6月8日、母の付き添いで東京オペラシティコンサートホールで開催された辻井伸行さんと三浦史彰さんのコンサート 「辻井伸行✕三浦文彰 ARKシンフォニエッタ《モーツァルト&ベートーベン》」に行ってきました。
母は辻井君が小学生の時からテレビでみて応援してたそうで、去年感染症拡大で私たちもなかなか実家に行けず、ずっと一人で過ごしている時に、弟から辻井君のDVDを送ってもらうと毎日何度も鑑賞して涙ぐんでいたそうです。今年になって携帯電話をスマホに変えたのでyoutubeを見れるようになるとまたしょっちゅう辻井君の演奏を動画で見るようになり、ますますファンになり、いつかコンサートに行きたいと言うようになりました。
4月のある日、新聞の広告に辻井君のコンサートの案内が載っていると私に言ってきました。しかも午後2時から。時間的に千葉の奥地にある実家からも行きやすく、そのうえ日の長い6月なら明るいうちに帰れる!もうこれが最後に行けるチャンスかもしれないと母は言う。
早速チケットをネットで検索したら、一番後ろの席しか空いてなかったけど購入しました。
きっと6月にはもう少し感染も収まってるかなと思ったのに、どんどん増えて、さすがに高齢(87歳)の母を新宿の方面に連れて行くのは危険すぎるので今回は諦めようと思い始めたら、母にワクチン接種券が来て5月中に1回目の接種をすることが出来ました。
これはコンサートに行きなさいと言う天意のような気がして決行。もちろん二重マスクをして水持参、そしてどこにも寄らずまっすぐ行ってまっすぐ帰りました。
三浦史彰さんは20代の若い実力派ヴァイオリニストですが、今回のコンサートシリーズでは日によってヴァイオリン演奏をされたり、オーケストラ指揮をしています。
その日の演奏はピアノ協奏曲が2曲で、2曲とも三浦さんがARKシンフォニエッタオーケストラを指揮して辻井さんがピアノを演奏する内容でした。
会場は中規模の広さで天井がとても高く、木目の美しい木で壁ができていて、客席がぐるりとステージの後ろまであります。
当日、観客席は1席ずつ抜かして座ることなく普通に隣り合って座っていました。この時期に大丈夫かな?とちょっと不安になりました。
やがてオーケストラの団員が入ってきて、コントラバスの演奏者が音の調整をして、そしてコンサートマスターがオーケストラ全体の音の調整をしてから、三浦さんと辻井さんが腕を組んで現れました。
曲目は最初にモーツァルト ピアノ協奏曲第21番。
柔らかくて澄んだ音が会場に響きます。パンフレットの説明によるとこの曲は第2楽章が特に有名だそうでスウェーデン映画「Elvira Madigan 短くも美しく燃え」に使われたそうです。確かに聞いたことがある。しっとりとした美しい曲でした。ピアノの音が小鳥がさえずるように美しい。
次はベートーベン ピアノ協奏曲第5番《皇帝》
母は自粛中に何度もyoutubeで聞いたピアノ協奏曲「皇帝」が大好きになったので是非聞きたかったそうな。
とても華やかで勢いのある曲です。同じくパンフレットによるとタイトルの「皇帝」はベートーベンが名付けたのではなく、ベートーベンが亡くなった後ロンドンの出版社が名付けたそうです。でもその名にふさわしい威風堂々とした曲で聞いていて高騰感があります。
オーケストラもノリにのっていて、ピアノ演奏する辻井さんもピアノを弾かない時はオーケストラの音楽の波に呼応するように体を揺らしていて、そして鮮やかにピアノを演奏してました。
座っているのが一番後ろの席なので、はっきりとは演奏者が見えないけれど、この音楽は正に目の前で演奏されている生の音楽。
演奏が終わった後、拍手に促されてアンコールを一曲弾きました。
シューマンの「トロイメライ」
しっとりとした音が響きました。あとで知りましたが、その日6月8日はシューマンの誕生日だったそうです。
会場は結構年配の方も多かったです。母の隣に座っていた女性の方は、演奏を聞きながらずっと涙を流していたそうです。いろんな方に人生があって、音楽を聞いて感じる事があるのですよねえ。
この会場は「タケミツ メモリアル」とも言われていて、作曲家の武満徹氏が音楽ホール建設の監修に深くかかわったそうです。残念ながらこのホールの完成を待たず他界されたそうで、武満氏への感謝と敬愛を込めてホールに名前を残し、そしてメモリアルプレートがロビーに設置されてました。
演奏会が終わり会場を去る人達。
この演奏会の3日後母は2回目の接種を無事終えました。2週間以上たって、私たちも周りの家族も無事に過ごしています。
行くときは勇気が要りましたが、命の洗濯ができて、母に誘われて感謝。行って良かったです。