コージはあずさを愛している/Koji Loves Azusa

小説「On The Road Part2 & 3」とリック連作
初めての方は「小説の目次」からどうぞ。

お願いするのを忘れてました

2011年07月11日 21時39分41秒 | あずさの日記帳
読んでいただいた皆さんに、感想とか聞かせてもらえたらうれしいです。
毎日熱くて大変だと思いますが、ぜひコメントくださいね。
実は今考え中のお話とかもあるので、よろしくお願いします。

ご愛読ありがとうございました

2011年07月07日 23時45分38秒 | あずさの日記帳
生まれて初めて書いた童話を読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
Sさんのコメント、読ませていただきました。私よりずっと深く考えていただいたみたいで、なんだか恥ずかしい気持ちです。
連載中、いつもより来訪者の方の数が増えていたみたいでした。読んでくれた方がけっこういたんだと思うと、うれしいです。
また、お話が浮かんだら連載します。よろしくお願いします。

あとがき

2011年07月07日 07時02分00秒 | 希望の王子
王子様はたぶん10歳ぐらいの普通の少年です。友達と遊ぶのが大好きで、いたずらもします。誰より力持ちでも、物知りでも、魔法が使えるわけでもありません。
ただ、彼が卓越しているのは希望を捨てない強さ。もっと言ってしまえば、パン屋さんの子どもだって、船で眠ってしまった子どもだって、お姫様だって、「希望の」という名を名乗ることができるのです。

どこにでもいる「希望の」子どもたちに、このお話をささげます。
大人だって希望を捨てなければ、王子様になれるかもしれませんよ。

PH-20

2011年07月07日 07時01分00秒 | 希望の王子
王子様らしい服に着替えた王子様は
町のみんなの前に立って言いました

「どこのだれか知らない勇者と
すてきな歌で励ましてくれた2人の歌手に、
心からお礼を言います
ありがとう」

子どもたちが、バリトン歌手とソプラノ歌手を舞台に押し出ししました

「離れていればいるほど
君への思いは強くなった」
「あなたの声が聞こえるたびに
1人じゃないと信じられたわ」
「お城に着いて、汚れた服も気にせずに働いている君を見た」
「あなたのかっこうだって、それはひどかったわ」
「ちゃんと聞いてくれ
僕はそんな君を心から美しいと思ったんだよ」

ソプラノ歌手は思わず顔を伏せました
それからバリトン歌手の顔をまっすぐ見て、歌い上げました
「私もあなたにほれなおしたのよ」

子どもたちが眠りについても
お祝いは続きました

「みんな疲れているから
はしゃぐのはほどほどにして寝たほうがいいよ」
王子様は眠い目をこすって言うと、安らかに眠りにつきました。

どうしようもなく暗い夜もあります
でも、希望を持って眠って起きたら、
きっと明るい朝が来るはずです


小説の目次

2011年07月06日 22時00分00秒 | はじめに
小説の各章に飛びます。

コージとあずさの回でそれぞれ色分けしていますが、その但し書きは、こちらです。

第2作 コージはあずさを愛している/Koji Loves Azusa
序 章 ランニングウェア/前日
第1章 お守り/5月1日朝
第2章 から揚げ弁当/5月1日午前
第3章 ハンガー/5月1日午後
第4章 アロマの香水/5月1日夜
第5章 写メール/5月2日朝
第6章 包み焼きハンバーグ/5月2日午後
第7章 指輪/5月2日夕方
途中のあとがき

第3作 翌日/The Day After We Loved
ホントのあとがき

連 作 リック/Azusa met Rick 愛犬リックとあずさの物語その1

童 話 希望の王子 東北の被災地であずさが語った希望の物語
前書きあとがき読者へのお礼。

その他のコンテンツへ


PH-19

2011年07月06日 07時01分00秒 | 希望の王子
とちゅうで友達を助けながら、
魚は必死に泳ぎました
もう少しがんばれば、
兄弟やお母さんが待っている湖に着きます

さかのぼって泳ぐこの雨でできた川は、もうすぐ後ろまで水が引いてしまっています
誰がいちばん早く泳げるか競争する時より、魚は早く泳ぎました
文字どおり命がけなのです

自分がせんを抜いてしまったために、
大切な仲間が危機にひんしているのです
世界が終わってしまったら、ふざけすぎたなんて言い訳はできません。

「逃げて、逃げて!」
魚は叫びながら泳ぎます
目の前にいた小さい魚を前に押し出して、魚は湖に飛び込みました

ざっぱーん!
懐かしい故郷の湖が魚の全身を包み込んでいます
さかのぼってきた川なんて、もうどこにも見あたりません

「ね、大変だったけど、助かってよかったね」
魚はだれかれかまわずまわりの魚に言いました

「君が逃げろって教えてくれたからだよ」
小さい魚が言いました
大きな魚がちょっとうれしくなって、
「みんなだって、すごいがんばっていたよ」
と答えた時です

「かあちゃんの言いつけを破るから、
こんな目にあうんだよ!」
もっと大きな魚が魚をひれではたきました

「かあちゃん、ごめん」
大きな魚はしおらしく言いました
「まったく、この次はこんなんじゃすまないよ」
お母さんの言うとおりです
魚はこんな目に会うのはもういやだと思いました


PH-18

2011年07月05日 07時01分00秒 | 希望の王子
お風呂の脱衣所に用意してあった王子様の服が
そのまま置いてあるのを見つけた家来は
「王子様、おいたが過ぎますよ!」
と言いながら広間に出てきました

目の前にいるのは、みんな元気そうな子どもです
「王子様はだーれだ」
1人の子どもが言いました
この子はお姫様みたいです
家来は他の子どもたちをじろじろ見ました

どの子どもも笑顔なので、
自分がずっと仕えてきた王子様がわかりません
「僕だよ」
1人の子どもが前に出ました
家来が手をつかもうとすると、
「僕だよ」と別の子どもが言いました
そう言われてみると、どことなく高貴な顔をしているような
「王子様、そんなに意地悪をされると、
私は泣いてしまいますよ」
困りはてた家来が言うと、
「泣いて暮らすなら、眠ってしまえば?」
また別の子どもが笑いました

「王子様、見つけましたよ
お着替えをしてください」
家来はしっかりその子の手をつかみました。

「僕が着替えるのは、
見ただけで王子だとわかるようにかな」
家来に手を引かれながら、
王子様は言いました
家来は怒ったような顔のまま、何も言いません

「お友達と遊ぶ時以外は、
王子様は王子様らしくしてください」
お風呂の脱衣所で王子様の着替えを手伝いながら、
家来はそっと言いました

PH-17

2011年07月04日 07時01分00秒 | 希望の王子
お風呂から出た子どもたちは
王子様もお姫様も、用意されていたおそろいのシャツとズボンを着て
大広間に出てきました
家来とバリトン歌手はお城にあった自分の服を着ています

シャツとズボンで髪をきっちりしばったお姫様は
男の子か女の子か見分けがつきません
それに、同じ服だと王子様とそっくりなのです

「何だか、鏡を見ているみたいだね」
王子様は言いました
「希望と絶望が似ているなんて言ったら
みんなびっくりしちゃうわ」
お姫様は笑いました
泣いていた時は絶望そのものだったお姫様だけど、
笑った顔が希望の王子様とうりふたつなのです

王子様たちがおもての玄関から帰ってきた時、
山の向こうに行った商人たちが、勝手口から戻ってきました
大広間の床の上にはせいいっぱいのごちそうが並びました
「すみません、
お菓子は手に入りませんでした」
商人はあやまりましたが、
「お菓子はしばらくいらないよ」
と1人の子どもが答えました

絶望の塔のお姫様は
塔のてっぺんでお菓子ばかり食べていたし、
塔から脱出する時も
ポケットいっぱいにお菓子を詰めてきてみんなに分けたのです

「これはまた、ありがたいお言葉です」
商人はかしこまって答えました
王子様はくすくす笑いました
お菓子はいらないと言ったのは、パン屋さんの子どもだったのです


PH-16

2011年07月03日 07時01分00秒 | 希望の王子
お城の庭に着いたところで、子どもたちは走り出しました
いっぱい咲いていたバラの花は流れてしまったけれど
サッカーができるぐらいの広さです
お姫様もバリトン歌手の背中をおりて走りました

「走ると転びますよ」
家来は困ったように言いました
でも、その口もとは笑っています

「約束どおり僕たちは帰ってきたよ
君の笑顔で迎えてくれ
それが何よりのプレゼントだ」
バリトン歌手が歌います

「今すぐにプレゼントを届けるわ
また会えるってわかっていたけど
ありがとう
本当にうれしいわ」
すぐに、ソプラノ歌手の歌が聞こえました
そのあとは、バリトン歌手の名前を何度もくり返します

子どもたちがお城にかけこむと
「きったないかっこうでお城を汚すんじゃないよ
さっさとお風呂に入っちまいな」
と誰かのお母さんが言いました
お母さんは、怒鳴った相手が王子様だとはわかりませんでした
それぐらい、みんなぼろぼろのドロドロだったのです

歩くのにじゃまなスカートは短く切ってしまったので
お姫様は貧しい男の子みたいです
向かう先をお風呂に変えた友達に、王子様は言いました
「女の子を先に入らせてあげようよ」

女の子がいたなんて、お母さんたちは困りました
疲れて帰ってくる子どもたちの服は
男の子用しか用意していなかったのです


PH-15

2011年07月02日 07時01分00秒 | 希望の王子
お城では、みんな総出の大そうじが始まりました
大工さんは壊れたところを直し、
男の人たちは力仕事を手伝いました
子どもだって遊ぶのは時々にして
ぞうきんやほうきを持って働きました

残っている材料でごちそうを作るのは
お母さんたちの得意技です
お城のコックさんたちは、おいしいソースを作りました

商人の人たちは、
お城にあった食べられない宝物を持って、
山の向こうまで朝から出かけて行きました
もちろん、もうけるためではありません
なんにもないと、みんなが寂しくなるからです

ソプラノ歌手はそうじをしながら、楽しい歌を歌いました
疲れてきても、みんなはその声を聞いてがんばりました

だんだん大きく聞こえてきたバリトン歌手の歌声は
ソプラノ歌手を励ましてくれました

長い坂を上って王子様たちが帰ってくるのは
きっと夕方になるでしょう
ごちそうよりお風呂に入りたいかもしれません
夕方にはお風呂がわかせるように
広いお風呂もそうじしました

夕方、お風呂はわいたけれど
王子様たちは帰りません
お姫様が歩けなくなって
バリトン歌手と王子様の家来が
こうたいでおぶってあげたからです

「私、ありがとうって言うのははじめてなの
でも、ありがとうってすてきなことばだわ」
お姫様はもう泣きません