こんな貝が採れた

海岸での打ち上げや、磯採集、漁港での採集と、貝集めのブログです。

ヒラザクラ

2014-06-21 09:41:22 | 二枚貝類
以前から気になっていた貝に、ヒラザクラとヒカンザクラがあります。
日本産軟体動物分類学二枚貝鋼/掘足鋼では、両種は別種としてヒラザクラは房総以南、ヒカンザクラは紀伊半島以南と書かれています。
ヒラザクラとして図鑑などに載せられている貝は、下の貝で、最近ではほとんど見なくなった貝の一つです。


Tellinides ovalis Sowerby 1825
ニッコウガイ科 ヒラザクラ
串本町橋杭産 打ち上げ個体 30.2㎜

串本でも、昔の橋杭海水浴場では、このヒラザクラもたまに打ち上がっており、サクラガイやベニガイも普通に採れました。
今では、一部の個所にサクラガイが生き残っているだけとなっています。
ただ、マダラチゴトリやヒメシラトリの生きた物も波によっては大量に打ち上げられていることもあり、回復の兆しも少しは感じています。

ヒカンザクラですが、図鑑に載った物はほとんどなく、標準原色図鑑全集3『貝』に、この記述があります。
『紅桃色の種類は別種ヒカンザクラT.coccinea(Reeve)で、紀伊半島の浅砂底にすむ。』
この記述に当てはまりそうなのが、下の貝と思っていました。


Tellinides coccinea Reeve 1818
ニッコウガイ科 ヒカンザクラ
沖縄県残波岬産 死殻個体 32.5㎜

殻の形はほぼ同じで、成長輪肋や艶の出方も同じようですが、僅かにヒカンザクラの方が太短い感じを受けます。
ただ、個体変異の域を出ないと思っています。

以前から気になっている貝に、下の貝があります。


Tellinides sp?
ニッコウガイ科 
愛知県三河一色産50~60mうたせ網 生貝個体 32.5㎜

前の2例とは明らかに違う特徴を持っているように思っています。
この貝は、形が前方に細くなり、成長肋がやや板状に立ちます。
艶もありますが、鈍い感じを受けます。
水深がやや深いための違いなのかもしれませんが、同じような個体を何個かネット上で見ています。

ここで載せた、橋杭産の個体はヒラザクラ、沖縄産の個体がヒラザクラの色彩変異、三河一色産の個体がヒカンザクラとして呼ばれた個体ではないかと考えたのですが、根拠はありません。
ヒカンザクラが紀伊半島の浅砂底に住むと言うのが引っ掛かっています。
 

ウズマキグルマ

2014-06-19 21:40:00 | 巻貝類
最初この貝を見た時は、とてもクルマガイの仲間とは思えませんでした。
ミミズガイ類か、何かの奇形かとも考えていましたが、Architectonidae of the Indo-Pacificと言うクルマガイの図鑑でクルマガイの仲間と言う事を知りました。
その図鑑には、日本で4種ほどが採れると書かれています。
その中でもこのウズマキグルマは、一番多く大きい種類のようです。
潮岬沖でもこの仲間は記録されていて、水深150mを越えないと出てこないようです。
記載以外は他ではあまり紹介されていない様なので、載せてみます。


Spirolaxis cornuammonis Melvill & Standen 1903
クルマガイ科 ウズマキグルマ
串本町潮岬沖ドレッジ揚り水深170m 4.5㎜



Spirolaxis cornuammonis Melvill & Standen 1903
クルマガイ科 ウズマキグルマ(底面)
串本町潮岬沖ドレッジ揚り水深170m 4.5㎜



Spirolaxis cornuammonis Melvill & Standen 1903
クルマガイ科 ウズマキグルマ(側面)
串本町潮岬沖ドレッジ揚り水深170m 4.5㎜

チリメンジュロウジンガイ

2014-06-15 15:05:01 | 二枚貝類
この貝を最初に知ったのは、『続原色日本貝類図鑑』でした。
それ以後、あまり図鑑では見ない貝の一つです。
大きな要因は、やはり個体数が少ないことでしょうね。
私も未だに頂き物の半片です。
ペアの標本はあこがれの一つですが、拾ってみたいですねぇ。
ニッコウガイ科では、大きくなる貝で、板状に立った成長肋が綺麗に出ます。
同じような名前のジュロウジンガイは、チリメンジュロウジンガイとは属の違う貝ですが、こちらは未だに図鑑でしか見たことがありません。
沖縄や奄美ではほんとに採集した人はいるのでしょうか?
実物を見てみたいですね。


Hemimetis plicatus Valenciennes 1846
ニッコウガイ科 チリメンジュロウジンガイ
奄美大島宇検村産 打ち上げ半片 64.9㎜


Hemimetis plicatus Valenciennes 1846
ニッコウガイ科 チリメンジュロウジンガイ(内面)
奄美大島宇検村産 打ち上げ半片 64.9㎜

アシヤガイとオオアシヤガイ

2014-06-01 20:37:59 | 近似種比較(巻貝)
オオアシヤガイは、あまり採れない貝で、日本近海産貝類図鑑にも載せられてはいるものの、特徴が解りにくい貝の一つです。
串本周辺では、小さなものを2個体と、大きなものを1個体採集しているだけで、後手元にあるのはフィリピン産の物だけです。
アシヤガイの方は、普通に採れる貝で、還元層の場所での埋もれた転石の下などから採れ、普通種と言えます。
並べて載せる事で違いが解ると思い記事にしてみました。
向かって左がオオアシヤガイですが、細かな螺肋と成長肋は日本近海産貝類図鑑を見て頂きたいですが、オオアシヤガイは成長肋が細かく螺肋の間を刻みます。
アシヤガイの方は、螺肋が強くなって、成長肋は螺肋が小さな顆粒になるような印象を受けます。
一番大きな特徴は、殻口の大きさです。
オオアシヤガイの殻口は、横に長くなって、アシヤガイの殻口に比べ長くなっている事が解ります。
模様も、アシヤガイは細かな絣模様で、オオアシヤガイは不規則な雲状の模様です。


左オオアシヤガイ(潮岬産)と右アシヤガイ(潮岬オゴクダ浜産)


左オオアシヤガイ(潮岬産)と右アシヤガイ(潮岬オゴクダ浜産)