コージはあずさを愛している/Koji Loves Azusa

小説「On The Road Part2 & 3」とリック連作
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翌日-46 コージ

2010年09月22日 07時00分00秒 | 翌日/TheDayAfterWeLoved
 お父さんに「いい息子を持って幸せだ」と言われたのは今年の1月だった。あまり話したことがなかったお父さんと初めて飲みに行った帰りだ。その頃は僕はなでしこのバイトで、あずともまだ再会してなかった。ヨシユキさんプロデュースのドライブが2月、清いお付き合いにピリオドを打ったのはおとといで、今僕は二人で暮らす部屋を探そうとしている。
 「すべてが急に動きだしているけど、不思議に不安はないんだ。止まるほうがこわい」
「止まらなくていいよ」と言って、お父さんはお椀をお母さんに差し出した。お母さんは台所に豚汁のおかわりを取りにいきながら、「勢いがある男っていいもんね」とつぶやいた。

 僕はたよりない甘ったれの長男から、大人の男にシフトする途中だ。「知り合いの不動産やを紹介してもいいけど、まず町の不動産やを見てみるんだな」と、お父さんはビールを飲んだ。
 「結婚したら二人で住むから、あずと探しに行ってみるよ。そのまえに、僕がいくらくらい持っているのか通帳を確かめる」

 お父さんは食事を終えて、ジョッキを持ってソファに移動した。僕は食器を重ねて運んでから、グラスを持ってリビングに行った。

 お父さんがビールをついで、僕とカンパイしてくれた。
 「放っておいてもいい息子になったコージに、カンパイ」

 僕は放っておかれて一人で大人になったんじゃない。お客様や友達や仲間や最愛のあずや、お父さんとお母さんとアネキとかかわってこられたから、大人の僕になれた。

 僕は首を振って、「これからもご指導ごベンタツのほどよろしく」と頭を下げた。下げた頭にお父さんのゲンコツが軽く当たった。
 「がんばれよ、このやろう」


翌日/The Day After We Loved - 完 -

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