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青山の昼と千駄木の夜

都内会社員の日記です

スペースシャトルの落日

2009-01-11 14:27:54 | 書評
最近あまり本を読んでないなー、と思ったら、「サカつくDS」のせいですね。
さすがにメッシとデルピエロとネドベドを獲得して、全タイトルを獲得した時点で止めることにしました。これ以上やると中毒になりそうなので。
余談ですが、これ以上に面白かったのが「プロ野球チームをつくろうDS」ですね。僕の楽天はキャッチャー野村、クリーンナップは長嶋・王、エースは岩隅と田中。過去現在の選手をドラフト等で獲得して強いチームを作っていくのですが、これは面白かった。中毒化してしまいました。贔屓のチームが弱い(楽天の)方はぜひどうぞ。


さて最近読んだ本で面白かったもの。
「スペースシャトルの落日」
「チャレンジャー」「コロンビア」という大事故を2度も起こしたスペースシャトルですが、本書ではスペースシャトルは設計構想から根本的な誤りを犯しており、事故は不可避であったこと。更にこの誤りのために宇宙開発は長い停滞期に入っていること、などを述べています。

確かに宇宙に行くロケットにスペースシャトルのような“翼”は必要ないですね。冷静に考えれば。

僕が生まれたのはアポロ計画で人類が月に行った後でしたが、大人になったら宇宙旅行くらい簡単に行ける、と思ってましたね。生きている間にそんな時代が来るといいな。
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広田弘毅 服部龍二著

2008-11-09 21:32:48 | 書評

戦前史の文官にあって極めて重要な位置にある広田弘毅の伝記。特に外相・首相時代の氏の行動については極めて批判的な本である。
文官でありながら唯一A級戦犯として死刑になった氏に対しては同情的な声が少なくない中、異例の内容であるともいえる。

氏の政策はは幣原外交に代表される親英米ではなく、全方位(友好)外交であった。特に対中政策において、公使館を大使館に昇格させたことに代表されるように親中政策を進める一方、対英米関係についても極めて慎重にバランスよく政策を進めている。

「自分は、何を意味するや漠然とする観念等に捉わるることなく、現実に即して処すること即ち外交なりと信ずるもの也」
という言葉がまさに氏の姿勢を示している。
つまりイデオロギー沸騰の時代にあって、氏は極めて冷静に“現実”を直視する人物であったと言うことだ。

にもかかわらず、現実認識が強すぎることが、結果的に批判の材料になるのは皮肉である。すなわち、政党政治が信を失い、軍部の力が巨大になる現実を直視するがゆえに、軍部の要求に対しては極めて消極的対応に終始してしまう。

同僚からも部下からも信を失った後の姿は、あきらめの気持ちが強かったのではないか。結果として招いた大戦終局、ソ連の仲裁を期待して動く氏の姿は滑稽ですらある。

現実認識が強いと絶望し、酔いやすい体質の者はイデオロギッシュになる。
困難な時代の中、もがきにもがいて挫折し、絶望している一人の男の伝記である。

ナイチンゲールの沈黙 海堂尊 著

2008-11-09 20:46:40 | 書評

「チーム・バチスタの栄光」の続編。
前作が傑作だっただけに、少々期待はずれ。犯人(犯行)に意外性はなく、何より謎解きに“オカルト”的要素が加わるのはいかがかと。
ミステリーというより、人間ドラマとして読めばまた違った読後感になるのかもしれないが。

自民党幹事長室の30年 奥島貞雄 著

2008-11-09 00:17:40 | 書評

僕は就職活動の時、政党に就職するなどということは全く思いもよらなかったが、しかし政党だって立派な組織なので、そこで働く事務方(社員)がいて初めて日常運営なされるのである。政治家だけで政党が成り立つわけではない。考えてみれば当たり前だ。

著者は、自民党に就職し25年間勤め上げ、その間22人の自民党幹事長に仕えた。本書は仕えた歴代幹事長の評伝である。
大幹事長から、あっという間にその座を去った幹事長まで、歴代幹事長を忌憚なく(中には恨みすら込めているかのように)評価している点が面白い。

派閥全盛時の幹事長交替時は、同じ自民党とはいえ、旧幹事長のスパイと思われて仕事を干されたりもするそうである。恐るべし。

ちなみに著者にとってのベスト幹事長は田中角栄、ワーストは小沢一郎である。特に小沢氏に対しては辛らつで、先輩議員には極めて礼儀正しい一面、部下(事務方)への姿勢は問題があったそうで、事務方が苦労して準備した全国幹事長会議を二日酔いで当日ドタキャンされたことは今でも根に持っているようである(笑)



ローマから日本が見える 塩野七生

2008-10-23 00:42:44 | 書評

大作「ローマ人の物語」を著作にもつ著者が建国から帝政移行(アウグストゥス帝)までの歴史をダイジェストで記した本。
ダイジェストとは言え、王政-共和制-帝政への流れが非常に分かりやすく記述されており、歴史書の入門編としても一級品。その中でも共和制を絶対なもとせず、帝政もまた歴史の中での必然とする点が、彼女の真骨頂である。
(願わくば、専門でないシナの歴史をローマ史とことさらに比較しない方が良いとは思うが・・・。例えば万里の長城とローマ街道を比較するのはあまりに乱暴である。)

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個人的に好きなのは次くだり。
この後ハンニバルを破ることになる若き30歳のスキピオ・アフリカヌスと、70歳になる元老院の第一人者ファビウスのやりとり。

スキピオは元老院に懇願する。
「今こそ積極戦法に出るときがきたこちらからカルタゴに攻め込めば、ハンニバルとて本国に戻らざるをえなくなる。その役割を自分に任せてほしい」

ファビウス
「お若いの、あなたはまだ生まれていなかったから知らないかもしれないが・・・・」
「我々が若さにもかかわらずスキピオを執政官にしたのは、ローマとイタリアのためである。彼個人の野心の充足に手を貸すためではない。ローマは英雄を必要としない国家である」

これに対し、反論するスキピオは、
「ファビウス・マクシムズ、そして元老院議員の方々。私は、ファビウスの私への反対が嫉妬によるなどとは全く信じていない。そして、彼の偉大さを凌ごうなどとも全く信じていない。しかし、年齢は若いが戦場経験は若くないと思う私の考えでは、これまでに成功してきたことも、必要となれば変えなければどうしようもないということである。私は、今がそのときであると考える。」

この言論は、まさにローマ史中の白眉ですね。

ジャーナリズム崩壊 上杉隆

2008-09-14 23:56:56 | 書評

日本にしかない「記者クラブ」制度がいかに日本のジャーナリズムを駄目にしているかを記述した本。
筆者はかつて「NYタイムズ」で働いた経験から、日本の「記者クラブ」制度の異様な慣習を繰り返し追求する。

確かに日本の新聞は同じ業界内の事件に甘いですね(毎日新聞のネット記事問題とか)。あとは“広告”の問題から、特定企業に甘いなぁ、といった疑問を持つことも多々あります。そういった疑問の原因が垣間見える本でした。

筆者にとっては大変な戦いになると思うのですが、これからもがんばってほしいと思います。
特に小泉退陣から現在の政局については、筆者の論調は興味深く読んでいますので。

陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人 藤井非三四

2008-09-14 23:48:14 | 書評

歴史を後から見つめて「あの時ああすれば良かった」というのは非常にたやすいので、こういう論調で書を記述するならば、「なぜそうしなかったのか(できなかったのか)」までを考察しないと、全く無意味な論になると思う。
「当時の日本人は無知だ」というだけでは、つまるところ、ただの“愚痴”だ。

そういった意味で本書はただの“愚痴本”に過ぎない。

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今の仕事に当てはめて、妙に感心してしまったのは以下のくだり。
昔も今も、人事屋が受ける非難は同じようで(笑)

~(旧日本軍にあって)ほとんどの場合、あの人をと望んでも、人事当局者に鼻先で笑われるのがおちだった。望んだ人がきてくれなかったで済まされれば、まだましで、往々にして「彼奴がきたら困る」と思っていると、その困った人がやってくる。その逆で、「あの人の下だけはごめんだ」と祈っていると、まさにその人の下に回される。
「人事屋とは、人を困惑させるのが仕事か」という恨み節もよく聞かれた~

檸檬  梶井基次郎

2008-09-14 23:30:24 | 書評

高校の教科書に載っていた短編だから読むのは約15年振りだろうか。
この人の文体はとても可憐だが、その文体で書かれる内容はあまりに人間の好ましからざる面、つまり“悪”が混在しているので、高校生には読むのもつらかった記憶だけが残っている。

今、30才を過ぎてから読むと、その文体がすらすらと自分の中に入ってくるから不思議だ。
自分の感受性が年輪で覆われるように、強固になったのだろう。
良くも悪くもないが、年をとるとはそういうことだと思う。

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ああ、桜の樹の下には屍体が埋まっている!
一体どこから浮んで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いまはまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。
今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする。
<桜の樹の下には 1927.10>

蟹工船 小林多喜二

2008-09-11 23:21:47 | 書評

久しぶりのブログですね。
最近読んだ「蟹工船」の感想を。


格差社会の拡大というものが存在するのかどうか疑問ですが、ともあれそういった風潮の中で最近よく読まれている小説です。

蟹工船という一つの空間の中で、搾取される労働者がやがて団結にいたる、という物語で、この“搾取”というくだりが現代に通じるということなのでしょう。


単純な労働がいかに人を疲弊させるのか、ということについては僕も(経験上)分かっているつもりです。
しかし、問題はこれが「労働者は団結するべきだ」「団結すれば良くなる」という程シンプル(それが幻想だとしても)に思えない時代に我々は生きているわけです。

“格差社会”というものは、昔から存在したと僕は思いますが、その中に生きる人は、この小説にあるような方法では希望が持てない。

そういう時代なんだなと再認識した小説でした。

容疑者Xの献身 東野圭吾

2008-08-20 23:51:12 | 書評
前二作の「探偵ガリレオ」「予知夢」に比べると、人物がはるかに人間味にあふれている。
形式は推理小説だが、トリックそのものよりも終幕にやや圧倒される小説だ。特に男はこういう結末はつらい。

映画化されるそうだが、なんとかこのラストを壊さないように、祈ります。
良い小説でした。