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乳がんで私も考えた

2011年9月に乳がん告知。抗がん剤FEC→TC治療中。がんになって変わった世界観を語る。

落髪の日

2011-09-29 10:37:19 | 抗がん剤治療1回目~
首元に何かが絡まってる感じがして目が覚めた。

自分の抜けた髪の毛だった。

そっと髪を触ると髪の毛の固まりがついてくる。脱毛が始まってすでに一週間は過ぎている。随分抜けたような気がしたけど、いまだこんなに残っているのかと驚いた。

髪の毛はもう三日ぐらい洗ってない。洗うと恐ろしく抜けるのでいやになったのだ。

夕方、予約していた例のC美容室へ行った。
美容師に事情はあらかた話していたので、気を使って私のためにカーテンを引いてくれたり、涙が止まらない私のためにティッシュをくれた。

シャンプーの後、鏡の前の椅子に座ろうとして、自分の姿を見て息を呑んだ。

髪が半分抜けた今の自分の姿ほど恐ろしいものはない。地獄絵図に登場する施餓鬼みたいだ。思わず足がすくんでしまった。

やはり、他の一般的な美容室に行かなくてよかった。他人がいて、ジロジロ見られることを想像すると、苦痛は少ない方がいいに決まっている。

美容師は髪をある程度短くしてから、バリカンでゆっくり丁寧に剃っていく。均一に剃るには角度を変えてバリカンを走らせないといけないから、案外難しいらしい。

次第に自分のスキンヘッドが見えてきた。

一生見ることはないと思い、見るつもりもなかった自分のスキンヘッド。

新しい自分との出会いだ。

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髪とお別れ

2011-09-28 22:54:52 | 抗がん剤治療1回目~
明後日は抗がん剤治療の2回目の日だ。

そこで明日のうちに、美容室で中途半端に抜けている髪を剃ってもらうことにした。行きつけの美容室は安いけど、地元のいろんな人が来るので、髪をスキンヘッドにする私は異様な感じになるだろうし、説明するのもおっくうな上、気分的にも支障がある。

そこで自宅から90km離れた都会の美容室に行く。男性が一人でやっているというこじんまりとした美容室で予約制。

1000円の駅前美容室で済ませる人もいるのに、なぜ私はこんなにこだわってしまうのだろう?そもそも脱毛することはわかっていたのだから、脱毛が始まる前に剃り上げてもよかったはずだ。

「ベリーショートにしないの?脱毛が始まるとショックらしいよ。」とか
「もう、尼さんみたいに剃っちゃったら?」とか
「髪なんか、また生えてくるんだからいいじゃないか。」とか…。

私としては髪の毛がギリギリまで抗がん剤に耐えているところを、見届けられてよかったと思う。

頭から抜けていく髪の毛を取り除く作業は、まるで死んだ兵士相手のワルキューレみたいだと思いつつ、淡々とこなしていくのは、自分自身を納得させる作業でもあった。

私は、がんによって失われるものを、一つずつ確かめながら前に進みたい。

失う髪の毛もまた、私の生きてきた証だ。

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かつらは簡単じゃない

2011-09-26 13:43:15 | 抗がん剤治療1回目~
抗がん剤治療を受けている女性に、かつらを一年間無料で貸してくれるNPOウィッグリング・ジャパンに行ってきた。

スタッフは全員乳がん経験者で、進んで病気のことを話して、訪れる人間の気持ちをほぐしてくれた。

私は脱毛がどんどん進んでいて、少し髪に触るだけで、ぞくっとするほどの量の髪の毛が抜けており、かつらの試着をするたびに、髪の毛がたくさん床に落ちてしまったが、ほとんど気にしなくてよいように振る舞ってくれた。

かつらはいわゆる経験者の寄付によって賄われているので、全て中古だが、いくつかのモデルは揃っていた。

私は黒っぽい髪の無難なかつらを選んだ。

だが、かつらを実際に試着してみて気づいたのだが、かつらは帽子と同じだ。帽子は外出する時にはかぶるが、室内では大抵暑くて脱ぐだろう。だがかつらの場合は脱ぐわけにはいかない。

かつらがあれば万事OKとはとても言えないではないか。

外出する時に、数時間かぶるのが限界のような気がしてきた。帽子や綿のバンダナの方がよっぽど心地よいのである。

かつらを欲しがってきた私だが、実際に手に入ると、自分はかつらをかぶりたくないという気持ちになっていた。

よっぽどの時以外では、私はバンダナで過ごすだろう。

しかし日々少なくなっている髪は中途半端に地肌が見えてくるようになった。そろそろ気持ち悪いので剃り上げなくてはならない。

美容室が問題だ。

以前は髪を剃り上げるだけだから、どこでも同じだと考えていたが、他のお客さんがいる時に、病気の事情を話したりして髪を剃り上げるのは、これまた勇気のいることだ。

ちょうど、以前の職場の先輩だったMさんの自宅の近くに、一人で美容室をしている男性がいると聞いた。予約制で一人を相手にしているという。カットだけで5,000円近くするので、少々高いがそこに予約することにした。

「どうなさいますか?カットですか?」と聞かれたので、私は抗がん剤治療で脱毛しているので剃り上げて欲しいとストレートに言うと、ああ、と言って了解してくれた。

予約した後に、気が緩んだ私は泣いた。覚悟をしていたものの、実際に脱毛してみると、やはり深く心を切り裂いているのだ。

私は一人っきりで相手をしてくれる美容室があることと、教えてくれたMさんに感謝した。

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脱毛が始まった

2011-09-23 12:41:19 | 抗がん剤治療1回目~
22日の夜、風呂に入って、髪を洗うとやたらと髪が手にくっついてきた。

脱毛が始まったのだ。

来るべき物がついに来たという感じで、胸が詰まる思いがした。

大丈夫。数日前から帽子やバンダナキャップも揃えている。かつらはまだ確保してないけど、連絡しよう。

心が波立ってくるのはなかなか抑えられなかったが、私はできるだけ心を落ち着けて、受け入れようとしていた。

ところが、その時、たまたま友人の一人Aから電話が入った。
Aは三人の子持ちの専業主婦で私より年上。乳がんにかかった友人は何人でもいるが、本人自身はかかったことがない。先輩のような顔で(電話口だったが)、やたらとアドバイスする人で仕事上の事もあり、むげにはできない相手だった。

「調子どう?吐き気するの?」とA
「そうですね。二三日、吐き気はしましたね。」私。
「そうか。わかった。」
「?」

「あのね、つわりと一緒よ。」とA
私は一瞬何のことだかわからなかった。

「あなたはつわりを経験したことがないでしょう?つわりもそういうもんなのよ。つわりを経験できたと思えばいいじゃない。」

愕然となった。

つわりは病気じゃない。しかも旦那も子供もいない私が、つわりだけ経験した気分になってどこがいいのか、さっぱりわからない。

同じ言葉を、子供がどうしてもできない主婦に言ったら、おそらくAは後ろからナイフで刺されるんじゃなかろうか。それ程、無神経な言葉だと思った。

三人の子持ち主婦による、独身の40代女に対する侮蔑が垣間見えてくるようだ。

Aはその後も、「かつらは髪が抜ける前に買った方がいい。」とか「何個も買って気晴らしに付け替えたらいい。」とか言いたい放題。ただでさえ高い治療代の負担に頭を抱えている人間に、高いかつらを買えと平気で言う専業主婦の無神経ぶりを発揮してきた。

私には高くて良いかつらを買ってくれる旦那はいない。

吐き気は8回も続き、その後で子供が生まれることは、決してない。

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抗がん剤投与、一週間後

2011-09-17 11:56:40 | 抗がん剤治療1回目~
抗がん剤治療の後、一週間が過ぎた。

治療のすぐ後、二日間は喉もとに何かがいるような感じで、つまりこれが吐き気ってことなんだが、食べ物に苦労することになった。

治療以前は、食べ物に好き嫌いはなく、何でも食べられる私であったが、治療直後から一変した。

油っぽいものが全部だめになった。フライ系は全滅。ファーストフードなどもほとんどが食べられない。お味噌汁や鶏飯に入っている油揚げもアウトだ。

妙に化学添加物も気になってしまった。

私は全く食べ物に無頓着だったのに、自分が自分で信じられないほど食べ物を吟味するようになった。なんせ食べられるものが限られているんだから。

治療直後の二日間はそんなわけで食べ物もよく入らないし、身体もだるいので寝たり起きたりして過ごした。寝ると昼間でも数時間眠り、夜でも眠ったので、一日中寝ていたようなものだ。

三日目ぐらいから少しずつ起き出して戻ることができた。

その後、京料理や豆腐料理を外で食べると、以前より和食が好みになっている自分がいた。まるで年寄りになったみたいだ。

その後、油系も少しは入るようになって吐き気は収まり、気分的にも楽観さを取り戻してきた。

9月17日、白血球の数を調べると2430だった。標準は3500だから低下していたが、もっと低くなる可能性もあったから、割と持ちこたえている方だった。

白血球の低下によって、感染症にかかりやすくなるから気をつけろと言われた。

「T先生、食事で気をつけることはないですか?」
「別に。何でも食べられるものを食べたらいいですよ。」
「運動は?」
「したかったら、すればいい。」
「お酒は?」
「飲みたかったら飲めばいい。おれ、そのあたり割といいかげんなんだよね。あんまり気にすることないよ。」

ハンターは自分のテリトリー外には興味を示してないようだったが、うるさく言わない分、私も気が楽になった。

だが問題は残っている。

「でも髪は抜けるんですよね。」
「脱毛は免れない。抗がん剤は強いのを使ってるから。」

食べ物も酒も運動も何も言わないTハンターが断言しているのは説得力があった。

「抗がん剤治療をしている人間に、かつらを一年間無料で貸してくれるNPOがあるんです。ここに先生のサインと印鑑がいります。」

Tハンターはすぐにサインをして印鑑を手配してくれた。

脱毛の時期はすぐ目の前に迫ってきていた。

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PETと抗がん剤

2011-09-09 11:27:36 | 抗がん剤治療1回目~
9月9日、午前中にPET撮影を行った。
PETは最新鋭の医療機器だ。プロフィール写真にあるのがソレ。

簡単に説明すると、癌はブドウ糖を食べるので、蛍光色に光る放射性物質をブドウ糖に混ぜて点滴すると、撮影した時に、癌細胞に蛍光色に光る放射性物質が集まるから一目瞭然ってわけ。

PET機器を備えている病院はあまり数が多くはないから、家の近くにあるというのは幸運なことだろう。

午後からいよいよ抗がん剤治療。化学療法室へ行くと、女性医師や看護師から

「これから長い付き合いになると思いますが、よろしくお願いします。」と言われて当惑した。その言葉はこれからの未来を予見しているからだ。

化学療法室と長く付き合うなど、まっぴらごめんなのに。

「この部屋に来るだけで吐いてしまう人もいます。最初なので、できるだけ吐き気を少なくするために、少し強い吐き気止めを飲んで下さい。」

私はゼリー状の吐き気止めの薬と、錠剤の吐き気止めの薬を飲んだ。

それから三時間、赤い抗がん剤エピルビシン、エンドキサン、5-FUと立て続けに点滴を行った。

抗がん剤は第二次世界大戦中にマスタードガスという毒ガスの研究から始まったのは有名な話だが、特にエンドキサンはありがたくもその毒ガス由来の薬だ。

三時間も水分を入れたから、終わってトイレに立つと、赤いエピルビシンの影響で赤い色の尿が出た。もちろん看護師から何度も説明を受けていたので驚くことはなかったが、というよりむしろ言われた通りに赤い色の尿が出たことに驚いたぐらいで。

すぐに具合が悪くなったかどうかはよくわからない。家に帰りついてからごはんを食べようとしてものど元に何かが詰まっている感じがした。

身体に違和感はあったが、全体に血が回ってるんだから、当たり前だ。

私の身体を流れる血の中には、闘う戦士の細胞が入っているのだ。

もう、後戻りはできない。

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