未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第13章 試練ときずな ⑥

2021-06-12 15:59:50 | 未来記

2008-03-04

6.親と子

 

タケルの目が覚めたとき、目の前には金属の鎖で縛られたトオルとミリが、気を失った状態で横たわっていた。トオルの顔には、殴られたアザと傷も見えた。

 

『パパ、ママ…』

 

タケルは、思いっきり頭をガーンと殴られたような気がして、2人をただ見つめた。

 

『タケル。目が覚めた? 奴らは、これからの仕事の前祝いに出かけてるよ。見張りがいるから声は出せないけど、心の中で話せるだろ? 』

 

『キララ、お前なンか、ウソつきじゃないか! ホントの名前なんてどうでもいいけど、オレを応援してくれるって、あれもウソなのかよ!』

 

自然と声も出さずに、キララと会話しているタケル。

 

『タケルが、何にもわかっちゃいないからさ。

 

こんな悪党達もいるってこと、教えてやろうと思ってね。

 

でも、こいつらだって、表じゃまじめに仕事をしてンだよ。

 

カネさえありゃね…。

 

客には楽しいゲームでも、それを商売でやるには、カネがかかり過ぎるって言うンだ。

 

これから、それを何とかしなきゃいけないンだけどさ。

 

アンタにそれを手伝ってもらおうかと思ってさ…』

 

『冗談じゃない。それって、オレに強盗か何かしろってことだろ?

 

オレにはそんなことはできない。パパやママだって、そんなこと絶対許さない!』

 

『そう言うと思って、この2人を人質にしてるのさ。

 

アンタは、このパパとママがいなけりゃ、やってけないンだろ? 

 

そのダイジなパパとママが、この世からいなくなったら? 』

 

『やめろ! それならオレを殺せ! オレなんて、生きてても全然楽しくないンだ…』

 

『そうかい? アンタには、自分よりダイジに思ってる女の子がいるよ。キラシャってね。

 

アンタがナンて言ったって、心で感じるンだ。

 

アタシにもキラシャって、呼ばせたかったけど、アンタの心がイヤがってた。

 

だから、キララに変えたンだ』

 

「うぅっ...」

 

うめき声が聞こえて、トオルが目を覚ました。

 

「…パパ、ゴメン!

 

殴られたの? 痛かった? オレ、こんなことになるなンて…」

 

タケルは、生まれて初めて自分の父親にすまないと思った。

 

自然といたわりの言葉が出た。

 

「タケル、大丈夫か?

 

おまえが縛られているのを見て、黙って見ていられるパパだと思うか?

 

…パパのことはいいんだ。でも、ママまで巻き込まれるとは…」

 

ミリは、まだ目を閉じている。

 

「パパも、うかつだった。MFiでは、相手の言葉を信じなければ、治療などできなかったが、ここではそのルールは通用しない。パパもこんなことになるとは…」

 

「パパ…。オレ、パパとママに生きていて欲しいンだ。

 

でも、オレがもし悪いことしなくちゃならなくなったら、オレのことキライになるだろ?」

 

「パパは、タケルが宝物だ。お前のためにだったら、命など惜しくない」

 

「オレは、絶対悪いことしたくないンだ。でも…」

 

タケルは、それ以上言葉にならず、大粒の涙を流した。

 

『わかったから! アンタはアタシの言うことだけ聞いてればいい、アタシが何とかするよ。パパには、あいつらに反抗しないように言いな。アンタを守るためにもね』

 

「パパ、オレに何があっても、ママを守ってね。

 

ひょっとしたら、ヒロが警察に連絡してるかもしれない…」

 

『アンタ、バカか?! そうはさせないよ! アンタ、アタシを困らせたいのか?

 

助けて欲しくないのか? まったく、地球人って奴は、わけがわかンないよ!』

 

「パパは、タケルの無事を祈ってる。パパ達のことはいい。タケルは自分を信じなさい。どんな悪いことがあっても、タケルが生きていれば、必ず良い結果につながる。

 

 

…パパはそう信じてるから…」

 

2人の声が漏れたのか、見張りがやって来た。

 

「目が覚めたのか、じゃぁ仲間を呼び寄せるから待ってろ…」


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