Ali'i Drive Breeze

The Big Island
ハワイ島で体験した思い出を写真とともに綴る旅日記

ハワイ島・半周ドライブ #1 <出発>

2011年06月21日 | カイルア・コナ地区

2010年1月6日:午前6時45分




「ねぇ、いつ連れていってくれるの?」
ラナイ(ベランダ)でコナの海を眺めながらモーニング・コーヒーを飲んでいたぼくの背中に、
部屋の中から妻が声をかけてきた。
(あっ!)
コナに移動してからというもの、何度か耳にした同じ問いだ。
これまでは、なんとなくお茶を濁すようにして躱してきたのだが、
まさか早朝から持ち出してくるとは・・・。
さすがに痺れを切らして来ているということだろうか。
「うん?・・・何?」
それでもぼくは、聞き逃したかのように、笑顔で振り向き問い返してみた。
すると、両手を腰に当てて仁王立ちしている妻が、ひたとぼくを見すえていた。
(まずい!)
その目には、明らかに非難する色が。
「だ・か・ら、ビッグ・アイランド・キャンディー!!
 
連れてってくれるって、ちゃんと約束したよね?
 いつ行ってくれるの?」


ドルフィン・ベイ・ホテルをチェックアウトした日、
「ビッグ・アイランド・キャンディで、お土産が買いたい。」という妻のリクエストを、
「日にちもあるし、またドライブして来ればいいんだから。」と軽く受け流し、
さっさとボルケーノへとハンドルを切ったぼく。
あれから4日。
妻の問いかけが何度か繰り返されるようになり、
「~くれるの?」の言い方が次第にキツくなって来ていた。
「行くよ。行きます、行きます。」と答えながらも、
そのうち諦めるだろうと高を括っていたのだが、
まさか、
そこまで<ビッグ・アイランド・キャンディー>に執心しているとは思いもよらなかった。


「あ~、そっかぁ。でも、今日はシュノーケリングの予定じゃなかったっけ?」
午前中は、カハルウ・ビーチの熱帯魚たちと戯れることを予定していたぼくに、
妻は冷たく一言。
「だって、波高いじゃん。」
たしかに、3階のラナイから海を見下ろすと、
岩場では波しぶきが高々と上がっている。



昨日辺りから、コナに打ち寄せる波が強くなってきているとは感じていたが、
今朝はさらに荒れているようだ。
「どう見たって、海に入るのは無理でしょ?」と、妻。
     *この日以降は、さらに波が荒れ、
    カハルウやマジックサンド・ビーチなど、コナ沿いのビーチがCLOSEした程。

言われてみれば、
確かにのんびりとシュノーケリングを楽しむというわけにはいかないかもしれない。
かといって、妻のリクエストに応えるということは、
詰まるところ、ハワイ島を半周する往復のドライブ
関東の地図で例えるなら、
東京都八王子から、
埼玉県鴻巣~千葉県野田~茨城県つくばを経由して千葉県成田空港まで、
半円を描いて行って帰るようなもの。
それだけの距離と時間をかけて、お土産を買うだけというのも、
(なんだかなぁ~。)と、ついつい渋りたくなる。
なにせ、運転するのはぼくだけなのだから。
「それよりも、今日の朝食は?お腹空いちゃったよ。」と、
まだコーヒー以外なにも口に入れていないぼくは、話をそらすように尋ねてみた。

すると、妻はキッチン・カウンターへと取って返し、
カットしたパパイヤを盛った皿を、無言で差し出した。
「えっ?これが、朝食?」
皿を受け取り、ほどよく熟れたパパイヤの果肉を一口食べ、半信半疑のまま顔色を伺うと、
妻はニッコリ。
「まさか、そんなわけないでしょ。」
こころなしかトーンが上がった声で、
「じつは、いいお店があるのよ!」と、
まるで、あらかじめ用意してあったかのようにそつなく地図を持ち出し、
「ここ。」と、人差し指でトントンと指し示す。
そこには、<マツヤマ・マーケット>の文字が。

「パイン・ツリー・カフェっていうお店がここにあって、
 
美味しくて、スタッフの対応も気持ち良くて、おすすめなんだって。
 行ってみたいって、前々から思ってたの。
 北回りでヒロに向かうんだったら、19号線の途中だし、ここからも近いし、
 今から支度して出れば、ちょうどいいじゃない?
 ねぇ、パイン・ツリー・カフェで朝食にしようヨ!! どう?」
どう?と問いかけながらも、その口ぶりから、NOの答えは許されなさそうだ。
「う~ん・・・。」
それでも、なお渋ろうとしたその時、
妻の眉間に深々とシワが刻まれるのを、ぼくは見逃さなかった。
(ヤバイ!!!)
頭の中で警報が鳴り響く。
(これ以上渋ると、まる一日険悪なことになってしまう。
 そればかりか、2、3日は、ろくに口もきいてもらえない上に、
 一生涯「あの時、あなたが行かないって言ったから買えなかった。」と、
 ことあるごとに責められることになる。)
長年の結婚生活で、妻の眉間に刻まれるシワの意味を悟ったぼくは、
「よし、行こう!!
 そのカフェで朝食を食べて、
 ビッグ・アイランド・キャンディーまで、お土産を買いに行こう!
 
さぁ、支度、支度。」
わざとらしいまでにテンションを上げ、明るく返答。
「せっかくだから、シグゼーンで買ってもらったアロハでも着て行こうかな~♪」と、
妻の機嫌を取るように言えば、刻まれていた眉間のシワも雲散霧消。
「そう?ちょっと待って。私もすぐに支度するから。」と、
よくよく見れば、まだパジャマ姿だった妻が飛ぶようにして寝室へと消えた。

「ええ~い、儘よ。」
かくして、ハワイ島を半周する往復ドライブを決断。
目的は、ただひとつ。
<ビッグ・イランド・キャンディ>で、お土産を買うこと。
いったい何時間かかるのか?
途中でどこかに立ち寄るのかどうか、<パイン・ツリー・カフェ>以外は未定。


だが、この行き当たりばったりの半周ドライブは、
思いのほか充実し、ぼくたち夫婦にとって思い出深い1日に!
ただし、
あの“魔物”もまた、このドライブに潜んでいることを、ぼくはまだ気づかずにいた。

                         つづく。


Aloha!       ハワイ島半周ドライブ#2へ         


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