一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

健康で幸せな食事

1990年11月30日 | 過去のエッセイ
 料理は得意なほうではない。けれど下手で嫌いかというと、そうでもない。キッチンでエプロンをつけながら時計を見る習慣がある。
 考えた料理を、できるだけ短時間でパッパッと作ってしまうことに、小さな楽しみを感じる。
 作り終わって時計を見て、
「一時間でこれだけ作った、ヤッタ~!」
 と、一人で喜んでいる。献立によっては、三十分か四十五分の予定を立てたりする。
 料理に時間と手間を、あまりかけたくない。
 よく作るメインの料理は、豚肉しょうが焼き、野菜妙め、天ぷら、ハンバーグ、唐揚げ、鶏モモ酒蒸し焼き、お好み焼きなど。
 料理を作る時、塩、しょうゆ、コショウなどの調味料は、なるべく少なめに入れ、ニンニクやショウガはたっぷりと。理想は、材料を生かす味付けということになる。
 作る時だけでなく、食べる前に使う調味料も、少量が好き。漬物には、おしょうゆをかけない。ラーメンは滅多に食べないけれど、コショウは二ふり程度。サラダのドレッシングも、少量のほうが美味しい。
 以前、初めて一緒に食事した人が、レストランでハンバーグが見えなくなるくらいソースをたっぷりかけたのを見た時、
(それじゃ、まるで、おソース食べるみたい!)
 と驚いたが、食べ方は好きずきだからと思い直して、何も言わなかった。
 デパートやスーパーで、たまにお惣菜を買って来る。その味付けに、買ってしまったことを後悔することが、よくある。砂糖をたっぷり使った甘辛い味付けになっている時だ。しかも、その味は濃過ぎて不味いのである。調味料が強調されてるみたいな料理は嫌い。
 私は料理に砂糖を使わない。好きなカボチャの煮付けを作る時は、ダシと、ほんの少しのしょうゆと、砂糖が買ってなければハチミツを、ほんの少々、隠し味に入れる。砂糖やしょうゆ味のしない、カボチャの甘味の美味しさを感じられる味付けが好きだからだ。
 料理の本を見て時々作るが、指示どおり大さじ小さじの計量スプーンで量って調味料を入れて、ちょうどいい味付けになることが、ほとんどない。スプーンで量るより、このくらいかと勘で調味料を入れたほうが上手にできる。
 ただし作り慣れた料理でも、考え事をしながらだと、塩やしょうゆの加減を間違って失敗したりする。調味料を入れる時は、ひたすら美味しく作ろうと念じる気持ちと、勘と集中力が必要なようである。
 人と一緒に食事をすると、その人の好みがよくわかる。好きな料理はもちろん、味付け食べ方など、お酒を飲む人は、概して塩辛い味付けが好きなような気がする。
 そしてアルコール好きな人は、高血圧の人が多いのではないだろうか。高血圧の人は塩分を取りすぎてはいけないというのが定説らしい。
 私はアルコールは飲めるけれど少量で酔ってしまい、体質は低血圧である。低血圧は逆に塩分を多めに取ったほうがいいと何かで読んだことがあるが、本当だろうか。
 そうだとしたら、お酒をもっと飲めるようになって、塩辛いおつまみや料理を食べると、ちょうどいいということになる。
 もっとも、日常生活に支障はない低血圧だけれど、原稿を書く時に根気がないのは、やはり低血圧のせいかもと、自分で自分に言い訳している。
 それとも、単なる怠け心だろうか――。
 以前、親しい知人から聞いた話だが、友人の家で食事をしたら、ほとんど何も味のしない料理ばかりで驚いたという。食事に招かれたわけではなく、ふだんと同じ家庭料理を友人のお母さんが作ったのを夕食時にご馳走になったらしいが、肥満気味体型の友人は四十代で高血圧と糖尿病で、そのためのバランスを考えた調理法だったらしい。
 高血圧や糖尿病に限らず、病気になると食事制限をしたり、好きな味付けも変えさせられて、食べる楽しみが半減するかもしれない。
 料理をする時も食事をする時も、調味料を使って好みの味付けができるということは、食べることを楽しめる、健康で幸せなことだと思う。
                 
※ミニコミ誌『あじくりげ』 1990年掲載
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