2020-10-18 15:31:16
7.君を助けたい
武器を持ったタケルは、前方からの攻撃に集中しながら、前にキララが仮想空間で見せた、爆発音の位置を思い出して、それを避けるように進んで行った。
後ろで姿を隠したまま、キララは少年たちに危険な場所へ近づかないように指示を出した。
「やつらは、アタシ達のせいで宇宙にいる仲間が大勢捕まったことを恨んでるよ。
自分らが悪さして、罪を重ねてたのにさ。
アタシらが来るのを待ってたんだよ。ご苦労さんだね。
こいつら全部倒して、防衛軍に差し出してやろうじゃないか! 」
少年たちは、キララの言葉に黙ってうなずき、放置されたままの壊れた戦車や飛行機に身を隠しながら、敵のいる場所を目指した。
発砲と爆発音がしなくなって、しばらく沈黙が続いた。
車が移動する音と、男たちの歓声が聞こえた。
そして、誰かが大声で叫んだ。
「お前らの仲間を人質にしたぞ! 言うことを聞かないと、すぐにでも打ち殺すぞ!」
少年たちは、あわてて欠けたメンバーがいないか確認してから、タケルに声をかけた。
「タケルのダチが、捕まったんじゃないのか? 」
「なんで、捕まっちまったンだ。迷惑だぜ! 」
「オレたちゃ、タケルのダチが殺されたって、痛くもかゆくもないからな! 」
こんなことになるとは思いもしなかったタケルは、周りから非難され、かえって逆ギレした。
「だって、オレが闘う前にキラシャに会いたいって言ったら、
アンタの闘う姿を見せてやればいいって言っただろ!
安全な所へ隠れたら、大丈夫だって! 」
キララは、身を隠したまま、タケルに言った。
「アンタの目を覚ましてやりたかったンだよ。
アンタが大事にしてたものを失うのは、アンタが原因なんだってね。
今はまだわかンないだろうケド…。
アタシの言うこと聞くンだったら、あの子を助けてやってもいいよ。
まぁ、聞かなかったら助からないだろうケドね…」
タケルは、改めてキララが悪魔であることを思い知らされた。
そして、自分の戦う姿を見て欲しいがために、安全な所へ逃げてくれると思い込んで、
かえって、キラシャとケンを危険なことに巻き込んでしまった自分を恥じた。
「いいかい!
アンタがアタシの言うことを聞かなかったら、あの子達は死んじゃうンだよ!」
「そんなこと言ったって…。いったい、オレはどうすりゃいいンだ!」
「アンタは人の言うことをすぐ真に受けるだろ!
そのまま自分の思いだけで、突っ走って人に当たって!
そンなンじゃ、大事なモノを失っちゃうンだよ! 」
「わかったから、オレが何をすればいいのか教えてくれよ!
アイツ等を助けたいンだ! オレの大事な友達なンだ! 頼むよ! 」
「わかったよ…。アンタはアタシの言う通りに、動けばいいンだ。
アンタが自分の勝手で動けば、それで終わりさ。
あの連中が何しようと、へっちゃらな顔しとけ!
ヘンな口答え、するなよ!
わかったか?」
「…エッ? アイツら何するンだ?」
「マッ、じきにわかるよ。
アンタが、ソンなことに動じないってことが大事なンだ。
早まって、勝手なことするなよ!
いいか。これだけは、絶対だよ」
「…なンか、よくわからないけど、おまえの言うとおりにすればいいんだな?」
「そうだ。…ただ、相当覚悟がいるけどね…」
タケルは、キララがこれから起こることを教えようとしないことにムッとしていた。
それでも、ケンとキラシャを助けるためには、悪魔のようなキララの操り人形になるしかないことを、十分すぎるほどよくわかっていた。
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