見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

ガウディが表現しようとした自然界の線

2007-10-11 01:50:04 | スペイン
世界各地で、荘厳・壮大な感動的宗教施設をいくつも見てきた。いずれも、想像を絶する資金と時間と労力を投入した偉大な建造物ばかり。その壮大さに息をのみ、ため息をつき、建設当時の社会に思いを馳せては、自分の想像力の乏しさに落胆してきた。日本にも巨大な宗教施設は少なくない。そして、それらは全て人間が信仰のために造ってきたものだ。

このところ、そうした宗教施設にやや食傷気味になっていたのだが、街を歩いていて偶然「サグラダ・ファミリア」に突き当たった時、これまで見てきた教会とは全く異なる不思議な装飾を目にし、建築家ガウディという人物が急に気になる存在になった。
<塔の先に何種類ものフルーツ...>

アントニ・ガウディ(1852-1926)。自然にモチーフを求める独特のデザイン手法で、バルセロナ市内各地の住宅や公園などを数多く手がけた。31歳で建築途中の聖家族教会(サグラダ・ファミリア)の第2代主任建築家となっって以後は、路面電車にはねられてこの世を去るまで40年以上、教会内の狭い部屋に寝泊りし、この建築に生涯の時間をかけたという。

サグラダ・ファミリアは、寄付資金のみで建築するという理念のために、完成まで数百年以上かかると言われていたが、有名になるにつれて資金が集まり、建築技術の向上も手伝って、完成まで残り2、30年と聞いた。完成予想図やモデルを見ると、中心部の最大の塔がまだ形を見せていない。
が、もしかすると、自分の存命中に完成するかもしれない。そう思うと、クレーンが立ち建設作業の続く今の建設途上の現場各所を写真に残したいという気持ちが逸った。完成した姿をいつか見れるかもしれない。

8ユーロの入場料を払って内部に入ると、建築現場そのもの様相だった。吊り上げようとする様々な部品が、どの部分にはまるのかを想像しているだけで楽しい。そう、サグラダ・ファミリアは訪れる人を心地よくする装飾やデザインに満ちている。
「自然界に直線はない」と言ったガウディが、「世界一、居心地の良い教会になる」と言った建物は、彼の言葉の通り、自然界の曲線や木々そのものの形をデフォルメしている。独特な建築表現への批判者も少なくなかったという奇才ガウディの特異な建築は、これまでのどの教会にも見ることはなかった。
エレベーターで塔の上部まで上ると、眼下に塔の建築作業現場がそのまま見え、建築を指示していたガウディの空間を共有しているような不思議な気持ちになる。

アントニ・ガウディ。彼の他の作品、世界遺産になっている公園や邸宅に行ってみたいと思った。

↑計画では12本の塔(12使徒を表現)と4本の鐘塔の合計18本の塔が立つという。


↑完成予想モデル


↑西側「受難のファサード」にはキリストの受難の場面が時系列に展開する


↑塔から眼下に見る作業現場。茸のような穴は18本の塔の土台だろうか


↑バナナ、メロン、いちご等のフルーツが塔の先に


↑教会の大ホールを支えるのは、枝を伸ばした木々のデザイン


↑大ホールの支柱と、市内の街路樹を並べた説明写真




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