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架空CMソングの作詞・作曲・制作の経緯、小さなハプニングやイカしたグッズ
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〈架空CMソング制作秘話〉 『ちりぬるをチョコレート・3部作』ができるまで (第12回)

2020-07-17 17:00:00 | 架空CMソング制作秘話
こんにちは!!!

キシリ徹のタニケンです。

制作秘話第12回は、「ちりぬるをチョコレート・無印版」「ラテン味」「工場見学味」についてです。

なんか書くのめちゃくちゃ憂鬱だな…。


【着想】
 アイデアが枯渇
 この3部作の発表は24〜26曲目ですが、作曲自体は15〜20曲目くらいだったかな。


 二人で打ち合わせしながら、次の題材をチョコレートにしようということになりました。


 チョコレートのCMソングといってすぐに思いつくものといえば、明治チョコレートテーマではないでしょうか。


 我々も、明治を真っ先に思いつき、「明治みたいな歴史のあるチョコレートのCMソングを作ろう」ということになりました。


 そこで商品名を考え始めたのですが…、この時に限っては、いいアイデアが一切浮かびませんでした。


 たしか立て続けにミリオネ電器とか恵漏川温泉とか丸焼きおじさんのケバブショップなどを作り終えたばっかりだったので、アイデアが枯渇していたのかも知れません…「たらちねチョコレート」とかそんな案を出した記憶がありますが…。


 そこで、ワードバスケット(←制作秘話第6回を参照)を使って、「ち」の頭文字がでてきた時に「ちりぬるをチョコレート」を発案しました。


 なんとなく歴史あるチョコレートっぽいけど、やなせも発案した僕自身でさえも「あぁ…うん。まぁ作ってみるか…」みたいな反応でした。


 やなせに「適当に歌ってみて」と言われて歌った「ち〜り〜ぬ〜る〜を〜」が思いの外良かったので、サウンドロゴ部分のメロディはあっさり決まってしまいました。


 サウンドロゴだけじゃ寂しいなと思ったので曲の前半の部分を作り始めたのですが、歌詞もメロディも冴えたアイデアが一切出てこない…。


 そんな中、やなせが「ちりちりぬるを、ちりぬるを」と歌い出したので、それに「いろはにほへと、ちりぬるを」と「ちりぬるを製法の大陸的な味わい、美味しいカレー、全部好き。」というセリフを付け加えて完成させました。


 アイデアが枯渇しているのを感じつつも、
「まぁたまにはこんなのもあっていいんじゃない?」
「時間空けて聴きなおしたらいいと思えるはず」
などと思い込むよう努めながら、その日の打ち合わせを終了しました。


 後日、やなせに
「ラテン味と冒険味(後に工場見学味に変更した。いずれにしても意味がわからない)も作ろう」と言われた際に、
つい「こんな捨て曲いじくり倒してどうすんだよ!」と言ったのを覚えています。

 やなせ曰く
「3曲展開するアイデアは前々からあったのでやっておきたい」
「『こんだけやっても良くなりませんでした』って苦難の跡が見えるのも面白いんじゃない?」とのことでした。


 そんな経緯で、「捨て曲」「ゴミ曲」「アイデアの搾りかす」とまで言われた曲を3部作にわたり悪戦苦闘しながらいじくり倒す羽目になったのです。

〜〜〜

 【楽曲解説】
◆ちりぬるをチョコレート(無印)について
 この曲のアレンジついては、まっすぐにビートルズを意識したポップスに仕上げました。



 なんとなく「現代でビートルズっぽいポップスをうまくやるのがかっこいい」みたいな風潮が少し前にあったように思うので「まぁやってみるか…」みたいな気持ちで挑みました。


 ただ我々が学生時代くらいに作品として聴きこんでいたものといえば、リボルバーとかホワイトアルバムとかサージェント・ペパーズなど中期・後期の作品が主であり、それらの作品のサイケな風味や実験性に多少影響を受けていはいましたが、ずぶずぶにビートルズに影響を受けてきた訳ではありません。


 また、ビートルズが様々な形に翻訳された音楽を通して間接的に影響を受けてはいますが、ビートルズそのものの魅力をあまり理解していなかったように思います。

 しかし、この楽曲を完成させるにあたっては、ビートルズ初期作品を聴き直し、コーラスワークやベースラインの雰囲気などを参考にしています。

 この作業は、ビートルズに対する「工夫がいっぱいで刺激的な中期後期の作品の方がいいに決まってるじゃん!」という考えを覆し、
美味しいメロディーやひらめきに満ち溢れた初期作品の魅力に気付くきっかけとなりました。

 このキシリ徹のプロジェクトを始めてから、作曲上必要なリファレンスとしていろいろな作品を聴き直して「こういうことだったんだ!!!」というふうに、昔はわからなかった魅力に気付かされることが非常に増えたように思います。

 アレンジ段階から参照したため、そこまで寄せることはできませんでしたが、作曲段階から初期ビートルズを目指した作品なども作ってみたいと思いました。
 ビートルズについてもこれから初期作品だけでなく各メンバーのソロなどもっともっとディグっていきたいですね〜。




〜〜〜
 
◆ラテン味について
 ラテン味ということで、とりあえずラテンっぽいドラムパターンやオクターブで重ねるピアノのフレーズなどを入れています。



 作曲する際、できるだけ曲調が他の楽曲と被らないようにしていますが、実際ラテンっぽい曲って数曲作ってるなと改めて気づきました。


 アイデアが枯渇していたからやりがちなバリエーションを安易に選択してしまった気もしないこともないですが、他のラテン曲(桃園、野菜上等)ともまた違った雰囲気になっているのでよしとしましょう。


 このバージョンで特筆すべきことといえば、セリフの部分でしょうか。


 曲冒頭と途中のセリフの内容は無印版と同じ
「チョコレートの溶ける温度は425℃」
「ちりぬるを製法の大陸的な味わい、美味しいカレー、全部好き」なのですが、
「ラテン語で言ってみよう!!!!」とのことで、
翻訳ソフトでラテン語に翻訳したセリフを私が耳コピして喋っています。


 そもそも翻訳自体文法がめちゃくちゃなのに、なんとなく耳コピしただけなので、録音するたびに違う台詞になっていました。

 あと「美味しいカレー」の部分は、録音している最中、自分でもなにについて喋っているのか訳が分からなくなってしまって笑ってしまったテイクを採用しています。

 結果的に「美味しいカレーのことを想像して笑みがこぼれた」感じになって面白いかな、と思います。そもそもカレー関係ないですが…。

〜〜〜
◆工場見学味
 工場見学味ってなんなんだ…。美味しいのか不味いのかそもそも食えるのかもわからない…。


 やなせが「どうしてもインダストリアルをやりたい」ということでこの曲を作ったわけですが…。


 まぁコンセプトとかはともかく、曲自体はうまくできていると思います。
 
 そもそもスロッビング・グリッスルノイバウテンの影響でインダストリアルミュージックをやってみたいということで、試行錯誤しながらレコーディングしました。


 ホームセンターで購入した一斗缶とか鉄パイプをスタジオに持ち込み、振り回したり叩きつけたり蹴り飛ばしたりするインプロを二人で交互に繰り返しました。







 インプロのなかから徐々にリズムパターンを形成していくのが難しかったのを覚えています。一斗缶や鎖はなかなか迫力あるいい音が撮れてますね〜。




 曲を改めて聴き直してみると、レジデンツホワイトノイズの他、CANなどのジャーマン・ロックの影響も感じられます。


 キシリ徹のプロジェクトを始めてからは少し離れていましたが、我々は19〜20歳くらいのころ、プログレ、インダストリアル、アート・ロック、アヴァンギャルド、ジャーマン・ロックなどをよく好んで聴いていました。


 この曲を作るにあたってそういった音楽の影響をしっかり曲展開を構築しながら表現することができたので、そういった意味では非常に楽しかったし、価値のある一曲になったと思います。まぁイベントなどでは演奏不可能ですが…。






〜〜〜

 【その他 裏話】
 デザインについて
 3作すべてやなせがデザインしたものです。


 無印版の右側のチョコレートと中央下の山の絵は私が鉛筆で描きました。左側のチョコレートの絵はやなせが私の絵を真似て書いたものらしいです。



右のチョコレート、「Sinse」って綴り間違えてますね。試し書きしたときはちゃんと「Since」って書いていたのになんでだろう…。



 やなせはガチで絵が下手で、この絵についても真剣に描いたそうですが、改めてみるとヤバいな…。



 ラテン味もそうだけど、なんだかやっつけ仕事という感じが否めないよな…。

 工場見学味については、やなせが前々からコラージュアートをやってみたかったらしいので、初挑戦しました。



 味とか商品の詳細は全くわからないけど、目を引くデザインにはなっているかと思います。


 この時もやなせから「なにかインスピレーションを得ているアルカイックスマイルな子供」と「『ち』の上に目玉ついたやつ」の絵を書いてくれと頼まれたので、私が鉛筆で描きました(ハイパーアナログ人間なので…)。


 「『ち』の上に目玉ついたやつ」もレジデンツやノイバウテンを意識しているかと思います。

 後に、キシリ徹のデザインを集めたコラージュアートTシャツを作ることになったので、このデザインもひとつの経験になってるんだな〜。
 
 
 正直、ちりぬるを3部作についてはあまり気に入ってなかったし思い入れもなかったけど、改めて振り返ってみると、3作を通して経験したできたことは少なくないので、なんだかんだで大事なディスコグラフィーのひとつだなと思います。




 今回は以上です〜。それじゃ、またねっ!!!!!!



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