bun、文、ぶん この発音で意味するものはなんであろう。移入また翻訳文法からとりいれ、sentnceに相当する文とした。単位文は一つの文に充てられた。しかし翻訳には、文また文章とすることが行われていた。文を議論し日本語文法の用語となった。もともと文は、表現のための言い方である文であり、ことばのいろいろである。文句は、ぶんく ではなくて、もんく と定着して、文にある意味内容を表している。経文として伝えるところを理屈ある訳ありの言葉として文句を言うとなったものか。
そして文法単位に翻訳した概念が応用されて、日本語の説明を詩句と同様にするようになるが、かたや中国古典語による、かたや西欧文法の輸入になる。したがって、文をそのものと意識するようになるには外国語教育の影響のもと、文規定をもとめる流れが、少なくとも明治後期から大正期にあったもので、昭和に入って英語学習と英文法の考え方の理念に合わせようとする外国語研究者たちのものであった。単位文を見て、日本語の文は翻訳文法に当てはめると、そう単純明快にはならない。
国語にあるその要素をとらえて、文には主語を必須にしようとしたわけではない。それを外国語教育者が文規定に合わせて日本語をとらえて主語述語の説明の規範としたもので、いわば、日本語文を自縄自縛にしてしまったので、ついには、日本語に主語をとらえる文の議論をまともに国語の現象を見ることなく、翻訳文法を批判しながら、その基準に沿って、日本語の文法を解説しようとしたのである。文句は西欧文典にあったわけでなく、翻訳はまさしき言葉のとらえ方を国語に合わせて行ってきた、その国語の現象を見ることなく、批判の刃を文句にするという、文法の標準を一方的に偏ってきた語学研究にあったのである。
英語文法で主語と述語とからなる文を必須要素というならば、国語文法で主語と述語からなる文があり、それは必須要素ではないとすれば、文形態をさらに分析できたはずである。
文
精選版 日本国語大辞典「文」の解説
ぶん【文】
〘名〙
① 外見を美しく見せるためのかざり。もよう。あや。
※新撰和歌(930‐934)序「抑夫上代之篇。義尤幽而文猶質」 〔礼記‐楽記〕
② 文章。また、詩文。転じて、それらを集めた書物。
※古事記(712)序「文(ぶん)を敷き句を構ふるに」
③ 文学。学問。学芸。また、これらを励み修めること。
※保元(1220頃か)上「文にも非ず、武にもあらぬ四宮に、位を越られて」 〔書経‐大禹謨〕
―中略ー
⑧文法上の言語単位の一つ。文章・談話の要素。単語または文節の一個または連続で、叙述・判断・疑問・詠歎・命令など話し手の立場からの思想の一つの完結をなすもの。定義には諸説ある。西洋文法では、主語・述語を具えることが文成立の条件とされることがあるが、日本文法では必ずしもそれによりがたい。文章。センテンス。〔広日本文典(1897)〕
もん【文】
〘名〙
① 仏教の経文の一節や呪文のこと。
※観智院本三宝絵(984)中「諸の智徳名僧おどろきあやしみて、各文を出て問心みるに」
※太平記(14C後)二四「虚空に向ひ目を眠り、口に文(モン)を呪したるに」
② 経文以外で、よりどころとなるような、権威ある文章・文句。また、文字、文句。
※観智院本三宝絵(984)下「其間にあやしく妙なる事多かれども、文におほかれば、しるさず」
成り立ち
>出典『角川新字源 改訂新版』(KADOKAWA)
象形。胸に文身(いれずみ)をほどこした人の形にかたどり、「あや」の意を表す。ひいて、文字・文章の意に用いる。
字通より
>字形
文身の形。卜文・金文の字形は、人の正面形の胸部に文身の文様を加えた形。文様には×や心字形を用いる。
(略)
産は生子の額にアヤツコをしるす意。額に文身を加えたものを顏(顔)という。中国の古代に文身の俗があったことは卜文によって明らかであり、のち呉・越・東方の諸族には、長くその俗が残された。
古辞書の訓
〔名義抄〕 ヒカリ・カザル・モトロク・モトロカス・フミ・アヤ・オゴク・マダラ・ウルハシ
〔字鏡集〕 ヒカリ・マダラク・オモフ・マダラ・ウルハシ・アヤ・モトロク・オゴク・フミ・カザル・ヱガク
熟語
【文句】もんく 文章・章句。
【文字】もんじ・もじ ことばをしるす記号。中国ではいわゆる漢字。
【文通】ぶんつう 文法。
【文典】ぶんてん 文法。
【文事】ぶんじ 学問・儀礼など。〔穀梁伝、定十年〕事りと雖も、必ず武備り。
【文辞】ぶんじ 文詞。記述。
【文質】ぶんしつ 表現と内実。