『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』 デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス(橘明美・臼井美子:訳)
¥2,200+税 草思社 2014/10/15発行
ISBN978-4-7942-2086-8
2019.6.16の中日新聞書評欄で、栗原裕一郎氏が紹介していた本。
5年も前の本だったんだな。
だったらもうとうに世界中の経済学者と政治家が、緊縮政策が不況をさらに悪化させると理解していておかしくないのに、そうはならない。人は見たいもののみを見る。けれどそれで犠牲になるのは机上で方針を決める連中ではなく、庶民、特に弱い人たちだ。
政策の選択次第で、経済が復興するか、弱者が命を落とすかが変わる。そして命は決して帰ってこない。
書名の問い、経済政策で人は死ぬか? 答:死ぬ。弱者が。数千、場合によっては数万の単位で。
> 往々にしてイデオロギーに走りがちな経済政策論議にもっと事実を、確かな証拠を持ち込むべきだ(15頁:まえがき)
> 保険医療費関連予算を削減した国では栄養失調やHIV感染が急増したが、予算削減を拒否し、食糧費補助やワクチン接種などを続けたマレーシアではそうした事態は避けられた。(106頁)
> 欧米の大手銀行と同じように、アイスランドの主要銀行も「大きすぎて潰せない」と見なされていたが、アイスランド政府は潰れるに任せた。その決断が正しかったかどうかは、結果を見れば明らかである。多くのヨーロッパ諸国が苦しみ続けるなか、アイスランドは景気回復に成功したのだから。(138頁)
> ここで忘れてはならないのは、医療に市場原理を導入すれば効率的になるかというと、決してそうはならないということである。この点を誤解している人が多い。[…]
このように、アメリカでは驚くほど医療費が膨らんだが、それは高齢化が進んだからでも、病人が増えたからでもない。[…]
では何なのかというと、要するに出費に見合う効果が上がっていないだけのことである。アメリカは賢い予防医療などの「ヘルスケア」ではなく、ずっと高くつく「病気のケア」に金を注ぎ込んでいる。(180-181頁)
IMFは世界中で迷惑をまき散らしているだけとしか思えないな……。