鎌倉エフエム、鎌倉シーサイド・ステーション(水曜日)ブログ

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国立西洋美術館「イタリア・ルネサンスの版画」展

2007年04月18日 22時56分28秒 | カルチャークルージング
2007年4月18日のカルチャークルージングは、東京上野公園内にある「考える人」でおなじみの国立西洋美術館で開催されている「チューリヒ工科大学版画素描間コレクションによるイタリア・ルネサンスの版画展~ルネサンス美術を広げたニュー・メディア~」展です。

21世紀の人間から見ると、版画とニュー・メディアってなかなか結びつかない。テレビやネットで世界中の情報を居ながらにして手に入れられる時代に生きていると16世紀の人たちのことは想像することも難しい。

持ち運びできる油彩や版画はルネサンス時代に完成されたばかりの技術です。油彩は同じものを大量に製作するのがほぼ不可能であるけれど、版画は版が摩滅しない限り大量に生産することができるために、比較的手軽に入手することができる美術品であったそうな。研究家の手にかかると、版の摩滅具合から刷られた順番なども分かるそうです。

そのために、イタリアの最新の流行であるルネサンス美術を基にした版画が出回り比較的に短い時間でヨーロッパ中に広がったのです。時代の変化を敏感に感じる芸術家たちが自分たちの創作のヒントを版画に描かれた最新の流行に求めたのも無理が無いでしょう。実際にイタリアに行きたくてもルネサンス期のイタリアは戦乱で物騒ですし、旅自体が命がけですから。今も昔も新しいものに寄せる好奇心は変わらないのかもしれません。

面白いのはラッファエロが教皇庁よりタペストリーの原画としてブリュッセルに送った絵が、現地にてタペストリーの完成より早く版画にされ流布したことでしょうか。今から考えると完璧に著作権侵害なのですが(当時でも)、おおらかな時代だったのかうやむやになったようです。

西洋美術館はこうした渋い美術館側が見せたい展示を見せてくれるのが嬉しいです。集客力を誇る展示が悪いとは言いませんが、あまり見る側の好みにばかり合わせていると偏りがちになってしまいます。

チューリッヒ工科大学の版画素描コレクションなどは、西洋美術館の心意気があって始めて日本に紹介されたコレクションではないでしょうか。

会期は2007年5月6日まで。

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