東京大学入試地理B

東京大学入試問題(前期)地理Bの問題・解答・解説。2006年・2007年の2年分。

東大入試地理Bの問題解答解説(06年/07年)

2007年03月07日 | 東京大学
東京大学前期試験地理B解答解説(図版などは二宮書店「詳解地理B」による)
2007年2月前期
基本的事項を総合的にまとめて記述する問題が多い。単問単答型の問題であっても、前後関係を考えた解答が必要である。
●第1問 ヨーロッパの自然と産業
 設問A ヨーロッパの自然  設問B ヨーロッパの電力事情
●第2問 世界の食料と環境
 設問A 世界の食料供給  設問B 窒素の循環
●第3問 日本とアメリカの産業
 設問A 日本の商業都市の人口 設問B アメリカ5州の産業
 (2007年地理Bはここまでで全部終了。問題数減少)

2006年2月前期
一見やさしそうで、よく考えなくてはならない問題ばかりである。第3問設問Bの最終問題は、統計の解釈が様々にでき、解答が定まらないという意味の難問。
●第1問  南アメリカの自然と産業
 設問A 南米の気候 設問B 南米の農業 設問C 南米3か国の貿易
●第2問 世界の森林
 設問A 主要国の木材生産 設問B 日本の林業 設問C 木材チップの貿易
●第3問 世界と日本の産業
  設問A 世界のコンピューター産業 設問B 高卒者の就職先 
      

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1960年代の記録(国連、安保、水俣病など)   

東京大学2007年入試問題(全教科)
センター試験地理B(06/07)地理A(07)

07年第1問設問A ヨーロッパの自然と産業

2007年03月01日 | 東京大学
2007年東大2次地理B
第1問 ヨーロッパの環境とエネルギーについて、設問Aと設問Bに答えなさい。
 
第1問設問A ヨーロッパの自然環境に関連し、各問いに答えなさい。 

地球では過去200万年に氷河期と間氷期が、ほぼ10万年周期でくりかえされてきた。次の図1は、ヨーロッパにおける氷河期の分布と、a)氷河期と現在の海岸線の位置を示したものである。
図2は北緯55度付近の3都市の現在の気温と降水量のグラフである。氷河の侵食作用でできた地形は【 ア 】と呼ばれる。スカンジナビア半島西岸では【 ア 】に海水が侵入してできた【 イ 】をb)冬季も海水が凍結しない天然の良港として利用してきた。また、氷河期に氷河が覆った地域には、c)湿地や湖がしばしば見られる。バルト海南部沿岸地域やイギリスでは土壌がやせているため、【 ウ 】中心の農業が行われている。そのうち、図1のP地域では、大きな標高差と気候の季節変化を生かした【 エ 】が行われている。
(1)ア~エに適切な語句を答えなさい。
(2)図2の気候XYZは、図1の都市ABCの都市のいずれか。
(3)説明文のa)について。氷河期の海岸線は、現在の海岸線と比較すると、どのような位置関係にあるか。60字以内で述べなさい。
(4)説明文のb)について。その理由を30字以内で述べなさい。
(5)説明文のc)について。近年の環境問題とはどのようなものか。30字以内で述べなさい。



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第1問設問A解答
(1)ア-U字谷 イ-フィヨルド ウ-酪農 エ-移牧
(2)X-B Y-A Z-C
(3)氷河期には大陸に海面が低下したため、大陸棚や海峡部分などの浅海が陸地化した。大陸は現在よりも拡大していた。
(4)沖合を強い暖流北大西洋海流が北上するからである。
(5)化石燃料の消費による酸性雨のため、湖沼が酸性化した。

第1問設問A解説

(1)ア-U字谷
U字谷 最終氷河期の最盛期は2万年前、海面が150m低下した。3万年前から2万年までが氷河拡大期であり、海面が低下した。1年平均では1.5cmの低下になる。
最終氷河期後、2万年前から1万年前までは氷河縮小期であり、海面が上昇した。1万年前にほぼ現在の海面と同じ高さになった。
2万年前の氷河期には海面が低下したが、その海面めざして氷河が大陸をゆっくり流れた。1日1m程度のゆっくりした流速だが、岩石を巻き込んだ、1000mを越える厚さの氷河は、侵食力が強かった。その浸食断面がU字型なのでU字谷といわれる。氷河の運んだ岩石が氷河末端に堆積し、モレーンといわれる。



イ-フィヨルド
フィヨルド ノルウェー、グリーンランド、ニュージーランド、チリなどの海岸には、フィヨルドが見られる。氷河の侵食したU字谷に、後氷期海に面が上昇し、海水が侵入した谷である。水深が深く、距離が長い。ノルウェー、チリではフィヨルドの一部を仕切ってサケを養殖し、日本に輸出している。

ウ-酪農
酪農 酪農は乳牛を飼育し、乳製品を販売する農業である。酪農の発達した国・地域は冷涼な低地であり、他の作物の栽培が難しいという特徴がある。
デンマークは現在も冷涼な気候であり、さらに氷河跡の砂礫地モレーンが広がり、小麦栽培が難しい。牧草・ライ麦・じゃがいもなど、寒さに強い飼料作物を栽培できるので、酪農が盛んになった。農業協同組合が酪農農民の経済面を支援する、金融・商社システムである。
デンマークの農業地域が酪農ではなく、混合農業に区分される場合がある。これは、メス牛が生まれると酪農をいつまでも続けることができるが、オス牛が生まれると肉牛として飼育することになり、酪農には区分できない。混合農業になる。酪農は混合農業における乳牛飼育の経営形態とみなすことができる。

エ-移牧
移牧 スイスアルプスで古くから行われている酪農。冬は、低地の畜舎で乳牛を飼育し、夏には暑さを避け、アルプスの高地牧場(アルプあるいはエルム)で飼育する。なお、スペインでは羊の飼育地を季節的に変える移牧がある。

(2)西岸気候
西岸海洋性気候Cfb 地図Aはアイルランドのダブリンで気候は西岸海洋性気候Cfbである。暖流の影響が3都市のうちで一番強いから、グラフ(Y)が該当する。
Bはデンマークのコペンハーゲンで西岸海洋性気候Cfbであるが、暖流の影響が届きにくい位置にあるので、グラフ(X)が該当する。CはロシアのモスクワDfであり、冬の低温からグラフ(Z)になる。
西岸気候は、暖流と偏西風の影響が強く、高緯度でも温暖な気候である。
海洋性気候は、海の影響で、気温の年較差の小さい気候である。
西岸海洋性気候Cfbの記号のうち、bは最暖月平均気温が22℃未満である。夏に涼しいから、気温比較差が小さいことを示す。
日本は東岸気候Cfaである。aは最暖月平均気温が22℃以上である。夏に高温であるから、気温年較差が大きいことを示す。


(3)氷河性海面変動
氷河 図1には2万年前、北西ヨーロッパに大陸氷河が最も広がった氷河分布と、アルプスの山岳氷河の分布図が描かれている。
2万年前の最終氷河期には海面が150mも低下して、大陸棚部分は陸地になった。イギリスがヨーロッパ大陸の一部、北海も陸地になった。また、トルコのボスポラス海峡が陸地になって、黒海は湖の状態になった。氷河の中心となったバルト海・ボスニア湾では、氷河の重さで大陸が沈降し、本来は凸型の楯状地が、凹型になってしまった。バルト楯状地は、氷河が消えたあと、隆起が始まった。現在も隆起を続け、8000年後には、凸型の楯状地になる。
陸地、例えば河口に大量の砂礫が運搬されると、河口に堆積しても河口が沈んでしまい、河口に堆積地形としての三角州はできない。三角州のない河口はエスチュアリーといわれるが、河口が堆積物の重量に敏感に反応して沈降するエスチュアリー(ラプラタ川)と、砂礫が運ばれないエスチュアリー(テムズ川)とがある。
氷河の発達によって大陸の沈む例として、バルト楯状地以外に、カナダ楯状地がある。南極大陸は氷河の厚さが3000mもあり、氷河を取り除くと島の集合体になるが、氷河の重さが消えた分だけ隆起する。南極大陸ができるのである。このような、大陸の浮き沈みによる均衡維持はアイソスタシーといわれる。 



(4)北大西洋海流
メキシコ湾流と北大西洋海流 北赤道海流として熱帯海域の熱エネルギーを集めて西に流れる。メキシコ湾岸ではメキシコ湾流として強い流れるになる。この部分は西岸強化流である。北大西洋では北大西洋海流と名称が変わる。メキシコ湾からヨーロッパ西岸にまで熱エネルギーを運搬する強い暖流である。ヨーロッパ西岸、特にノルウェーなどの高緯度西岸地域が、冬でも温暖な西岸海洋性気候Cfbになる。
北大西洋海流の一部は寒流のカナリア海流になる。カナリア海流、北赤道海流、メキシコ湾流、北大西洋海流、そしてカナリア海流というように、海流が大西洋の北半球部分で一回りする。これが環流である。



(5)酸性雨 
酸性雨 もともと自然状態の雨でも、大気中の二酸化炭素が溶けてpH5.6の弱酸性になっている。そのため、酸性雨はpH5.6以下と定義される。
酸性雨は石炭・石油の化石燃料の大量消費によって起こる。大気中に硫黄酸化物SOx、窒素酸化物NOxが浮遊し、硫酸・硝酸の酸性雨が降る。酸性雨は産業革命以降、ヨーロッパから始まった。国境を越えて酸性雨が降る。


最初は酸性に弱い石像、石造建築、ブロンズ彫刻などに酸性雨の影響が見られたが、次第に酸性雨被害が拡大し、ドイツ・デンマーク・スウェーデン・フィンランドなどでは、広い面積にわたって森林が枯死した。最終的には酸性水が低地に流れて、湖沼・湿地に集まり、動植物の生態系を変えた。先進国では脱硫装置、脱硝装置によって、酸性雨の酸性濃度を減らすことができた。
20世紀末、旧東欧の工業地域では脱硫・脱硝装置を設置するだけの資本も技術もなく、ここを発生源とする酸性雨が北ドイツの森林・湖沼の動植物に大きな影響を与えた。
生態系を守るためにヘリコプターなどを使って、石灰が大量散布され、森林・湖沼の中和作業が進められた。



酸性雨防止の国際協力 酸性雨の被害拡大をおさえるため、次のような条約がある。国境を越えた汚染問題が深刻なヨーロッパが中心の条約である。
○長距離越境大気汚染条約 (1979)
○ヘルシンキ議定書(1985)
○ソフィア議定書(1988)
21世紀になると、中国・インドの工業の発展により、中国・インドが酸性雨の発生源となり、新たな国際的対策が必要になっている。
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07年第1問設問A解答解説終了 
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07年第1問設問B ヨーロッパの電力

2007年03月01日 | 東京大学
2007年東大2次地理B

第1問設問B 北ヨーロッパの発電などに関連し、次の表を参照し、各問いに答えなさい。



(1)デンマークとフィンランドでは火力発電の割合が高い。両国で火力発電の燃料として使われる資源名を、2つ答えなさい。

(2)デンマークとフィンランドでは「その他」として、家畜糞尿・木くずなどのバイオマスが発電の燃料として利用される。バイオマスによる発電が、化石燃料による発電よりも有利な点を60字以内で述べなさい。

(3)デンマークでは「その他」の中に、バイオマス以外にどのようなエネルギーを利用した発電が含まれるのか。最大のものを1つ書きなさい。

(4)デンマークとノルウェーの発電量の構成には、著しい違いがある。その違いを生み出している自然環境の特徴を60字以内で述べなさい。

(5)アイルランドも「その他」のエネルギーとは何か。また、どのような自然環境にあるためと考えられるか。30字以内で述べなさい。

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第1問設問B解答

(1)石炭、天然ガス
(2)廃棄物の有効活用になり、環境への悪影響を削減できる。供給量が安定して価格変動が少なく、発電コストが一定である。
(3)風力発電
(4)デンマークは偏西風帯の低地で、風力発電に適している。ノルウェーは山地が多く、急流河川の水力発電が盛んである。
(5)地熱発電。海嶺の陸地化部分の島であり、火山活動が盛んだから。

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第1問設問B解説

(1)火力発電
石炭火力発電所 世界的には火力発電は石油火力が中心だが、コストの低い石炭火力が増えている。また、石炭・石油の価格を比較しながら、安い方の燃料を選んで使う発電所も多い。石炭・石油を使う火力発電所は防止設備の程度にもよるが、温室効果ガスとしての二酸化他炭素が放出される。酸性雨の原因となる硫黄酸化物・窒素酸化物も放出される。
天然ガスは高価だが、環境を汚染しないクリーンエネルギーである。先進国の火力発電所で利用される。
デンマークでは1973年の第1次石油危機以降、コストの高い石油火力発電を減らし、低コストの石炭火力発電と、ウラン燃料の安定確保ができる原子力発電に転換を進めた。石炭火力発電所は増設されたものの、スリーマイルとチェルノブイリの原発事故で世論が変わり、原発建設計画は中断された。
デンマークでは原発の代わりに、クリーンエネルギーの天然ガス発電、無尽蔵エネルギーの風力発電を増強した。デンマークは北海油田から石油と天然ガスを採掘し、原油を輸出し、国内の火力発電は安価な石炭と、クリーンな天然ガスが主体である。
フィンランドの発電源内訳は石炭火力22%、天然ガス13%であり、石油火力の割合は5%以下である。石炭火力発電はコストが低く、安定的に国内外から供給できる。
***なおこの解答(速報)は、河合塾は石炭・天然ガス、駿台は石油・天然ガスである。河合塾が正しい。

(2)バイオエネルギー
アルコール自動車 バイオエネルギーは有機物の一次利用か、廃棄物のリサイクルである。低コストであるし、環境保護に役立つ点で意義がある。
しかし、エネルギー総量に占める割合は小さい。将来、化石燃料が枯渇して異常高値になるとか、新たな手段でバイオエネルギーの大量生産が可能になれば、重要なエネルギーとなる可能性はあるが、現在は補完的な役割を果たすだけである。
1980年代にブラジルでサトウキビのアルコールで走行可能な自動車が量産された。ブラジル政府がサトウキビのアルコールへの加工に積極的であった。アルコール自動車にも税制上の優遇措置を講じたが、エンジンの性能は低くアルコール自動車は普及しなかった。次の手として、ブラジル政府は、ガソリンにアルコールを混合することを考えている。

(3)風力発電
風力発電 風力発電は無尽蔵の自然エネルギーを利用できる。デンマークでは危険な原子力発電を中止し、風力発電の比率を高めた。デンマークの発電総量の12%が風力発電である(2003年)。風力発電はドイツとデンマークで盛んである。

風力発電には欠点も多く、なかなか普及が進まない。風力・風向は絶え間なく変化するので、電流・電圧も変化し、安定供給ができない。大型蓄電池に一度蓄えてから供給する方法もあるが、その場合の電力ロスが大きい。
広い土地に多数の風力発電機を設置し、発電ゼロのない状態にしている。このため、風力発電機は牧場、湖、浅海などに集中設置され、立地可能地域には限りがある。風力が2~20m/secという制約もある。
これからの研究によってはおおいに発展する可能性があるが、電力会社は投資の短期的回収のために原子力発電の復活を急ぎ、風力発電の進歩発展への投資を減らしている。

(4)水力発電
水力発電 ノルウェー、カナダ、ブラジルは水力発電の割合が高い。一度ダムを建設すれば、燃料代が非常に安い、という利点がある。
ノルウェーはスカンジナビア山脈からの急流河川が多いので、水力発電に適している。水力発電はエネルギーがほとんど不要であり、発電コストが低い。
集落に電力を供給するような、小型の水力発電所を数多く設置している。日本・ブラジル・アメリカのような、巨大ダムによる水力発電ではない。

(5)地熱発電
アイスランド アイスランドは大西洋中央海嶺の一部、広がる変動帯にある。海底の火山山脈の一部が陸地化した島である。島そのものが2分されている最中である。
島全体が多くの火山の集合体であり、地熱を大量に得ることができる。高温の水蒸気の噴出するエネルギーを利用して、発電用タービンを動かすのである。
世界中の地熱発電に共通することだが、水蒸気だけが噴出するのではなく、水蒸気には火山に含まれるような有害・有毒物質が含まれて、その無害化処理工場が必要である。地熱発電のエネルギーは地下から得られるが、処理工場の運転費用まで含めてコスト計算をすると、地熱発電のコストはタダではない。


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07年第1問設問B終了
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07年第2問設問A 食料の国別消費量

2007年03月01日 | 東京大学
第2問 食料と環境に関する設問Aと設問Bに答えなさい。

第2問設問A 次の表は、いくつかの国の一人当たり食料供給量(年)を示す。 



(1)表のA~Dの食料は、いも類、水産物、肉類、乳製品のうちのどれか。

(2)上の問(1)で、Aを判断した理由を、複数の国をあげ、30字以内で述べよ。

(3)いも類に含まれる主要作物は、さつまいも、じゃがいも、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモである。インドネシア、ナイジェリア、タンザニア、ブラジルのいずれの国においても、その国のいも類供給量の半分以上を占めているのは、どのいもか。

(4)肉類に含まれる主なものは、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉である。中国、ドイツ、スペインにおいて、肉類供給量の半分以上を占めるのはどれか。

(5)穀物供給量のうち、中国では米と小麦の生産量が多い。中国において、米および小麦の生産に見られる中国の地域的差異もついて、自然環境にも言及して、60字以内で述べなさい。

(6)インドでは牛糞が伝統的に利用されてきた。インドにおける牛糞の独特の利用方法について、30字以内で述べなさい。

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第2問設問A解答
(1)A-水産物 B-肉類 C-乳製品 D-いも類
(2)内陸国のモンゴルで少なく、沿岸国のノルウェーで多いから。
(3)キャッサバ
(4)豚肉
(5)年降水量750~1000mmの秦嶺山脈・淮河線より北は冷涼少雨で小麦、南は温暖多雨で稲作が盛ん。
(6)住宅の壁材の一部や、炊事などの燃料として使われる。
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第2問設問A解説

(1)水産物供給量
日本は水産物62.7、肉類42.4、乳製品93.6、いも類22.2、穀物111.7である(単位kg、2004年)である。
水産物供給量(1人1日、単位g。2003年)
モルディブ  [33万人] 495
サモア    [19万人] 248
アイスランド [29万人] 247
キリバス   [10万人] 204
日 本   [12,808万人] 181
セーシュル  [8万人] 168
リトアニア  [231万人] 165
ポルトガル [1,049万人] 162
韓 国  [4,782万人] 160
マレーシア [2,534万人] 153
ノルウェー  [462万人] 149
*[ ]は人口を示す。
魚介類の摂取量の多いのは人口の少ない島国である。日本は人口が多く、国全体としての魚介類の摂取量も多い。ノルウェーは水産物輸出第2位である(1位は中国)。水産物輸入第1位は日本である。


(2)魚介類の供給量の多い国
ノルウェーの漁業 北海漁場が近いこと、ロフォーテン諸島のような魚介類産卵水域があること、フィヨルドの水深が大きく漁港として適していること、暖流の北大西洋が流れて漁港の多くは不凍港であること、などが、ノルウェーの漁業の発達要因である。ノルウェー国内でも魚介類の需要が多いが、輸出も多い。
1990年以降、フィヨルドを仕切ってサケを養殖し、日本に養殖サケを輸出している。


(3)いも類(統計は2005年)
◆さつまいも
原産地は南アメリカの熱帯・亜熱帯地域。
世界の生産合計 1億294万トン
中国82.8% ウガンダ2.0%
◆じゃがいも
原産地は南アメリカのアンデス高地。
温帯・冷帯で栽培可能だが、アンデス以外では連作障害を起こす。
世界の生産合計 3億231万トン
中国22.6%  ロシア11.6%  インド7.7%
◆ヤムいも
原産地は東南アジアの焼畑農業地域。日本のヤマイモ。
世界の生産合計 3986万トン
ナイジェリア66.7%  ガーナ9.8%
◆タロいも
原産地は東南アジアの焼畑農業地域。日本のサトイモ。
世界の生産合計 1059万トン
ナイジェリア38.0%  ガーナ17.0%  中国15.5%
◆キャッサバ
原産地はブラジルの熱帯雨林~サバナの焼畑農業地域。
世界の生産合計 2億030万トン
ナイジェリア18.8%  ブラジル13.1%  インドネシア9.6%

キャッサバ  マニオク、マンジョーカともいわれる。熱帯低木で、根を食べる。熱帯の自給作物である。甘味の強いキャッサバはゆでて食べる。しかし、苦みのあるキャッサバはそのまでは食べられず、タピオカの原料のデンプンに加工される。
ブラジル原産のキャッサバが、アフリカで栽培されている。17世紀、ブラジルを植民地としていたポルトガル人貿易商人が、アフリカから奴隷を輸出する時、船中で奴隷の食料としてキャッサバを食べさせた。黒人奴隷貿易のために、アフリカでキャッサバの栽培が盛んになったのである。



(4)肉類の主要生産国(2005年)
◆牛肉
世界生産合計 6,019万トン
アメリカ18.7% ブラジル12.9%  中国11.3%
◆豚肉 
世界生産合計 1億0224万トン
中国48.9% アメリカ9.2% ドイツ4.4%
◆羊肉
世界生産合計 1,306万トン
中国33.3%  インド5.5%  オーストラリア4.7%

鶏肉 アメリカの生産量が多い。鶏肉は発展途上国では各戸が庭先で飼っている。しかし、鳥インフルエンザが人間の新型インフルエンザ流行の原因になるとして、インドネシアでは庭先飼いを禁じた。他の東南アジア諸国も禁じる方向にある。そのため、鳥インフルエンザとは一応は無関係の、ブラジルの鶏肉生産が増加している。



(5)中国の農業地域
チンリン・ホワイ線 秦嶺山脈(チンリン山脈)と淮河(ホワイ川)を結ぶ線が、畑作・稲作の境界線である。チンリン・ホワイ線は年降水量が750~1,000mmであり、これより北は畑作、南は稲作である。アメリカ同様、降水量と気温で大まかな農業地域が決まる、適地適作である。




(6)インドの牛
インドの牛肉消費量増加 ヒンドゥー教では牛は神の使いであり、牛肉を食べるのはタブーであった。しかし、インドの牛肉消費量は年400万トンに増え、アメリカ、中国、ブラジルに次いで世界第4位である。経済発展とともに、経済格差が広がったといわれるが、その経済的に恵まれたインド人は牛肉を食べるようになった。
しかし、国家全体が牛肉を食べるのをタブーとしていた時代は終わったわけではない。牛肉を食べないし、牛の糞を壁に塗り込めて断熱性を高めたり、燃料を買えない家庭では牛糞を丸めて保存して炊事用の燃料として使う。そのような家庭が少なくない。



 
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第2問設問Aは終了
第2問設問B
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07年第2問設問B 窒素の循環

2007年03月01日 | 東京大学
2007年東大2次地理B

第2問設問B 都市と農村の窒素の循環について、各問いに答えなさい。 

食料の生産と移動を、それに含まれる窒素の量によって表すことができる。下図は、1935年と1990年の東京湾に注ぐ河川流域の窒素の量の出入りを示す。



(1)1935年の図で、人間から田・畑へ向かっていた窒素は何を示すか。30字以内で述べなさい。

(2)1935年と1990年とを比較すると、鶏・豚・牛といった家畜に関する窒素の出入りも大きく変化した。この変化の具体的な内容を、90字以内で述べなさい。

(3)1990年には、東京湾に向かう窒素の量が、1935年の8倍以上になっている。このことによって、東京湾でどのような問題が生じているか、60字以内で述べなさい。

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第2問設問B解答

(1)農地への有機肥料として、人間と家畜の排泄物が使われた。
(2)1935年、家畜の飼料は周辺農地で栽培された。家畜の屎尿は農地の肥料となった。窒素は循環した。1990年には飼料は輸入され、家畜の屎尿は東京湾に廃棄された。窒素は循環しない。
(3)東京湾に窒素が大量に流入し、富栄養化が進んだ。赤潮が発生して魚介類が大量に死滅し、東京湾の水産業に大きな被害があった。

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図の1935年は誤りかもしれない。 図では、人間からの窒素は田・畑に向かうが、実はこれは屎尿だけである。間違いは、残飯が鶏・豚・牛に向かう矢印がないことである。残飯は農地の肥料にはならない。家畜のエサになる。赤矢印の部分が必要であろう・・・・・。



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第2問設問B解説

(1)有機肥料
下水道以前 1935年、戦前の東京では、下水道は未整備であり、屎尿が汲み取られて農地まで運ばれ、有機肥料として使われた。東京都市圏の残飯は、家畜農家にとっては、家畜のエサとして重要であった。屎尿や残飯などがムダに廃棄されず、農業に役立っていた。窒素に注目すれば、人間の活動が自然界の窒素の循環に組み込まれていたことになる。東京の大規模公共下水道が建設されたのは、1960年代、高度経済成長期のことである。
戦前、屎尿汲み取り業を「おわいや」と呼んだ。池袋に馬車で運ばれた「こえ桶」を貨物電車(現在の西武池袋線)に載せて所沢方面に運び、沿線の農家に売り渡した。それで今でも西武電車を、ある種の郷愁を込め、「おわいや電車」と呼ぶ人がいるのである。


(2)家畜の飼料
輸入飼料の増加 首都圏の近郊農業地域では、乳牛・豚・鶏が飼育された。農家は残飯を集めて家畜のエサとしていたが、手数がかかるし、家畜の肉質も悪くなる。
戦後は、とうもろこし、大豆、牧草などの飼料作物が大量に輸入された。国内の飼料業者によって、家畜の種類や生育段階に応じたエサがつくられ、さらに栄養分なども補給された。これが、配合飼料あるいは濃厚飼料である。農家は、配合飼料を購入して家畜に与えた。家畜は肉質がすぐれ、高価格で売れた。農家は残飯回収をやめ、飼料を購入した。このため、畜産は残飯処理の役割を果たさず、窒素の循環は断ち切られた。


(3)東京湾の汚染
窒素の東京湾流入 大規模公共下水道で屎尿が処理され、東京湾の目に見える汚染は減った。処理済みの下水にも、微量の窒素が含まれる。また、畜舎からの未処理の屎尿が東京湾に流れ込む。農地の肥料として散布された窒素・燐などが雨水とともに東京湾に流れ込む。東京湾岸の工場排水中にも窒素が含まれていることがある。
一般に水域の汚染を富栄養化というが、東京湾では富栄養化が進んで、高水準でとまった。富栄養のままである。窒素が少し増えたり、海水温度が上がると、植物プランクトンが異常発生して赤潮になり、魚介類を大量に死滅させる。


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第2問設問B終了
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07年第3問設問A 日本の商業都市の人口比較

2007年03月01日 | 東京大学
第3問 日本とアメリカの商業について、設問Aと設問Bに答えなさい。

第3問設問A 次の表は、日本の市について、人口と商業の状況を示したものである。



(1)卸小売比は卸売業販売額を小売業販売額で割った値である。A群とB群を比較すると、卸小売比は人口と関係があることを読み取ることができる。読み取ることができる関係と、その理由を60字以内で述べなさい。

(2)B群とC群を比較すると、人口は同程度なのに、C群では人口一人当たりの小売販売額がB群よりも低い。その理由を、下の【   】の語句を用いて、60字以内で述べなさい。
  【 昼夜人口比率   商業集積   都市圏 】

(3)D群とE群を比較すると、人口も、一人当たり小売販売額は同程度なのに、卸売小売比は大きく異なっている。その理由を、下の【   】の語句を用いて、60字以内で述べなさい。
  【 地場産業  水産物  生産地 】

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第3問設問A解答

(1)卸売小売比は、人口比以上に、商圏の広い大都市に集積する。大都市では情報・金融・交通が発達し、卸売業に有利である。
(2)C群は大都市圏の住宅都市である。昼夜間人口比率では昼間人口比率が低く、商業集積が進まない。中心都市での購買が主体である。
(3)日本では地場産業水産物加工の生産地としての都市は少数である。生産地では小売量が少ないが、市場は全国に広がるので、卸売業の割合は高い。
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第3問設問A解説

(1)都市のイメージ
Aの都市のイメージとして(ア)は福岡市、(イ)は仙台市と見当をつける。人口が多いので小売業販売額が多い。
それ以上に、九州あるいは東北地方の卸売業の中心都市である。卸売業者は、九州あるいは東北地方で小売する商品を、全国から集める。
Bの都市のイメージとして(ウ)富山市、(エ)秋田市のような、地方都市を考える。小売業・卸売の商圏は、せいぜい県内全域である。

(2)大都市圏内の都市
Cの都市が何であるのかは、出題された表からは分からないが、使用指定語句としての都市圏から推測がつく。(オ)は首都圏の市川市(千葉県)、(カ)は大阪圏の枚方市(大阪府)を思い浮かべるとよい。
大都市圏の住宅都市 衛星都市。日中は都心への通勤・通者が多いので、昼間人口は少ない。また、週末には都心の専門店街あるいは郊外の大型ショッピングセンターに出かける。このため、市川市・枚方市のような住宅都市では商業が発展せず、小売販売額が地方都市よりも少ない。

(3)古くからの商業都市
Dの都市のイメージとして、(キ)は五所川原市(青森県)、(ク)白河市(福島県)のような、農村地域の商業都市を考えることができる。五所川原は江戸時代の新田開発後の農産物集散地として賑わったが、明治以降の経済発展からは取り残された。白河は城下町であり、いくつかの工場誘致には成功したが、人口増加に結びつくような工場はなかった。
Eの都市のイメージとして、(ケ)は宮古市(岩手県)、(コ)は燕市(新潟県)があげられる。
水産業都市  宮古市は三陸漁場の中心的水産業都市である。水産物加工業が盛んだが、その商品は宮古市内で消費されるのではなく、全国に販売される。宮古市内には全国に水産物を販売する水産物卸売業ができる。
水産業都市は宮古市のように大漁場が近いか、焼津(静岡市)ように遠洋漁船と首都圏を結びつける巨大倉庫群があるか、である。水産業都市は、漁港数よりもはるかに少なく、全国均等に分布するのではない。
地場産業 新潟県燕市は刃物・金属食器の町である。燕市内で刃物・金属食器の消費量が格別に多いのではなく、日本国内を市場とする。高級品は、世界各地に輸出される。国内外に、金属食器・刃物を輸出する卸売業者が多い。
伊万里(佐賀県、58000人)は陶磁器、結城(茨城県、52000人)は紬が地場産業として全国的に知られている例である。地元で小売りされるよりも、卸売業者によって全国に売られる方が多い。
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07年第3問設問B アメリカ5州の産業

2007年03月01日 | 東京大学
07年東京大学前期入試地理B 第3問設問B 

第3問設問B 次のグラフはアメリカ合衆国5州の製造品出荷額および業種別割合を示す。




(1)図のA~Dは、カリフォルニア州、ミシガン州、テキサス州、ワシントン州のいずれかである。A~Dの州名を答えなさい。

(2)CとDはともに輸送機械工業が発展しているが、それぞれの内容は異なる。どのような違いがあるか、30字以内で述べなさい。

(3)ケンタッキー州では、最近10年間に輸送用機械器具の出荷額および割合が高くなった。これは日系自動車工場の進出が大きな原因である。ケンタッキーとその周辺の州における、日系自動車工場の立地の特徴について、下の【  】内の語句を全部使い、90字以内で述べなさい。
  【 デトロイト  部品  労働力 】

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第3問設問B解答
(1)A-カリフォルニア州 B-テキサス州 C-ミシガン州 D-ワシントン州
(2)C-自動車産業が中心 D-航空機産業が中心
(3)日本の自動車企業はケンタッキー州のような低賃金のサンベルトに進出した。当初、部品は日本から輸入したが、現在は現地の関連工場から調達する。アメリカの自動車産業も北部デトロイトから、低賃金のサンベルトに移転が多くなった。
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第3問設問B解説

(1)(2)カリフォルニア州とテキサス州は、サンベルトとして最も工業生産ののびた地域である。
A-カリフォルニア州。地中海性気候と関連する食品加工、シリコンバレーを中心とする電気・電子工業が発達している。
B-テキサス州。内陸油田とメキシコ湾岸油田があり、石油化学工業が発達している。また、ダラスを中心とするハイテク工業地域が、シリコンプレーンである。
C-ミシガン州。世界的な自動車工業都市はミシガン州のテトロイトである。ミシガン州は、輸送機器(自動車)の生産割合が高い。
D-ワシントン州。シアトル社は世界最大の航空機メーカーボーイング社の工場がある。スポケーンでアルミニウムの生産が多いことが大きな立地条件になっている。
産軍複合体 コンピューター産業、航空機産業、石油化学工業など、アメリカの国際競争力の強い産業は、軍事用に税金を投入して研究開発が進められ、民間に需要があると判断した時点で、民間用として世界中に売られる。アメリカ政府が国際的独占企業を、外交・軍事政策として支援し、世界支配を達成した。コンピューターのマイクロソフト、航空機のボーイング、石油のエクソンなど、いずれもアメリカ政府が一体となり、国際市場を制覇した。

(3)ケンタッキー州の工業化
サンベルト 北緯37度以南がサンベルトである。ケンタッキー州は綿花地帯であった。土地・労働賃金が安いし、州政府が進出企業に優遇税制を適用した。保守的風土があり、労働組合の活動を州法で規制した。日本企業は国際摩擦の解消のためにアメリカ進出を考えていた時に、進出しやすい条件が南部各州から示された。日本企業の多くは南部サンベルトを中心に進出し、現地生産が増加した。
北部スノーベルトがアメリカ企業で飽和状態になった時、アメリカ企業にとってもサンベルトは新しい投資先になった。
ケンタッキー州はデトロイトから近く、アメリカ企業が新しい工場に部品を輸送することも容易であった。





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