キシリ徹の!おんぼろファクトリー操業記

キシリ徹の
架空CMソングの作詞・作曲・制作の経緯、小さなハプニングやイカしたグッズ
についての裏話を書きます!

『マニアソングス Vol.2』を聞いて

2020-10-26 14:04:45 | 日記
 キシリ徹の歌ってる方、ブルーベリー好きのほう、やなせ京ノ介です。

アルバム『マニアソングス Vol.2』を送って頂きました。(3曲目に参加しているということで ありがとうございます)

このアルバムは、街角狸マニア・むらたぬきさんが、マニアフェスタで知り合ったマニアな方々の興味や好き、マニアの対象を曲にした”マニアソングス”をまとめた第二弾です。

何度か聞き、乱文ではありますが感想(ディスクレビュー風)を書きました。

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1.マニアコンビニ入店音
聞いたことあるあのメロディっぽいやつに、ジャズ的解釈なコード進行と4beatのリズムが乗っている、むらたぬさんのルーツを感じさせる自己紹介代わり?の佳曲
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2.この空の麓に
歌い出しのメロディが前の曲とリンクしてるシームレスさ!オシャレな試み

途中に村田あやこさんのコーラスが入ってきて、村田夫妻のハモリになるところ、ものすごい気持ちの良い重なり方・混じり合い方をしていてかなりグッと来た。胸に迫るものがあった。
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3.超ひま理論 〜ちょびっと泣いていい?〜
僕もボーカルとコーラスで参加させてもらいました。

自分の曲を歌うのと違う脳を使ったし、人の歌詞を歌うのも久しぶりだった。
っていうか人の曲を歌ってちゃんとレコーディングするの人生はじめてかも。
作詞作曲をしてない分、ある種の気楽さと、難しさがあった。

自分では作れないタイプのロック感のある曲だったので新鮮だった。
出来上がったものを聞いてみると、三者三様のボーカルの良さが立っていて、聞き直してやっぱいいなと思った。

今年4月、今以上に閉塞的な情勢の中、それぞれが録音して素材をむらたぬさんに送ってやりとりする形で曲ができていった。
自分では時事を取り上げることをしない(できない)し、あまり人に会えず、ずっと自分たちだけで曲を作りまくってた時期だったので、こういう機会があったのは嬉しかった。
Cメロ以降の石井さんの歌のひらけてく感じ、語りの力強さが、閉塞感を取り払ってくれるようで元気出る。

いつか(アーツ千代田で)また会おう!
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4.おにぎり食べたい
かなり有名なCMソングの引用+ダジャレが入っていて僕の好きな要素合盛り。
小曲ながらコード進行が凝ってて素敵。下降コードのところのコーラスが心地よい。
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5.きみはビカクシダ
アルバムのど真ん中にこのハードロック調の曲を持ってくるのが面白い。

詞の雰囲気が、
「想像力 オリジナリティ
見せてくれ 適応能力」
など抽象的な部分があり、割と具体的に書いている他の曲と異なるテイストを感じた。

こういう抽象感もビカクシダという植物の存在とリンクするところがあるのだろうか?
ビカクシダに対して勉強不足のため断言できず…これから知っていつか謎を解きたい

歌い出しの「ゥーウーウー!」のハイトーンにむらたぬさんの声のオリジナリティが出ている。
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6.天狗のひとり酒
この曲調なのに「お前たちのことを見ているぞ」ってちょっと強い言葉が乗ってるギャップが面白い。

天狗という(少なくとも俺は)実際に見たことのないものが題材なので、
1回目「お前たちのことを見ているぞ」を聞いたとき、姿の見えない異形の者に、厳しい目で監視されているようで少し怖かった。

最後まで聞いていくと、天狗なりの哀愁や、抱えている下降的な愛の目線が見えてきて、
最後の「お前たちのことを見ているぞ」では、少し呆れながら優しく人間を見守っているように聞こえ、むしろ安心感すらある。

ひとり酒の曲に、ひとり多重コーラス その試みも、天狗の脳内に渦巻く考えを覗き見しているようで面白い。
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7.DENSEN RAISAN
わかりやすくモチーフのある曲!
「いい線 いい線 いい線行ってるよ〜」のコーラスが頭に残る。
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8.空想都市のミステリートレイン
60’sサイケ+バブルガムポップ的な楽しさ・きらびやかさのある曲。

終盤の4つの楽器のチェイスがカッコいい。そのままフェードしていく感じも、アナログ盤で聞く30分台のアルバム中の1曲感があって良い(ホリーズとかキンクスとかそういう年代の)
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9.Top of the water tower
これはもうほぼカバーと言っていいのではないでしょうか!

イントロのギターの歪み方やエレピの再現細かい!
高3のとき、夜中に目をつぶってカーペンターズのベストを聞くという日課をよくやっていた。
意外とバラードのギターソロの歪み方がハード(ファズっぽい)でびっくりした記憶がよみがえった。あの曲調に荒めの歪みが乗ってるのがカッコいいんですよね。

Top of the worldはCMソング界でも、伊藤アキラ先生作詞・家電メーカーさくらやの「ハートでさくらや」で一部さり気なく引用されています。書きながら気づきました。
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10.小屋につきたい
これも確信犯的、元ネタがわかりやすい!

ダムが決壊したかのように、どんどん元ネタに寄っていくのが面白い。終盤の「今!」ってところのシャウトに毎回ウケちゃう、小田の洪水。

道に迷った小屋好きの人の話がここまでドラマチックになるとは…

もともと音域も似ているのもあるとは思いますが、むらたぬさんの小田リスペクト歌唱、すごい。
最初にむらたぬさんの曲を聞いたときに、兄弟時代のキリンジ(堀込泰行)っぽい声だな〜と感じたのを思い出し、堀込泰行が初期の頃オフコースに似てるって言われてたのも思い出した。共通点がありそうです。
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11.たぬきケーキを食べましょう
これかなり好き。
この音像・曲調の可愛さ、絶対自分にはできない。
サラッと聴けるのに尺がしっかり4分あるのが、作曲的にカッコいい。

間奏の儚げなコード進行とコーラスの重なりの方が、可愛いだけじゃない多重感・ストーリーを感じさせる。
アルバムのエンドロール
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 マニアブログフェスタの配信で、むらたぬきさんが「マニア界きってのコラボモンスター」って言われてて語感の良さに笑ってしまったのですが、
コラボモンスターな上、曲の表情も豊かで様々なのに、アルバム通して聞いたときにしっかりと統一感があるのは、むらたぬきさんの声のオリジナリティにあると思います。

 男声としては割と高く、芯は決して太くないけど倍音が豊かで、アタック感が曲によって自在な弾力性もある。
そのボーカルの個性・魅力がしっかりと様々な具材を串刺しにしている、それが統一感の正体だと感じました。

 マニアソングス自体のコンセプトも面白いし、曲を作ってもらったマニアの方々が皆、喜んでいるのを見て素敵な活動だな〜と思っています。
「“架空CMソング制作”のCM、みたいなマニアソング」的なのもありですかね。入り組みすぎてわかりにくいな…

時々思い出したように聞く愛聴盤になっていくと思います!
みんなも要チェックじゃぞ!!!



新曲公開記念、配信やります

2020-10-20 12:56:42 | 日記
キシリ徹49曲目の新曲『キリヤマの108徳ナイフ』公開記念で配信やってみます!!

明日21(水) 19:30〜20:30予定です。

軽く歌ったり、トークしたり、MVをみんなで見たりします。

「架空のCMソング50曲公開」をまずの目標でやってきたこのプロジェクトも、とうとう49曲目になりました!

今回の曲は、マニアフェスタで知り合ったShimashima Islandsくんに編曲をやってもらいかなりイイカンジになりました。
また、コーラスは、今まで曲に参加してもらった友達たち+スタッフの総勢8名に歌ってもらいました。

MVも、特に90年代に子供時代を過ごした人たちの琴線には触れる感じになってると思います。

誰も見てなくてもやりますが、できればみんなで見たいので、よろしければ明日↓こちら↓のURLで!!!




マニアフェスタオンライン、キシリ徹がやること

2020-09-19 17:00:00 | 日記
9/26、27(土日)に行われる「マニアフェスタオンライン」にキシリ徹も出展します!
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今までで一番デカイ級数ですみません。いきなり大声を出して威嚇するような真似をしてすみません。無駄にクリスマスカラーですみません。

いきなりでかい顔が現れてすみません。キシリ徹のやなせ京ノ介です。
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マニアフェスタオンラインに、『架空CMソング制作マニア』として出展します。

キシリ徹が主にやることは、(級数がかなり大きくなります 気をつけてください)
エレキギター・生ドラム・ベース3ピースバンド編成のスタジオライブです!!

サポートベースに数年ぶりに再会した大野くんを迎えて、いつもと違う感じでお送りします。
やなせとタニケンが、本物のドラムやベースを交えてやるライブは、前にやってたバンド以来なので、振り返ってみると2016年11月ぶりです。

ずっと録音をしたり、対面のマニアフェスタでもおもちゃドラムとアコギの阿漕な編成でやっていましたのでね〜オンラインだから出来ることってこういうことだろう?ほうら明るくなつたろう? like a 明治時代の成金という事で、思い切ってやることにしました。

明治時代の成金あるある:歴史の先生が「燃やしてるお札は今の価値にすると〜円なんだよね」って言うときちょっと得意気で気持ちよさそう。
それに「へ〜!!もったいない!!」ってリアクションしちゃう生徒も生徒だ!!!あいつらは毎年この部分でドヤる為に歴史の教師やってる!!!!今の価値にすると〜円なんだよねの為に勉強して大学入って、今の価値にすると〜円なんだよねの為に教育実習やって採用試験頑張ってる!!!
なら言わしてやれドヤらせてやれ生徒もリアクションしてやれ!!!と思う気持ちがある!!!!!!あのくだりにそこまでの熱意があるならな!

という訳で、初のスタジオライブ、フラットに見守って頂けると幸いです!

〜〜〜

更に、初日26日の12:00〜行われるオープニングにも出演させて頂きます!!!

級数大きくなる警告しなかったけどみんなの耳大丈夫かな。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが再結成したとき、爆音バンドってこと知らないでフェスでスピーカーの前に立ってて病院に運ばれたお客さんみたいになってないかな。
初日のオープニングでは曲を歌わせて頂く予定です!!ここでしかやらない新曲、やるかも知れません!!!
その後の「マニアフェスタ オンラインを巡ってみた」にもご一緒させていただきます!
豪華マニアの皆さんとマニアの世界の魅力を覗き見します!
気の利いたことは喋れなかったとしても、世界中を包み込む超笑顔でお送りします!!!!!!!!!
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その他、マルシェルに実はTシャツ・ポストカード・帽子を出品していました。
これらの販売も平行してやっています。
買ったらステッカーも付いてくるよ、神か!?

よろしくお願いします!

〈架空CMソング制作秘話〉「ラセラ八戸OPO銀行」&「ラセラ八戸OPO銀行カードローングラッセ」ができるまで(第15回)

2020-09-18 17:00:00 | 架空CMソング制作秘話
こんにちは!!!!


キシリ徹のタニケンです!


制作秘話第15回は、「ラセラ八戸OPO銀行」「ラセラ八戸OPO銀行カードローングラッセ 」です!!!!




【着想】
北海道銀行のCMなどにインスパイアされ、銀行の曲を作ろうとしましたが、銀行の名称を決めるのにかなり苦戦しました。


最初はいかにも地方銀行らしく「地名+銀行」の方向性も考えました。


我々は基本的に実在の地名を使わない(和歌山パイナップル農業実業団を除く)ようにしているため、架空の地名を考えてみましたが、どうにもしっくりこない。


そこで三菱東京UFJ銀行(現在は三菱UFJ銀行)のように、合併の後に名前が長くなってしまったメガバンク的な方向性で名称を考えることにしました。


これもかなり苦戦したため、いつもの如くワードバスケットを使って頭文字を決めて案を出し合っていたのですが、
「ら」のカードが出た時に、私の口から自然と「ラセラ八戸〜〜〜銀行」という言葉が溢れました。


 冷静に考えれば「ラセラ」って言葉を実際の銀行名に使われるわけないし、「八戸」って実在の地名入っているし(後にからくりナイスキャッチ!で八戸市とは無関係であることが明かされますが)、
無茶苦茶な案でしたが、私もやなせも何故かしっくりきて「これしかないな…」と思ってしまいました。


ちなみに、「ラセラ」という言葉が出てきたのは、当時よく聴いていたBerryz工房の「ギャグ100回分愛してください」の「ラッセララッセラッセ」の部分からの影響かと思われます。



その後、パソコンのキーボードを「ら・せ・ら」の順で押すと「o・p・o」と入力されることから、ラセラ八戸OPO銀行で決定しました。語感もバッチリです。


ついで、やなせから「カードローンの曲も作りたい」と言われたので、すぐに「グラッセ 」と答え、即決しました。


外国語でなんとなく明るいイメージ言葉をもじったものがいいと思いながら考えました。
料理のグラッセ ではなく、嬉しいという意味の「glad」と「ラセラ」を混ぜて「グラッセ 」と名付けました。

言葉を掛け合わせたりもじったりした結果、既存の言葉になるっていう命名の仕方はわりと好きなのかも知れない。

【楽曲解説】
当時、「十勝おはぎ サザエ」のCMで流れている手風琴の「とみちゃんのうた」のような曲を作りたいと考えていました。


そこで、ラセラ八戸銀行については
「無闇・無意味に、明るくて、具体的なことを一切言わない曲」といった方向性で作曲を進めることにしました。

メジャーコード主体で明るく、広く、青天井な、開放的な響きになるようにコードとメロディを探って行きました。

やなせが歌うと、メロディアスになりすぎて目指す方向と乖離してしまい、メロディがなかなか定まりませんでした。


「タニケンが歌えよ」と言われたので


「あなたのラセラと私のラセラを揃えて夢を叶えてラセラセラ」


と適当な歌詞をつけて歌ったところ、やなせが、その桁外れの意味のなさに、笑いすぎて四つん這いになりながら「続きも歌って!」と言うので、その後の展開も、ほぼ思いつき一発で歌い上げました。

こうして見事なまでに「無闇に無意味に明るくて、具体的なことを一切言わない曲」が出来上がったのです。


カードローングラッセについては、消費者金融のプロミスのCMなどをみて作曲の参考にしました。


このころよく、マイナー調でCMソングを作るのは難しいと話していたのですが、作曲数が増えてきていたため、曲調に幅を持たせるためにあえてマイナー調での作曲に挑んでいます。


やなせ曰く「太陽にほえろの曲などをたくさん聴いて、刑事ドラマっぽい感じに仕上げた」そうです。イントロとかめちゃくちゃそれっぽいですよね。歌い方は若干和田アキ子入ってます。


作曲するにあたって、カードローンのCMをたくさん観ましたが、
手続きや審査の簡略さや迅速さを謳うものが多く、
また、冒頭で何かを問いかけてくるパターンも多いという印象でした。
そういった点を踏まえて歌詞と曲展開を考えて行きました。


結果的には、冒頭での「お金ありますか?」という問いかけの後は、手続きの迅速さ、フリーダイヤル、サービス名を謳っていく無駄のない歌詞と展開が仕上がりました。


まぁ「なんだかんだ借りれます」とか「フリーダイヤル0120札束燃やして暖をとれ」とか無茶苦茶なこと言ってますが…また燃やしてるし…。


改めて考えると、必要な情報を無駄なく伝えていて、且つ曲の展開に盛り上がりがあるという点で、
我々が憧れの一つとしている「クラシアン」のCMソングに少し近づくことのできた作品なのでは?とも思います。


ラセラセラ八戸OPO銀行と、カードローングラッセ、ボーカルが違ってなんとなくポケモン感もあるので、是非二曲併せて聴いてみてください!


【その他】
デザインについて

両作とも、やなせがデザインしてます。
素材となる写真は、目黒、恵比寿あたりを散歩している時に撮りました。
白背景を探してわざわざ目黒のガード下みたいなところで撮影しました。


撮影当時、私は確か28歳ですが、やたらといい跳躍してますね。
〜〜〜

からくりナイスキャッチ!にTwitterで話題の「ラセラ配りおじさん」登場!


からくりナイスキャッチ!第15回、16回にラセラ八戸OPO銀行 頭取 安曇公康さんがゲストとしていらっしゃいました。
番組内ではラセラ八戸OPO銀行について以下のように紹介がされました。


ラセラ八戸OPO銀行は、2008年のリーマンショックを機に、
「日本経済の方舟を作り上げる」という理念を基に、3つの銀行が合併して設立されました。

世界的な恐慌の最中、すべての経済組織のみならず文化的組織の発展に貢献し、現在では国内有数のメガバンクとして成長を遂げました。

 常に時代に適合する金融の在り方を提示し続ける姿勢から、金融界のパイオニア的存在として世界経済に名を轟かせています。
中でもカードローンであるグラッセはその斬新なシステムで顧客の半数以上の方が利用しています。


ラセラ八戸OPO銀行創立の経緯などを語っていただいた他、事前にTwitterで「#ラセラください」で募集した、視聴者の日常のラセラを安雲さんに批評していただきました。

中には、ラセラセラセラと判定される投稿も現れ、大いに白熱したため、2週に渡り安雲さんに登場していただきました。


現在でも安雲さん個人のTwitterアカウントでは「#ラセラやるからラセラくれ」でラセラを募集していて、
応募者から100名に100万ラセラをプレゼントする企画を継続的に行っていますので、みなさんも応募してはいかがでしょうか。100万ラセラが何の役に立つのかは不明ですが。

https://twitter.com/AGM_Kimmy_RSR

今回は以上です!
また読んでくれよな!!!!!!

<実在CMソング研究>『明和地所 クリオマンションシリーズ』のCMソングもすごい(第2回)

2020-09-17 17:00:00 | 実在CMソング研究
”CMソング作家の赤ちゃん” キシリ徹のやなせ京ノ介が、好きな実在のCMソングについて語るコーナー・第2回です。

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『CMソングの”秒数”のマジック 〜想像より長いか?短いか?〜』

今回取り上げるのは『明和地所 クリオマンションシリーズ』のCMソングです。

CLIO CM(ショッピング編・想いをかなえ)
 

現在も年末になるとヘビーローテーションされるので、ご存知の方も多いと思います。

ロケ地は毎回フランスで、セーヌ川やパリの街並み等が映されています。

 このCMを知った高校生当時、北海道の片田舎に住み、日本から出たことのない僕にとって、もはや浮世離れした”洗練されたオシャレな都市生活”的映像が、強烈なインパクトを残しました。

 冷静になってみると、日本にこんな街並みは中々ないでしょうから、日本のCMとしては絵空事レベルの”洗練”感です。
少し前に話題になった「マンションポエム」も、この映像につけると浮くでしょう。

 この”絵空事レベルの洗練”感を違和感なく成立させているのは、幻想的なCMソングの効果が大きいと思います。

 主だったリズム楽器はなく、弦楽器主体の和音と、パーカッションが時々入る曲の上で、
女性ボーカルが、ポツリポツリと歌詞を口ずさむ。
歌詞も英語である上に、深めのリバーブとディレイがかかっていて、”日本のCMソングっぽさ”からはやや逸脱したトータルバランスになっています。

 この異質さと不思議な壮大さに、当時は
「クラシックやオペラの曲の一部を使っているのかな?」と思っていました。
聞けば聞くほど興味を惹かれて、年末に垂れ流されたら垂れ流さた分だけ見ていました。

〜〜〜
 想像していたよりかなり短かった

 この曲は正式名称を『アパルトマン』と言います。

 つい数年前まで、93年に発売されたコンピレーションアルバムの中にしか収録されておらず、廃盤のため、愛好家の中でも入手困難な作品でした。

しかし好評を受けて、2012年頃から、公式HPで無料配布されることに。
その後、この曲のフルバージョンについて色々調べていき、驚きました。

自分の耳には超大曲に聞こえ、短くても5分ぐらい、長ければ14分ぐらいあると思っていたこの曲は、
1990年・CM用に書き下ろされたものであり、全編で50秒しかなかったのです。

 しかもアウトロの数秒は「観客の歓声のSE+謎の中国語の口上」のため、実質本編は40秒程度。
たった40秒のCMソングと映像で、あの幻想的で奥行きのある世界観ができていることに感動しました。
気持ちいいから5分ぐらい浸っていたいのに、40秒で終わるところがまたもどかしく、死ぬほど何回もリピートしました。

逆に、CMで聞いて全編30秒ぐらいと想像していた曲が、フルでは1分以上〜5分ぐらいあった!というパターンもあります。
(繰り返し引用しますが、小林亜星作曲『パッ!とさいでりあ』など)

 アルバムで全編を聞いて「CMで流れている以外の部分はこんな展開なんだ!」と知れたときは、自分だけの大陸を発見したように嬉しいです。

 キシリ徹の楽曲が、一般的なTVCMの15秒/30秒尺だけではないのは、このような「CMソングをわざわざフルバージョンで聞いたとき」の感覚・経験から来ています。
そして、一般的なCM尺からはみ出た秒数で作っていますが、CMソングとしての実用性がないわけではありません。

〜〜〜
CMソングとしての実用性と、"フルバージョンで良い曲!"の両立

 以前発表したキシリ徹の『麦芽の舞い』という曲、これはフルバージョン50秒尺のものです。
フォロワーの、大阪のラジオDJとらやんさんが、この曲にナレーションをつけてくれました。



2パターンとも、50秒ある曲の一部を切り取って15秒にしたものですが、CMとして成立していると思います。

 曲の展開それぞれがキャッチーなのも要因ですが、ただただキャッチーな展開を連ねただけでは、フルバージョンで聞いた時、曲として成立しません。

 各所にCMソング的なフックを入れ込みながら
各展開の役割が明確で、統一性をもたせることで、
フルで聞いても曲として成り立つ&CMの秒数で切り取って聞いても美味しい仕上がりになっていると思います。

 CMソングの秒数のキャンパスは一見狭く感じられますが、その制約と上手く踊ることができれば、思った以上に広く自由です。何曲か作るうちに分かってきたことです。

果てしない奥行きを感じる曲がコンパクトな秒数でまとめられている『アパルトマン』
その反対に、CMではコンパクトに使われている曲が、フルバージョンでは意外な展開や表情を持っている『パッ!とさいでりあ』
どちらもCMソングとして魅力的で、わざわざフルバージョンを聞いても曲として意外さがあり面白い。
CMソングならではの”秒数のマジック”があります。

 『アパルトマン』を明和地所のサイトでDLできるようになってからというもの、日常で良い風景に遭遇したときは、曲をかけてCMの女性のように黄昏れた顔をする明和地所ごっこを良くしています。
8年ぐらいやっていますが、いつまで続くのでしょうか。
ちなみに、アパルトマンの「観客の歓声のSE+謎の異国語の口上」は、キシリ徹のちりぬるをチョコレート(ラテン味)でアイデアを引用しています。分かる人いるわけない。

最後に、キシリ徹の実在ラジオCM曲
「ラジオCM尺の"40秒"を超有効活用できた!」と感じた、最近の作品を紹介して終わります。
良い展開とキャッチーさになったと思います!

<完>