コージはあずさを愛している/Koji Loves Azusa

小説「On The Road Part2 & 3」とリック連作
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翌日-45 コージ

2010年09月21日 07時00分00秒 | 翌日/TheDayAfterWeLoved
 「オレは腹が減ってるんだ。メシにしながらでいいか?」と言って、お父さんはテーブルについた。仕事から帰って空腹なのはわかる。「聞いてくれるならこっちでいいよ」と、僕もイスに座った。お母さんがご飯を僕たちのまえに置いた。「コージはね」とお母さんが言いかけて、「家を出ようと思ってるんだ」と僕が続けた。

 「そうか」と言って、お父さんは「豪華だな」とウニをつまんだ。ウチは職場に近いのにとか部屋はあまってるぞとか言われると思ったけど、お父さんはそんなことは言わずに刺身とご飯と煮物にハシを運びつづける。

 「僕は恵まれすぎてるから、一度不自由な思いをしたいんだ」と言って、僕もハマチの刺身を食べた。「東京の大学に行ってたら、通えないだろうと思っていたんだ。会社もずっと東京だったら、もうとっくに家を出ていただろうな」と、お父さんは豚汁をかき回してコンニャクをつまんで食べた。「一人暮らしをすると、食事を作ってもらうだけで感激するぞ。遅いくらいだ。いい部屋を探せよ」

 「スズキさんの実家の近くに住むよ。家族が増えるまえに二人で帰ってくる」僕はお父さんのジョッキにビールをついだ。お父さんはジョッキを持った。僕は湯飲みを持ってジョッキと同じ高さにあげた。「ありがとう」

 ジョッキと湯飲みがカツンと当たった。「コージ、大人になったな」



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