Ali'i Drive Breeze

The Big Island
ハワイ島で体験した思い出を写真とともに綴る旅日記

ハワイ島半周ドライブ #7 <テックス・ドライブ・イン&ワイピオ渓谷>

2012年01月20日 | ハマクア地区

ハワイ島半周ドライブ#6から


2010年1月6日:午後2時43分
テックス・ドライブ・インに到着。

ポルトガル移民によってハワイに持ち込まれた楽器ブラギーニャは、
ウクレレとしてハワイに根付き、
同じくポルトガル移民によってハワイに伝わったマラサダは、
いつしか人気のスイーツとなった。

そのマラサダをハワイ島で食べるなら、
「やはり、このお店でしょう。」ということで、立ち寄ってみた。

 

  Tex Drive In 

シンプルなプレーンを買った妻は、早速パクリ。
「う~ん、揚げたては美味しいね。」
と、満足そうだ。

        

「あれ?食べないの?」
妻からマラサダの入った袋を受け取ったぼくは、
食べずにクルマに乗り込んだ。
「後で、食べるよ。」
「どうして?揚げたてが美味しいのに。」
と訝る妻。
「それは、そうなんだけどね。」
妻には言わなかったが、ぼくにはあの絶景を望みながら、
マラサダを食べてみたいという願望があったのだ。

そこで、
マラサダを頬張っている妻を助手席に乗せ、
Plumeria Rd.を下り、ホノカア・タウンへ。
さらに240号線を走って向かったのは、もちろんワイピオ渓谷だ。


午後3時10分
ワイピオ渓谷に到着。
(Waipi'oとは、"曲がりくねる水"という意味だそうだ。)



唐突に終わる240号線の端でクルマを停めると、
展望台まで歩いて降りた。

 


 

「うわ~!

渓谷を見るなり妻は歓声をあげた。
前回訪れた時は、
残念なことに崖の上を覆うように雨雲がかかっていたが、
今回は雲ひとつない青空の下で、この絶景を望むことが出来た。
垂直な崖の一部は、高さが600メートル近くあるらしい。
よくよく見れば、沖合にマウイ島の島影も望めた。

ぼくは早速、持ってきたマラサダを取り出し、
この景色の前でパクリ。
「うん。美味しい。」
特に理由はないが、なんだか一味違う美味しさに感じられた。
雄大な景色の前で、
ひとり満足気にマラサダを食べているぼくに妻の冷たい視線が突き刺さったが、
気にしないことにした。

 

王たちの谷として知られるこの渓谷には、
マナが宿る神聖な土地として様々な神話や伝説が残されているが、
現実に起こったこととしては、
1946年のアリューシャン津波の逸話が有名だ。
ハワイ島に最大の被害を及ぼした津波は、谷の奥にまで押し寄せたが、
誰一人命を落とすことは無かったそうだ。
(ホノカアとヒロの間にあるラウパホエホエでは、子供20人と大人4人の命が奪われた。)
さらに79年に起きた洪水の際にも、住民全員が助かったのだそうだ。
やはり、この渓谷がマナに守られているということの証だろうか?
とはいえ、洪水の後は、さすがにほとんどの住人が高い所へ引っ越したそうだ。


この谷を降るツアーもあるが、ぼくたちはまだ参加したことがない。
いつか、機会があればと思ってはいるが、
果たして、渓谷に降り立ったとき、マナを感じることができるだろうか?


    
二人で記念写真を撮り、ワイピオを後にした。

  
(クルマを停めたそばで、何故かずっと喧嘩していた2匹の山羊。)


240号線を引き返し、
ホノカアの町をちょっとだけ散策。

以前訪れた時より、町に活気があるように感じられた。





    
ピープルズ・シアターの写真も撮ったところで、
ハワイ島の西側へ戻ることに。

あとは安全運転でカイルア・コナの町まで戻るだけ・・・のはずだったが、
遂に、ぼくはロングドライブに潜む魔物に捕らわれることとなった。


ホノカアから19号線に戻ると、ワイメア方面へ。
一気に西海岸まで出たいぼくたちは、
大抵トイレ休憩に寄るパーカー・ランチ・センターに立ち寄ることもなく
ワイメアの町をノンストップで通り過ぎると、
同じく西へ向かう他のクルマに連なって、
長い長い下り坂を、カワイハエ方面へ向かった。

朝7時前に起き、コナを出発してから約9時間が経過。
時刻は、間もなく午後4時になろうとしていた。
ひたすら前方のクルマとの車間距離に気を付けながらも、
同じスピードで走り続ける単調なドライブに、
ぼくの脳は、徐々にお休みモードへと。

そう、睡魔という魔物が静かに忍び寄って来ていたのだ。

午後の陽射しを受け、助手席の妻もいつしか無口になり、
カー・ラジオからは、緩やかなメロディーのカントリー・ソングが静かに流れ、
エアコンが程よく効いた穏やかな雰囲気の車内で、
ぼくはハンドルを握っている感覚が薄れていくのを感じていた。

(いかん、いかん。しっかり目を開けていなくては。
 睡ったら大変なことになる。)

分かっていた。
自覚もしていた。
今、自分は睡魔に襲われているのだと。
こういう時は、一旦路側にでも停車し、眠気を払ったほうがいいとも思っていた。

だが、ガードレールの続く路側は狭く、
バスやトレーラーやクルマが前にも後ろにも長々と連なっている状況では、
停車するのも難しい。

「仕方がない。坂を下り切るまでは、このまま運転し続けるしかない。」と、
ひとり覚悟を決め、
何度も閉じかかる目蓋を懸命に見開き、
片手で頬や腿をこっそり抓ってみたりしながら、睡魔に抵抗する。

しかし、睡魔はぼくを捕えて離さず、心地好い夢の世界へと誘う。

ハンドルを握り、アクセル・ペダルに足を載せ、前方のクルマを見つめているはずなのに、
いつしかぼくは、コナの町のレストランでワインを飲んでいた。
白いクロスのかかったテーブルを挟み、妻と向き合って談笑していた。
テーブルの上では、キャンドルの炎がユラユラと揺れている。
そこへ、ロブスターの載った皿を持って給仕が近づいてくる。

・・・その瞬間、ぼくは完璧に睡りに“落ちて”いた。

「ねぇ、センターラインに寄ってない?」
確かめるような妻の声が聞こえたと同時に
、足元から振動が伝わってきた。
左のタイヤがセンターライン上のリフレクターを踏んだのだ。

その刹那、
ぼくの意識は、レストランの座席から19号線を走るクルマの運転席へと、
一気に引き戻された。
それは、まさに、クルマが反対車線側にハミ出ようとしている瞬間だった。
「やばい!!!」ぼくは心の中で絶叫していた。
心臓がきゅっと縮まり、おそらく顔面は一瞬にして蒼白に。

だが、幸いなことに対向車は遥か遠くだ。
前を行くクルマとは距離が開いている。
瞬時に状況を把握したぼくは、
慌てず、わずかにハンドルを右に切り直し、アクセルを踏み込みながら、
何事もなかったように、元のレーンに戻った。

まさか、自分が睡ってしまっていたなんて、とても妻には言えない。
なるべく平静を装い「ごめん、ごめん。ちょっと左に寄りすぎちゃった。」と、嘘をついた。
本当のことを言えば、おそらく大騒ぎになるだろう。
それでなくても、ぼく自身がすでに大パニック。
気取られないようにしてはいるが、
バクバクと心臓は脈打ち、冷や汗が首筋を伝う。
たとえ一瞬であっても、まさか居眠り運転をしていたなんて・・・。
自分で自分が信じられず、
大波に翻弄されているような恐怖を感じていた。

「気を付けてよ。」と、ごく当たり前の口調で妻が言う。
車内は、何事も無かったように穏やかな空気のままだ。

だが、ぼくにしてみれば、
どういう時に事故が起きるのか、身を持って実感した瞬間だった。
もし、対向車が間近に迫っていたら・・・、
あと数秒気づくのが遅かったら・・・、
そう思うと、本当に肝が冷えた。

動悸はちっとも収まらず、本音は誰かに運転を代わって欲しいくらいだったのだが、
もちろん、代わりはいない。
妻も運転免許証を持ってはいるが身分証代わりでしかなく、
教習所を卒業して以来、一度も運転したことがない。

ドライバーは自分しかいないのだからと覚悟をし、
その後もハンドルを握り続け、
なんとか無事にワイコロアのクイーンズ・マーケットまでたどり着いた。
パーキングにクルマを停め、エンジンを切った瞬間、
これまで経験したことのない安堵感に包まれた!
ぼくは、大きく息を吐き出した。
何も知らない妻は、「お土産と、夕食を買わなくちゃ。」と、いそいそとクルマを降りて行く。

その背中を見ながら、事故を起こさなくて本当に良かったと、
ぼくは胸をなでおろした。



みなさん、ロングドライブの際は、ご注意を。   
Me ka mahalo!
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*もちろん、このブログを読んで、妻は初めて真相を知った。
 その後、ぼくがどんな目にあったかは・・・言うまでもない。
                   
                       

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