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週刊 お奨め本
2011年10月9発行 第467号
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『ファントム・ピークス』 北林一光
¥629+税 角川書店(角川文庫) 2010/12/25発行
ISBN978-4-04-394402-6
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本書は、2007年に単行本として出版され、2010年に文庫化された小説です。
動物パニック系ですね。
もともとは2005年の第12回松本清張賞応募作で、最終候補に残ったそうです。
ま、つまり、受賞はできんかったわけやね。ちなみにこの年の受賞作は『一枚摺屋』(城野隆・著)。
それがどうして二年後に出版されたかというと、著者がガンを発症し、2006年に他界。その早すぎる死を惜しんで、ということらしい。
そう聞くと、作品自体の評価じゃないんじゃないか、とか思っちゃいますけど(笑)。
話題にはなったし、当時お読みになった方もいらっしゃるかも。
発行人はそーゆー本を今頃読んでるわけですが(^^;ゞ。
でも、これ、話題先行ってだけじゃなくて、なかなかいいですよ。
新人の処女作とは思えない読みやすい文章と構成力を持ってます。
長野県安曇野。
九月。秋の空気に誘われて、杳子は茸狩りのために山に入った。
東京から引っ越してきて三年。喘息持ちで病弱な杳子は、澄んだ空気と山歩きとで驚くほど健康的になっていた。それもやさしい夫、周平のおかげ。
幸せな気持ちをかみしめて歩く杳子に、そのとき、なにものかが襲ってきた…。
翌年四月。
杳子の頭蓋骨が見つかった。決して杳子が足を向けるはずがない急斜面で。
春になって雪崩が起きたために、偶然見つかったのだ。
結婚生活は六年。短すぎる。周平は杳子を失った痛手を乗り越えられずにいる。
> 「あいつが死んだ理由を知らなければ、おれは自分の人生に納得などできない。いつまで経ってもな」(17頁)
その頃、ふもとの農家はサルによる農作物被害が頻出していた。
山口凜子は信州大学農学部<野生動物研究会>の助手である。彼女はそのために調査にやってきた。
周平は偶然、フィールドワークをしていた凜子と山で出会う。
> その時だった。二人の頭上を、サルの大群がかまびすしく吠えながら枝を渡って行った。ひどく興奮しているようだった。[…]
> 「なんだか怯えているみたい。[…]逃げ惑っているように見えません?」(27頁)
五月。
若い男女ふたりずつのグループで、女性がひとり行方不明になった。
同日、子連れの主婦も行方不明に。
六歳の女児は、凜子によって保護された。
女児は、ショックのために口をきけなくなっていた。
そして行方不明の女性と主婦は見つからないまま…。
神隠しが起きる山。
それからも事件は起きた。
ありえないことが起きていた。ありえない化け物が山にいる…。
> 一瞬、周平は殺されても構わないという気になった。杳子と同じ血肉になるのも悪くないという気になった。だから、「さっさと殺して、このおれを喰え!」という叫びは哀願のようにさえ聞こえた。(312頁)
> 「僕たちはこれからしばらく本来の自然界にはあり得ない脅威を感じつつ山に入ることになるんでしょうね。しかも、それは幻かもしれない……」[…]
> その怨念はいまだ浄化されず、山中を漂っているのかもしれない――三人は同じ思いに囚われながら山脈を見つめ、むっつりと黙り込んだ。(326頁)
ありえないことにも、理由はある。
そしてそれはほぼ、人間が原因なのだ。
健気で美しいはずの、命。
それを歪めてしまうのは人間なのだ。人間の愚かさが…。
山歩きが怖くなっちゃう本ですね(笑)。
新人らしく、人間関係が中途半端になっちゃってるとことか、多少気になるところがありはしますが、でも勢いで読んじゃえます。
山ガールとか、ハイキングやトレッキングが最近は人気ですが、自然への畏怖は忘れないようにしたいです。
でも怖れてばかりいるんじゃなくて、自然を敬い、自然の美しさを愛でる気持ちも忘れないでいたいものです。
読書好きでインドアライフを堪能している発行人ですが、最近はちょっとアウトドアにも楽しさを見つけ出しているところなのよー。
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まぐまぐサイト内では検索がしにくいので、自分の覚えとしてここにもUPしています。
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『ファントム・ピークス』 北林一光
¥629+税 角川書店(角川文庫) 2010/12/25発行
ISBN978-4-04-394402-6
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本書は、2007年に単行本として出版され、2010年に文庫化された小説です。
動物パニック系ですね。
もともとは2005年の第12回松本清張賞応募作で、最終候補に残ったそうです。
ま、つまり、受賞はできんかったわけやね。ちなみにこの年の受賞作は『一枚摺屋』(城野隆・著)。
それがどうして二年後に出版されたかというと、著者がガンを発症し、2006年に他界。その早すぎる死を惜しんで、ということらしい。
そう聞くと、作品自体の評価じゃないんじゃないか、とか思っちゃいますけど(笑)。
話題にはなったし、当時お読みになった方もいらっしゃるかも。
発行人はそーゆー本を今頃読んでるわけですが(^^;ゞ。
でも、これ、話題先行ってだけじゃなくて、なかなかいいですよ。
新人の処女作とは思えない読みやすい文章と構成力を持ってます。
長野県安曇野。
九月。秋の空気に誘われて、杳子は茸狩りのために山に入った。
東京から引っ越してきて三年。喘息持ちで病弱な杳子は、澄んだ空気と山歩きとで驚くほど健康的になっていた。それもやさしい夫、周平のおかげ。
幸せな気持ちをかみしめて歩く杳子に、そのとき、なにものかが襲ってきた…。
翌年四月。
杳子の頭蓋骨が見つかった。決して杳子が足を向けるはずがない急斜面で。
春になって雪崩が起きたために、偶然見つかったのだ。
結婚生活は六年。短すぎる。周平は杳子を失った痛手を乗り越えられずにいる。
> 「あいつが死んだ理由を知らなければ、おれは自分の人生に納得などできない。いつまで経ってもな」(17頁)
その頃、ふもとの農家はサルによる農作物被害が頻出していた。
山口凜子は信州大学農学部<野生動物研究会>の助手である。彼女はそのために調査にやってきた。
周平は偶然、フィールドワークをしていた凜子と山で出会う。
> その時だった。二人の頭上を、サルの大群がかまびすしく吠えながら枝を渡って行った。ひどく興奮しているようだった。[…]
> 「なんだか怯えているみたい。[…]逃げ惑っているように見えません?」(27頁)
五月。
若い男女ふたりずつのグループで、女性がひとり行方不明になった。
同日、子連れの主婦も行方不明に。
六歳の女児は、凜子によって保護された。
女児は、ショックのために口をきけなくなっていた。
そして行方不明の女性と主婦は見つからないまま…。
神隠しが起きる山。
それからも事件は起きた。
ありえないことが起きていた。ありえない化け物が山にいる…。
> 一瞬、周平は殺されても構わないという気になった。杳子と同じ血肉になるのも悪くないという気になった。だから、「さっさと殺して、このおれを喰え!」という叫びは哀願のようにさえ聞こえた。(312頁)
> 「僕たちはこれからしばらく本来の自然界にはあり得ない脅威を感じつつ山に入ることになるんでしょうね。しかも、それは幻かもしれない……」[…]
> その怨念はいまだ浄化されず、山中を漂っているのかもしれない――三人は同じ思いに囚われながら山脈を見つめ、むっつりと黙り込んだ。(326頁)
ありえないことにも、理由はある。
そしてそれはほぼ、人間が原因なのだ。
健気で美しいはずの、命。
それを歪めてしまうのは人間なのだ。人間の愚かさが…。
山歩きが怖くなっちゃう本ですね(笑)。
新人らしく、人間関係が中途半端になっちゃってるとことか、多少気になるところがありはしますが、でも勢いで読んじゃえます。
山ガールとか、ハイキングやトレッキングが最近は人気ですが、自然への畏怖は忘れないようにしたいです。
でも怖れてばかりいるんじゃなくて、自然を敬い、自然の美しさを愛でる気持ちも忘れないでいたいものです。
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