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~窓をあけよう☆~

~部屋に風をいれよう~

天上の恋人(天上的恋人)

2012-10-17 07:33:06 | 銀幕

15日の朝窓を開けたらほんのり甘い香りが・・・いつの間にか金木犀が咲いてました。
わが家の住む団地にはあちこち金木犀が植えられていて、ベランダの下の方の緑地にもいっぱいイエローオレンジの花がたわわに咲いてました(*^_^*)


この数日間はこの映画を思いだします。

「天上の恋人」蒋欽民(ジャン・チンミン)監督作
日中合作映画です。
中国のタイトルは「天上的恋人」。ネタばれで書いてゆきますのでご注意を。
中国広西省チワン族自治区の山村が舞台です。
タイトルどおり天にもとどくような山で暮らす若者達の恋物語です。

王家寛(ワン・チャークワン)
彼は9歳の時に花火工場の爆発で母を失い、自分も聴力を失い父と暮らしている。そして彼だけ字の読み書きができなくて言葉が幼い。

左が朱霊(チュー・リン)
彼女もずっとこの山の上でくらしている村娘。村では一番のかわいこちゃんでお転婆でちゃきちゃきした娘。
家寛はこの朱霊が大好き。どうにか想いを伝えたいと何度もがんばるのです。
でも朱霊は山のふもとの町から来た青年獣医が吹くトランペットの音色に聞き耳をたてている。それは、山育ちの朱霊が知らない町の響。村の男達とは雰囲気の違うインテリ青年が好き。だけど聴力のない家寛はその音色を知らない、気付かない。

右が蔡玉珍(ツァイ・ユイチェン)
ある日行方不明の兄を捜しにこの村にやってきた少女。しゃべることができないが利発で働き者。偶然眼を悪くした家寛の父親のそばにいあわせたことで家寛の家に住み、父子の世話をする。家寛は妹のように接するが、玉珍はいつしか家寛に恋心を募らせる。

その玉珍が村に来た時、なぜか大きな赤い風船(アドバルーンかな)もやってきて、そのまま家寛のベランダにつながれる。

山のふもとの町に憧れる少女と町からきた少女、そして多分一生山を離れないであろう青年。家寛はその素朴な個性もあってまるで山の精霊みたいだななんて思いました。山の精霊だから町の音色は耳に入らない。
家寛はつなげた赤い大風船に玉珍から字を教えてもらって大きく「朱霊」と書いてアピールする。風船がまるで赤い魂のようにも見えて、朱霊という名前と呼応するようです。

思いは届かず朱霊はインテリ青年とひっそりと結ばれる。朱霊の幸せは少しの間だけで、インテリ青年はなにも言わずに山を下りて町に去っていく。悲しんだ朱霊は家にひきこもる。
それを知らない家寛はあきらめずに朱霊の家の前でプロポーズの歌を歌うが、朱霊はひっそりとインテリ青年の子を身ごもったと告げる。

失意で村から消えた家寛を玉珍が必死でさがす、家寛のランニングシャツに「找」(探す)と「家寛」を大きく書いて上からはおって。でも見つからず落胆する玉珍の前にふいともどってきた家寛。玉珍はたまらず家寛の背中にしがみつき「チャークワン(家寛)!」と叫ぶ。もしかしたら玉珍が喋れないのは心因的な原因のもので実は喋れるのかもしれません。
すごくせつない気分になりました。家寛も早く玉珍の気持ちに気付いて欲しい。

再びもとの穏やかな生活に戻ります。

ある日自分の髪を三つあみに結わえる玉珍を見て家寛が
「とてもきれいだよ」と声をかける。
うれしそうにはにかむ玉珍にランニングシャツにいっぱい入れた金木犀の花を渡す。

「ほらいい匂いだよ」
二人は落っことした金木犀を一緒にあつめながらちょっと意識します。
見ていて私もどきどきしました。やっと玉珍の気持ちが通じてきたのかしら♪

でもそのあと玉珍は家寛が朱霊を肩車に乗せて金木犀の大木の花を落として摘んでいる様子をみるのです。幼馴染の二人は無邪気に笑って楽しそう・・・。玉珍は家寛はなお朱霊の事が好きなのだと思う。

朱霊はそんな玉珍の気持ちに気付いていたようです。そして家寛と父の家ではもう玉珍は必要な存在であることも。つわりもあるのに、一人この村を出て行こうとする。あのインテリ青年を探しに行くつもりなのだろうか。
途中町からインスタントカメラを持った青年に通りがかりに写真を撮ってもらったので家寛の家に立ち寄り写真を渡して玉珍に別れを言おうと思ったけど誰もいない。部屋の中に入ったら、玉珍がしつらえた朱霊の為のお輿入れの用意がされていた。

二人の少女の奥ゆかしさにジンとします。

そしてラスト・・・
あの大きな風船が不思議な力を発します。そして唐突に話が終わります。
その終わり方に賛否両論がありますが、私はこれはこの形で良いのではと思います。
赤い風船は二人の娘の運命を決めたのです。
まるで不思議な生命体のように二人の気持ちに呼応して。
あとは見る私達の想像に任せて。

この映画の魅力は天にも届きそうな山や川の美しさと、何より3人の若者、家寛と玉珍と朱霊の若々しい美しさにあります。
健康的な色気のある朱霊、清楚な佇まいが美しい玉珍、そして伸びやかな肢体が眩しい家寛。
それは自分の若い頃を振り返って懐かしがっているのではありません。若さの理想形を眩しく見る気持ちです。

私は家寛役の俳優劉(リウ・イエ)を見たくてこの映画をみたのです。そして見るたびに彼の無邪気な笑顔にいやされました。もともと彫りの深い端正な顔立ちに青さと瑞々しい生命感が体から発している。
きっと田舎のシンプルな生活を描いているから余計なモノが邪魔をせずにまっすぐ劉の魅力がこちらに届くのでしょう。

この3人も今は30代。朱霊役の陶紅(タオ・ホン)は勉強不足で知りませんが、蔡玉珍役の菫潔(ドン・ジエ)も王家寛役の劉(リウ・イエ)も今では中国を代表する俳優の一人になってます。そしてお二人ともそれぞれ結婚されてお子さんもいます。
俳優として成功し、風格さえ感じますが、この映画の頃の瑞々しい魅力はこの時期だからこその魅力。

そして毎年金木犀の咲く日が来ると、家寛が自分のランニングシャツいっぱいに金木犀を包んで玉珍に無邪気な笑顔で渡す場面が思い浮かぶのです。


Sky Lovers 天上的戀人



ところで、この映画の時代は70年代あたりかなと勝手におもってましたが、村の小学生がしょっている学校用リュックの絵柄を見て驚きました。男の子がしょってるリュックにはドラゴンボールの絵が、女の子にはセーラームーンの絵がついてます。・・・どうも90年代のようです。










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