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青山の昼と千駄木の夜

都内会社員の日記です

野村再生工場

2008-08-18 23:33:13 | 書評
楽天再生の実績をかわれてか、最近野村監督の本を書店でよくみかける。
角川新書では「巨人軍論」「あぁ阪神タイガース」に次ぐ3冊目だが、「柳の下のどじょう」もなんとやら。前2冊に比べると目新しさはない。

ただ、この人が言うと納得させられる言葉が多々。
”「失敗」と書いて「せいちょう」と読む”と言われると、
「ふむふむ。そうですよね!監督」となる(笑)
親からこんなことを言われようものなら、多大な反発心を蓄えるだけである。


がんばれ!野村楽天!
応援してますよー。

「昭和」を点検する  半藤 一利 保阪 正康

2008-08-18 23:23:33 | 書評
昭和史研究の第一人者による座談。
あまり新味のある話ではないが、座談だけあって読みやすい。

個人的にはジャーナリズム(新聞)の罪については興味深い。
佐藤優も言っていたが、世の批判勢力の果たす役割は大きい。これが機能しない組織(世界)は必ず変調をきたす。

会社も同じだと思う。
株主にせよ労働組合にせよ(あるいはマスコミにせよ)、こういった組織の役割は再び重要度を増すのではないか。

誰が太平洋戦争を始めたのか 別宮暖朗

2008-08-18 22:49:47 | 書評
よく言われることだが、太平洋戦争の開戦決定過程ははっきりしない。ヒトラーやフセインがいるわけではない。
本書はその意思決定は「ハワイ作戦」そのものにあるとする。作戦計画が暴走したのだと。なぜならば、いったん発動された「戦争計画」による動員・集中には不加逆性があり途中で止められるものではない。動員を開始して開進が終了する途中で停止させることができた国は近代史上存在しない。
計画そのものの魔力がそうさせるのであろう。武器を持てばそれを使わずにはいられないように。事実海軍はこの計画が背景にあって米内内閣を倒閣している。

よって、計画発動後(9.6御前会議)の日米交渉やN工作はポイントではない。9.6御前会議が全てだと。


こういった政治決定の欠落による戦争開始は、他に例がないのか。
実は第一次大戦がそうである。
さしせまった国境紛争がないにもかかわらず、一つのテロからドイツのシュリーフェン計画が発動され、自動的にベルギーの国境を越えてしまった例がある。

あまり他で見かけない論調だが、非常に納得性が高い。

かように、一つの施策の不可逆性については、常に思いをはせる必要がある。

本能寺の変-光秀の野望と勝算 樋口晴彦

2008-08-10 12:03:59 | 書評
本能寺の変の背景は、怨恨でも謀略でもない。
・信長・信忠親子が無防備の状態でそろって京都に滞在していること。
・誰にも警戒されずに京都近郊に襲撃部隊を集結させられること
・柴田勝家などの重臣がいずれも遠方で活動中であること

という3条件が満たされた稀有な一日を光秀が偶然に手にしたこと。天満に魅入られたかのように千載一遇の機会(書簡では「不慮の儀」)を得た光秀がこれに賭けたのが真相だと。

「ときは今 あめが下たる 五月哉」という俳句は好きです。

総理の辞め方

2008-08-10 11:56:23 | 書評
戦後総理の退任風景をまとめた本。
吉田茂や佐藤栄作とくらべても、小泉純一郎の去り方が際立つ(というか賛美している)本。

あとは、村山富一の「総理を嫌がる心象」が面白い。
総理になりたくても果たせない人が数多い一方、こんな運命もあるのだと。

「ジェネラルパーパス・テクノロジー」 野口 悠紀雄 (著), 遠藤 諭 (著)

2008-08-10 11:51:34 | 書評
ITはジェネラルパーパス・テクノロジー(汎用技術)である。
蒸気機関、鉄道、自動車と同じ類のものだ。これらは経済活動に不連続な大変革をもたらす。
IT革命の本質はコストの劇的な低下。
インド、アイルランドの成功と日本の金融機関の失敗の対比。

日本はこのジェネラルパーパス・テクノロジーの利益を享受できていない。基本的な転換ができていない。

では、どうすべきか、という結論はない本。

20世紀型産業と(自動車産業)で働く一員として、何ができるか考えましょう。

ローマ人の物語

2007-06-04 00:52:24 | 書評
ようやくローマ人の物語を完読しました。
思えば第1巻が出版されたのは、1992年。読み始めたのは計算すると、、、高校生の時!
第6巻の「パクスロマーナ」(アウグストゥス帝まで)が終わって、間に就職やらなにやら色々あって中座していたのですが、物語が完結したと聞いて今年一気に15巻まで読み通しました。

「盛者必衰の理」を平家物語では「奢れるもの」としましたが、ローマはなぜ滅びたのだろう?
ローマの精神が「寛容」だとすると、「寛容」を許容しない「キリスト教」を国教とした時点で、アイデンティティを失いつつあったのでしょうか?そうするとローマはまさにローマそのものの「寛容」で滅びたのだろうか?

しかし最後の最後まで「寛容」を含めたローマンスピリットを持った男たちは常に登場するのです。ある巻ではそれが帝国の勃興につながり、ある巻では拡大につながるが、どこかを境に滅亡を止める力にはなり得なくなる。

人間の営みとは不思議ですね。答えは分かりませんが。


悠久のローマ史を15年かかって読むのは本当に幸せなことですが(しかも日本語で!)、なによりこれだけの歴史絵巻を完結させた塩野七生さんに感服。

迷いと決断

2007-01-28 16:43:29 | 書評
ソニー前CEO出井伸之氏の回顧録。前半と後半で彼の人ほどその評価が二分した人も珍しいけれど、その内幕の苦悩が語られている点は興味深い。孤独なCEOという仕事の側面が語られる。

今日ほど企業ガバナンス体制が騒がれていなかった時代、いち早くその重要性に気づき組織体系として取り入れ、結果それが他の日本企業のモデルとなっている点は間違えなく出井さんの成果だろう。

しかし、結局出井さんはソニーから何を産み出したかったのか。僕にはよく分からなかった。綺麗な題目はたくさんあるが、商品(あるいはサービス)のイメージがわかない。これは当時の社員さんも同じだったのではないか。

出井さんの右にそれを語る参謀役員がいたら状況は変わっていたのかも。

パッチワーク・プラネット

2006-11-06 23:36:25 | 書評
30歳、バツいち、職業・便利屋のようなもの。何をやっても誤解されやすい、さえないバーナビーの人生が、ひょんな出会いをきっかけにキラキラと変りはじめる。

こう聞くと素敵な小説に思えませんか?

実際素敵な小説なのですが、この小説は“キラキラ”だけではなくて、もう少し皮肉をこめたユーモアのある小説です。

(見方によっては)年上の交際女性との崩壊の過程と、その間に起こった“偶有的”出来事から主人公が変わりゆく様を淡々と描いているのですが、天使だったはずの彼女との崩壊について、主人公は「してやったり」なのです。その最後のフレーズの残酷さがこの小説の「皮肉」を感じる所以なのですが、人生とはそういうものだ、という作者の笑みも聞こえてきそうな点がユーモアにも思えてくる、不思議な小説でした。
僕も知人の紹介でこの作家を知ったのだけど、30代以上にはお勧めの小説です。

著者/訳者名 アン・タイラー/著 中野恵津子/訳
出版社名 文芸春秋 (ISBN:4-16-725441-7)
発行年月 1999年03月
サイズ 410P 16cm

リンドバーグの世紀の犯罪

2006-10-27 02:02:43 | 書評
史上最も有名なリンドバーグ二世誘拐事件。
しかし「最も無理のない推論は、長男の死にはリンドバーグ自身がかわり、誘拐事件はそもそも存在しなかった」ことであると本書は述べる。

あまりに長い歳月がたっていることもあるが、極めて一方の見方から、結論ありきで論証していく記述が続くため、かえって信頼性を損ねている。
最後はリンドバーグの人格への非難に終始する点も残念。

TVでも放映されていたせいか目新しさもない。

何も知らずに読んだ場合はもう少し面白かったのかもしれないが、今回は30点。