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いとをかし古典講座

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徒然草・相模守時頼の母は

2011-07-17 14:57:31 | 徒然草



 相模の守時頼の母は、松下の禅尼とぞ申しける。守を入れ申さるることありけるに、煤けたる明かり障子の破ればかりを、禅尼、手づから、小刀して切りまはしつつ張られければ、兄人の城の介義景、その日の経営して候ひけるが、「賜はりて、何がし男に張らせ候はん。さやうのことに心得たる者に候ふ。」と申されければ、「その男、尼が細工に、よもまさり侍らじ。」とて、なほ、一間づつ張られけるを、義景、「皆を張り替へ候はんは、はるかにたやすく候ふべし。斑に候ふも見苦しくや。」と、重ねて申されければ、「尼も、後はさはさはと張り替へんと思へども、今日ばかりは、わざとかくてあるべきなり。物は破れたる所ばかりを修理して用ゐることぞと、若き人に見習はせて、心づけんためなり。」と申されける、いとありがたかりけり。
 世を治むる道、倹約を本とす。女性なれども、聖人の心に通へり。天下を保つほどの人を子にて持たれける、まことに、ただ人にはあらざりけるとぞ。

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