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週刊 お奨め本
2011年4月10日発行 第441号
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『ミステリウム』 エリック・マコーマック(増田まもる・訳)
¥2,400+税 国書刊行会 2011/1/25発行
ISBN978-4-336-05318-3
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地震が続いています。自然が持つ脅威を、私たちは忘れないでしょう。
私たちは自然への畏怖を思い出し、蹂躙をやめるべきときに来ていたのではないかという気がします。自然を思いのままにあやつれると思い上がり、原子力をも支配できると驕った果てが今の原発問題なのではないかと。
しかしそれなら天誅は東北の無辜の人々にではなく、東電や原子力保安院の連中の上にこそ落ちるべきだよな!
さて。
今回ご紹介するのは、カナダのポストモダン作家エリック・マコーマックの、ミステリ小説。
…と紹介していいんだよな、たぶん。
ミステリだよね、これ。
新聞社で記者見習いをしている大学生、ジェイムズ・マックスウェルは、行政官ブレアの依頼で、<島>の北部にある小さな炭鉱町キャリックへ赴き、その地で起きている事件を取材することになった。事件の謎を握ると思われる薬剤師ロバートが、彼にならインタビューに答えるのではないかと思われる、と。
キャリックの事件。
ある日、この町に<植民地>から水文学者がやってくる。やがて町では記念碑や墓石が破壊されたり、図書館の本が酸で溶かされたり、羊飼いが殺されたりといった事件が続けざまに起きる。さらに動物たちが死んでいき、子どもたちが、おとなたちが、次々に倒れ…。
器物損壊の犯人は。
殺人事件の犯人は。
町に蔓延する死病は伝染病なのか。飲料水に毒が混入されたのか。
その犯人は誰なのか。
動機はなんなのか。
いかにもミステリっぽいです。
だけど一筋縄ではいきません。
> 「動機。あなたは本当に動機や原因や結果みたいなものを信じているの? 本や劇以外で、未解決の事柄がきちんと片付くと信じているの?」(133頁)
町の人々はほとんど死に絶え、わずかに生き残っている証言者たちは、自分の意志とは関係なくひたすらしゃべり続けるという不思議な症状に冒されている。
彼らの証言を聞き、ロバートの手記を読み、キャリックの町の忌まわしい過去を調べ上げたマックスウェルは真実へと迫る。しかし…。
「ミステリウム」とは、「秘儀」「奥義」を意味するラテン語であり、英語のミステリーの語源である。そして「手仕事、技術」「同業者組合(ギルド)」の意味も持つ。
本書はそれらの意味を下敷に、すべての意味を含み、目くるめく読書体験を読者に与えてくれる。
訳者・増田まもるがあとがきでその魅力を簡潔にまとめ上げてくれている。
> 物語のあちこちに散りばめられた不気味でおぞましいエピソードやイメージ、ときとして噴水のようにほとばしることば遊びや知的遊戯、そしてジェットコースターのように二転三転するプロットの果てに、「私」も読者も、想像を超えた認識へと運ばれていくのです。それはもうたまらない快感ですので、どうぞ存分にご堪能ください。(312頁・訳者あとがき)
ミステリ小説というより、幻想小説と呼んだほうがしっくり来る気がする。
だけどやっぱりミステリなのだ。
めくるめく読書体験。どうぞあなたもご体験ください。
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http://www.mag2.com/m/0000099780.html
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『ミステリウム』 エリック・マコーマック(増田まもる・訳)
¥2,400+税 国書刊行会 2011/1/25発行
ISBN978-4-336-05318-3
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地震が続いています。自然が持つ脅威を、私たちは忘れないでしょう。
私たちは自然への畏怖を思い出し、蹂躙をやめるべきときに来ていたのではないかという気がします。自然を思いのままにあやつれると思い上がり、原子力をも支配できると驕った果てが今の原発問題なのではないかと。
しかしそれなら天誅は東北の無辜の人々にではなく、東電や原子力保安院の連中の上にこそ落ちるべきだよな!
さて。
今回ご紹介するのは、カナダのポストモダン作家エリック・マコーマックの、ミステリ小説。
…と紹介していいんだよな、たぶん。
ミステリだよね、これ。
新聞社で記者見習いをしている大学生、ジェイムズ・マックスウェルは、行政官ブレアの依頼で、<島>の北部にある小さな炭鉱町キャリックへ赴き、その地で起きている事件を取材することになった。事件の謎を握ると思われる薬剤師ロバートが、彼にならインタビューに答えるのではないかと思われる、と。
キャリックの事件。
ある日、この町に<植民地>から水文学者がやってくる。やがて町では記念碑や墓石が破壊されたり、図書館の本が酸で溶かされたり、羊飼いが殺されたりといった事件が続けざまに起きる。さらに動物たちが死んでいき、子どもたちが、おとなたちが、次々に倒れ…。
器物損壊の犯人は。
殺人事件の犯人は。
町に蔓延する死病は伝染病なのか。飲料水に毒が混入されたのか。
その犯人は誰なのか。
動機はなんなのか。
いかにもミステリっぽいです。
だけど一筋縄ではいきません。
> 「動機。あなたは本当に動機や原因や結果みたいなものを信じているの? 本や劇以外で、未解決の事柄がきちんと片付くと信じているの?」(133頁)
町の人々はほとんど死に絶え、わずかに生き残っている証言者たちは、自分の意志とは関係なくひたすらしゃべり続けるという不思議な症状に冒されている。
彼らの証言を聞き、ロバートの手記を読み、キャリックの町の忌まわしい過去を調べ上げたマックスウェルは真実へと迫る。しかし…。
「ミステリウム」とは、「秘儀」「奥義」を意味するラテン語であり、英語のミステリーの語源である。そして「手仕事、技術」「同業者組合(ギルド)」の意味も持つ。
本書はそれらの意味を下敷に、すべての意味を含み、目くるめく読書体験を読者に与えてくれる。
訳者・増田まもるがあとがきでその魅力を簡潔にまとめ上げてくれている。
> 物語のあちこちに散りばめられた不気味でおぞましいエピソードやイメージ、ときとして噴水のようにほとばしることば遊びや知的遊戯、そしてジェットコースターのように二転三転するプロットの果てに、「私」も読者も、想像を超えた認識へと運ばれていくのです。それはもうたまらない快感ですので、どうぞ存分にご堪能ください。(312頁・訳者あとがき)
ミステリ小説というより、幻想小説と呼んだほうがしっくり来る気がする。
だけどやっぱりミステリなのだ。
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