Lauterburの論文(プロジェクション法) → Ernstの論文(フーリエ法)
と解説してきましたが,これらの論文は,原理的なことを提案したという意味で,歴史的な論文でしたが,残念ながら,このままで実際に使うのは非常に問題のある方法でした.
その一つの問題点が,スライス法です.
Lauterburの論文には,スライスの方法に関しては,どこにも書いてありませんでした.Ernstの論文には,前日書きましたように,さまざまな方法が書いてありましたが,実際に使える方法は書いてありませんでした.
もう一つは,フーリエ法における位相歪みです(少し難しい話ですが).
すなわち,フーリエ法では,信号サンプリングのスタート時刻が一定しないため,異なるkライン毎に,静磁場の不均一性などによる異なる位相歪みが重畳されていました.これが,極端に,画像劣化を引き起こしていました.ただし,画像マトリクスが小さかったことと,ハードウェアの性能が低かったことなどもあり,特に問題とはなりませんでした.
以上の問題を解決したのが,Edelsteinらによって提案された,スピンワープ(Spin warp)法(スピンウォープ法の法が正確な発音かも知れない)です(上図).論文は,
Spin warp NMR imaging and applications to human whole-body imaging
Edelstein WA, Hutchison JMS, Johnson G, Redpath T
Phys Med Biol 1980;25:751-756.
スライス法は選択励起法で解決し,位相歪みの問題は,勾配エコーと,時間幅を一定とし振幅を変化させる位相エンコード法を用いて,サンプリング時刻を一定にすることにより解決しました.
このパルスシーケンスは,現在でもあらゆる撮像法の基本となっています.
①選択励起,②勾配エコー,③振幅変化による位相エンコード
という3つの技術を巧みに取り入れて,後で示す,当時としては驚異的な画像を撮像するのに成功しました.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます