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読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

『クラウド・ナイン』 服部真澄

2019年04月08日 | 読書日記

『クラウド・ナイン』 服部真澄
¥1,750+税 講談社 2015/9/15発行
ISBN978-4-06-219707-6

『ブラッド・セロ』『クラウド・ナイン』の二編の中編を収録。

『ブラッド・ゼロ』は人工血液、『クラウド・ナイン』はデータセンターのエネルギー問題を描く。服部真澄らしく骨太な文章で、いつものことながら、この人の著作を読んでると自分が頭がよくなったような気がしちゃう。

舞台は検索エンジンから成長した巨大企業『オッド・アイ』。グーグルみたいなもんですかね。
ビッグデータの収集についての件が戦慄。さらりと読み飛ばしそうに書いてるところが余計に。


『ひょいと四国のお遍路へ』 吉田正孝

2019年04月06日 | 読書日記

『ひょいと四国のお遍路へ 千二百キロの歩き旅』 吉田正孝
¥1,600+税 現代書館 2006/1/25発行
ISBN4-7684-6918-3

「ひょいと」という軽い響きと、「はじめに」に定年退職後に四国遍路を考えるにあたって「37年間勤めたのだからもう絶対に働きたくない」と書いているのを見て、これは面白いかもしれない、と思ったのだが。

なにしろ十年以上前の本なので、すでに参考にならない部分は多そうだ…。
定年退職後でお金にも時間にも余裕があるところが参考にならなさそうだしね。

でも参考になるところもある。
ああ、私も四国遍路に行きたいなあ。宗教抜きでウォーキングとして。1200Km。燃えるわー。

 

お遍路にはあまり関係ないんだけど、興味を引いた点。
115頁に、聲明とお経とご詠歌の違いが載っていた。聲明はサンスクリット語の真言が入っているもの、入ってないものはお経。お経に節をつけたものがご詠歌。ほほう。
142-143頁、銭形砂絵についての記述が。六十九番札所観音寺の裏手にあるらしい。これ、気になってるんだよねー。一度行きたい。


『芸人式新聞の読み方』 プチ鹿島

2019年04月05日 | 読書日記

『芸人式新聞の読み方』 プチ鹿島
¥1,400+税 幻冬舎 2017/3/10発行
ISBN978-4-344-03085-5

>  新聞は、キャラが違うからこそおもしろい。書いていることがバラバラだからこそ、読み比べる楽しさがある。(6頁)

私は読み比べはしないけど、「キャラが違う」ってのは分かるなー。
読者がそれぞれ好みの新聞を選べばいい。すべての新聞が同じだったら価値観の多様性も消されるってことだよね。政権はそれを求めてるんだろうけど。
TVも同様。政権の顔色窺って右へ倣えしちゃってはつまんないよ。筆頭がNHKだけど。
もっとはっきりカラーを打ち出していいと思うな。

 

>  昨今は新聞記事の多くがネット配信される時代だ。たとえば『ヤフーニュース』は、たくさんの数の新聞社や雑誌社からのニュース記事を集めて配信するポータルサイトとして機能している。ネットユーザーは「あの記事、ヤフーニュースで見たな」という認識でしかなく、その配信元が『時事通信』なのか『産経新聞』なのか『日刊ゲンダイ』なのか、いちいち確認していない人もいると思う。(245頁)

人もいるっていうか、ほとんどだと思うな。

 

>  新聞には、ネット時代の人が求める不偏不党・公正中立などといったものはない。あるのはおじさんたちの言い分や、物の見方だろう。それは偏っていて気に入らないこともあるだろう。
 しかし、世界にはマルかバツか、白か黒かで割り切れる真実など存在しない。偏っているからこそ見えてくる嘘や、いかがわしいからこそわかる本当が、ほころびのように顔を出すのだ。
 この世界が、白黒つかないグレーなものであることを恐れるな。そして、行間を読み、疑うことを楽しむ余裕を取り戻そう。(270頁)

おもしろい本だった!!

実はこの本、愛知県図書館の「新聞切り抜き作品コンクール優秀作品展」の関連書籍として置いてあった本なんだよね。新聞を学習に利用しよう、新聞は役立つ、新聞すごい、っていう文脈に持っていきたいだろう新聞社に対して、「実は偏ってるよね」と、その偏りを愛するとはいえ言っちゃう本を置くというのはある意味ちょっと笑える。


『脳は回復する』 鈴木大介

2019年04月01日 | 読書日記

『脳は回復する 高次脳機能障害からの脱出』 鈴木大介
¥820+税 新潮社(新潮選書) 2018/2/20発行
ISBN978-4-10-610754-2

『脳が壊れた』に続く、脳梗塞発症後の回復記。
つくづく思うけど、鈴木のような、自分に起きたことを客観視して言語化して発表できる人の存在は大変貴重だ。いままでにも脳梗塞を発症して同じように障害に苦しんだ人は星の数ほどいたはず。けれどその人たちの苦しみは医療関係者たちに共有されず、治療のハウツーが確立されてきていない。そして鈴木が指摘するように、脳梗塞後の高次脳機能障害は発達障害等を含む精神科医療対象者と共通する症状で、治療にも共通するメソッドが有効であるということが理解されていないということ。
万万が一、将来私が脳梗塞を発症して、後遺症に悩まされて、症状をうまく説明できないときにはこの本を周りの人に読ませたい。ていうか、今すぐにでも読ませたいんだけどね! でもたいていの人は必要でもないのにこういう本は読まないんだよね。役に立つと思うんだけどなー。役立たなくても単純に面白い。面白いというと語弊があるかもしれないけど、えーと、カッコいい言い方をするなら知的好奇心がくすぐられるというか。

 

私は昔から脳関係の本が好きで、好んで読んできてるのだけど、その理由はたぶんこれまた何度も言ってきてるように自分自身の脳の働きがあまりよろしくないからだと思う。

本書の中で、鈴木は脱抑制について書いている。感情をコントロールできないという症状で、涙もろいとかそういうレベルを超えて、とにかくフルパワーで感情が爆発する。

> 病後の僕は、本当にこれが僕なのかと思うほどに、不安や怒りや苛立ちといったマイナスの感情を自力で払拭することができなくなってしまった。(135頁)

あの人嫌いあの人嫌い嫌い嫌い嫌いとずっと思い続けてしまう。いやなことがあってもスパッと切り替えて引きずらない性格であったはずなのに。


脳梗塞を発症した人が、「人が変わったようだ」といわれることがあるのはたぶんこういう症状なのだと思う。これは病気なんだ、回復したら元に戻るんだと思って周囲が支えてやることができれば、本人はどれだけ助かるかしれない。それなのに現実は、「嫌な人になっちゃったなあ」と離れていったり、本人を責めたりして、追い込んでいく。それでは回復しない。負のスパイラル。

回復して、マイナスの感情に振り回されなくなった鈴木は、振り返って思う。

> 自らの不機嫌や不快な感情を自力で払拭できないことは、こんなにも「つらい」ことなのだ。[…]「不機嫌な人」と「つらい人」がイコールで繋がる存在だということを、僕は当事者となって初めて知った。(148頁)

私は昔からとにかく怒りっぽく、なにかっていうとすぐにイライライラーっとなって、その原因になった人に対して顔も見たくないというくらいにいつまでも怒り続けた。おこる理由は些細なことかもしれないけれど私にとっては怒って当然と思えるもので、周囲の誰もが怒って然るべきなのになぜか私一人しか怒っていないということも多く、そんなとき私は自分が怒りやすいのではなく、周囲の皆が結託して私をわざと怒らせ、孤立させようとしているのではないかと考えた。
………こんなのが二十代の後半くらいまで続いてましたね。多分に軽度の発達障害だったのかもしれませんね。年齢を重ねてなんとか感情のコントロールもできるようになりましたが、だからといってあの頃の自分に何を言ったところで、どうにもならなかっただろうな、とも思う。怒ろうと思って怒っていたわけじゃないんだもん、あのころだって。なんでみんな怒らないの!? おかしいでしょう!? 一緒に怒ってよ!! いつもそう思ってた。なんで? なんで? なんで? 一緒に怒ってくれる人がいないことでさらに怒りがヒートアップして、もういい! とコミュニケーションを自ら断ち切って、孤立する。
鈴木の言うとおり、不機嫌で苦しかった。
そりゃもう、誰だって機嫌よく過ごしたい。笑って一日過ごせるならそれに越したことはない。それができないのは本人のせいだと言われても、好きで不機嫌なんじゃない。

今でも改善されたといえるほどでもなくて、あのころと比べればマシだけどやはり周りの人たちと比べて怒りっぽい。
それでも脳は少しずつ変わってくらしい。私がほんの少しだけ怒りを抑制できるようになったように。願わくば、老境に入った時に再び怒り爆発になりませんように。 

 


『だから、居場所が欲しかった。』 水谷竹秀

2019年03月29日 | 読書日記

『だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人』 水谷竹秀
¥1,600+税 集英社 2017/9/30発行
ISBN978-4-08-781633-4

バンコクには複数の日本企業のコールセンターがある。働くのは日本人で、日本語で対応し、業務内容も日本と変わらない。日本で電話をかけるお客は、回線の向こうがバンコクだとは思わないだろう。

日本を飛び出し、あるいは逃げ出し、外国で低賃金で働く。
海外勤務といえば聞こえはいいけれど、日本語だけで完結する仕事なので、何年働いても言葉が上達することもない。賃金が上がることもほぼない。けれど、日本に比べて生活費が安く抑えられる分、生活は楽だ。

コールセンターで働く、訳ありの日本人たちを取材した、ルポルタージュ。

 

内容は興味深い。
個人的には、日本語だけで仕事ができるんだったら、私も行きたいかも。
というようなお気楽な人は少なくて、自虐的な人が多い。まあ、そういう人を選んで取材してるんだろうけど。

 


『恋歌』 朝井まかて

2019年03月27日 | 読書日記

『恋歌(れんか)』 朝井まかて
¥720+税 講談社(講談社文庫) 2015/10/15発行
ISBN978-4-06-293191-5

樋口一葉の師、中島歌子。
歌子の弟子、三宅花圃は入院中の師の家を片付けていて、手記を見つける。それは歌人としての姿しか知らぬ花圃には思いもよらぬ波乱の人生、恋に生きた女の一生。
政治的なイデオロギーなど持たず、ただ恋する相手と沿いたいと願った女は時代に翻弄されていく。

直木賞受賞作って、作品に対しての受賞であるはずだけれど実際には作家に対しての評価で、だからこの作家はこっちよりあの作品のほうがいいのになあ、というような非代表作が受賞したりする。とかねがね思っているのだけど、この作品は受賞作としての力があるなあと思いました。


『東海珍名所九十九ヶ所巡り』 大竹敏之

2019年03月25日 | 読書日記

『東海珍名所九十九ヶ所巡り』 大竹敏之
¥1,500+税 中部経済新聞社:発売(デイズ:発行) 2009/2/11発行
ISBN978-4-88520-128-8

図書館で、表紙のインパクトにやられて借りた本。
中身も面白かったー!

 

関ケ原ウォーランド、これは行かねばならんかも…………。
浅野祥雲が気になって仕方ない(笑)。

https://blog.goo.ne.jp/ksivasiva/e/328402ade87390c34d218dcf4001b5f5

遠い昔に行って、忘れられない兵馬俑のある知多半島の博物館。
これも載ってました。あー、これもまた行きたいなー。でも車がないと絶対行けないロケーションなんだよね。

庄内公園の像の謎も解けた! 楠公父子像、「桜井の別れ」のシーンだったらしい。当時庄内公園には明治天皇の御座所となった龍影閣というのがあったこともあり、皇紀2600年(昭和12年)にゆかりの場所に忠義の像を建てたものらしい。
まさかここであの像の由来を知ろうとは……。

三重県津市のルーブル彫刻美術館とか、名古屋市北区の久国寺の大梵鐘とか、侮っていた南極観測船ふじとか、三重県伊勢市のミニチュア姫路城・白鷺苑とか、その他どれもこれも面白そうで楽しそうで見てみたい!


『読むパンダ』 黒柳徹子・選 日本ペンクラブ・編

2019年03月24日 | 読書日記

『読むパンダ』 黒柳徹子・選 日本ペンクラブ・編
¥1,400+税 白水社 2018/1/30発行
ISBN978-4-560-09595-9

22篇ものエッセイ(?)が掲載されているのに、アドベンチャーワールドのパンダは一篇だけ。
大半というか、9割が上野動物園。
なんだろう、この偏りは……。いや、日本人のパンダ認識偏向度合いはわかってるけど、パンダ好きから見てもそうなのか? 

読みごたえがあったのは198頁、「四川大地震を乗り越えて」(中国パンダ保護研究センター党書記 張志忠)の文章。パンダ飼育研究員を「パンダ人」と呼んで、被災した赤ちゃんパンダを助ける姿に落涙です。
203頁のずらりと並んだ赤ちゃんパンダの写真には、不謹慎ながらかわいくて悶絶である。