済の停滞や相次ぐM&Aによってデータセンターが8カ所にまで肥大化し、ITインフラにおける複雑化や効率性の悪化といった問題を抱えた。そこで10年後の拡張性に対応し得るデータセンターに集約すべく、HPが検討段階のコンサルティングから参加し、ワークショップを通じた戦略立案やキャパシティプランニング、システムの導入実装までを包括的に手掛けたという。

 その結果、新データセンターは処理能力が50%向上し、PUE値も40%改善された。その一方、10年間における350万ドルのファシリティコストや1000万ドルの電力コストの削減を見込んでいる。

 ヨドバシカメラはHPのソリューションで基幹システムの仮想化や統合化を図っており、近年ではインメモリデータベースの「SAP HANA」の導入でデータの高速分析も可能にした。クリシュナン氏は、「ECの成長、とりわけモバイルコマースの台頭にどう対応するかが小売業の課題。物流の最適化も叶えたヨドバシカメラは代表的な成功事例だ」と語った。

スパコンを冷やす

 HP サーバー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのスティーブン・ボヴィス氏は、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けの新システム「HP Applo」を披露した。HP Apploでは完全水冷方式を採用したApollo 8000と空冷式の同6000の2つをラインアップする。

 ボヴィス氏によれば、Apollo 8000の完全水冷方式は米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)との共同開発によって実現した。NRELではエネルギーに関する各種研究にスーパーコンピュータを利用するが、膨大な計算処理においても徹底した省エネルギーを実現していく立場だ。水冷方式はデータセンターなどでも採用があるものの、特にミッションクリティカルなスーパーコンピュータでは技術的な難しさや万一のダメージリスクなどの観点から、水冷方式の採用には厳しい見方があったという。

 HPでは特に熱源となりやすいプロセッサやメモリ周辺を効率的に冷却しつつ、万一のリスクでもコンピュータにダメージを与えない特許技術を開発。特に冬場は熱交換によって生じた排熱をオフィスの暖房に利用できるという。

 その結果、ラックあたり最大144台のサーバを実装可能とし、処理能力は250テラフロップスを実現している。3メガワットの空冷システムを利用するデータセンターに導入した場合のCO2削減効果は年間3800トンと試算され、NRELではシステムの運用コストを年間最大80万ドル、排熱利用によるオフィスの暖房コストを同20万ドル削減できると見込んでいる。

省エネか