2007年東大2次地理B
第1問設問B 北ヨーロッパの発電などに関連し、次の表を参照し、各問いに答えなさい。
(1)デンマークとフィンランドでは火力発電の割合が高い。両国で火力発電の燃料として使われる資源名を、2つ答えなさい。
(2)デンマークとフィンランドでは「その他」として、家畜糞尿・木くずなどのバイオマスが発電の燃料として利用される。バイオマスによる発電が、化石燃料による発電よりも有利な点を60字以内で述べなさい。
(3)デンマークでは「その他」の中に、バイオマス以外にどのようなエネルギーを利用した発電が含まれるのか。最大のものを1つ書きなさい。
(4)デンマークとノルウェーの発電量の構成には、著しい違いがある。その違いを生み出している自然環境の特徴を60字以内で述べなさい。
(5)アイルランドも「その他」のエネルギーとは何か。また、どのような自然環境にあるためと考えられるか。30字以内で述べなさい。
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第1問設問B解答
(1)石炭、天然ガス
(2)廃棄物の有効活用になり、環境への悪影響を削減できる。供給量が安定して価格変動が少なく、発電コストが一定である。
(3)風力発電
(4)デンマークは偏西風帯の低地で、風力発電に適している。ノルウェーは山地が多く、急流河川の水力発電が盛んである。
(5)地熱発電。海嶺の陸地化部分の島であり、火山活動が盛んだから。
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第1問設問B解説
(1)火力発電
石炭火力発電所 世界的には火力発電は石油火力が中心だが、コストの低い石炭火力が増えている。また、石炭・石油の価格を比較しながら、安い方の燃料を選んで使う発電所も多い。石炭・石油を使う火力発電所は防止設備の程度にもよるが、温室効果ガスとしての二酸化他炭素が放出される。酸性雨の原因となる硫黄酸化物・窒素酸化物も放出される。
天然ガスは高価だが、環境を汚染しないクリーンエネルギーである。先進国の火力発電所で利用される。
デンマークでは1973年の第1次石油危機以降、コストの高い石油火力発電を減らし、低コストの石炭火力発電と、ウラン燃料の安定確保ができる原子力発電に転換を進めた。石炭火力発電所は増設されたものの、スリーマイルとチェルノブイリの原発事故で世論が変わり、原発建設計画は中断された。
デンマークでは原発の代わりに、クリーンエネルギーの天然ガス発電、無尽蔵エネルギーの風力発電を増強した。デンマークは北海油田から石油と天然ガスを採掘し、原油を輸出し、国内の火力発電は安価な石炭と、クリーンな天然ガスが主体である。
フィンランドの発電源内訳は石炭火力22%、天然ガス13%であり、石油火力の割合は5%以下である。石炭火力発電はコストが低く、安定的に国内外から供給できる。
***なおこの解答(速報)は、河合塾は石炭・天然ガス、駿台は石油・天然ガスである。河合塾が正しい。
(2)バイオエネルギー
アルコール自動車 バイオエネルギーは有機物の一次利用か、廃棄物のリサイクルである。低コストであるし、環境保護に役立つ点で意義がある。
しかし、エネルギー総量に占める割合は小さい。将来、化石燃料が枯渇して異常高値になるとか、新たな手段でバイオエネルギーの大量生産が可能になれば、重要なエネルギーとなる可能性はあるが、現在は補完的な役割を果たすだけである。
1980年代にブラジルでサトウキビのアルコールで走行可能な自動車が量産された。ブラジル政府がサトウキビのアルコールへの加工に積極的であった。アルコール自動車にも税制上の優遇措置を講じたが、エンジンの性能は低くアルコール自動車は普及しなかった。次の手として、ブラジル政府は、ガソリンにアルコールを混合することを考えている。
(3)風力発電
風力発電 風力発電は無尽蔵の自然エネルギーを利用できる。デンマークでは危険な原子力発電を中止し、風力発電の比率を高めた。デンマークの発電総量の12%が風力発電である(2003年)。風力発電はドイツとデンマークで盛んである。
風力発電には欠点も多く、なかなか普及が進まない。風力・風向は絶え間なく変化するので、電流・電圧も変化し、安定供給ができない。大型蓄電池に一度蓄えてから供給する方法もあるが、その場合の電力ロスが大きい。
広い土地に多数の風力発電機を設置し、発電ゼロのない状態にしている。このため、風力発電機は牧場、湖、浅海などに集中設置され、立地可能地域には限りがある。風力が2~20m/secという制約もある。
これからの研究によってはおおいに発展する可能性があるが、電力会社は投資の短期的回収のために原子力発電の復活を急ぎ、風力発電の進歩発展への投資を減らしている。
(4)水力発電
水力発電 ノルウェー、カナダ、ブラジルは水力発電の割合が高い。一度ダムを建設すれば、燃料代が非常に安い、という利点がある。
ノルウェーはスカンジナビア山脈からの急流河川が多いので、水力発電に適している。水力発電はエネルギーがほとんど不要であり、発電コストが低い。
集落に電力を供給するような、小型の水力発電所を数多く設置している。日本・ブラジル・アメリカのような、巨大ダムによる水力発電ではない。
(5)地熱発電
アイスランド アイスランドは大西洋中央海嶺の一部、広がる変動帯にある。海底の火山山脈の一部が陸地化した島である。島そのものが2分されている最中である。
島全体が多くの火山の集合体であり、地熱を大量に得ることができる。高温の水蒸気の噴出するエネルギーを利用して、発電用タービンを動かすのである。
世界中の地熱発電に共通することだが、水蒸気だけが噴出するのではなく、水蒸気には火山に含まれるような有害・有毒物質が含まれて、その無害化処理工場が必要である。地熱発電のエネルギーは地下から得られるが、処理工場の運転費用まで含めてコスト計算をすると、地熱発電のコストはタダではない。
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07年第1問設問B終了
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第1問設問B 北ヨーロッパの発電などに関連し、次の表を参照し、各問いに答えなさい。
(1)デンマークとフィンランドでは火力発電の割合が高い。両国で火力発電の燃料として使われる資源名を、2つ答えなさい。
(2)デンマークとフィンランドでは「その他」として、家畜糞尿・木くずなどのバイオマスが発電の燃料として利用される。バイオマスによる発電が、化石燃料による発電よりも有利な点を60字以内で述べなさい。
(3)デンマークでは「その他」の中に、バイオマス以外にどのようなエネルギーを利用した発電が含まれるのか。最大のものを1つ書きなさい。
(4)デンマークとノルウェーの発電量の構成には、著しい違いがある。その違いを生み出している自然環境の特徴を60字以内で述べなさい。
(5)アイルランドも「その他」のエネルギーとは何か。また、どのような自然環境にあるためと考えられるか。30字以内で述べなさい。
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第1問設問B解答
(1)石炭、天然ガス
(2)廃棄物の有効活用になり、環境への悪影響を削減できる。供給量が安定して価格変動が少なく、発電コストが一定である。
(3)風力発電
(4)デンマークは偏西風帯の低地で、風力発電に適している。ノルウェーは山地が多く、急流河川の水力発電が盛んである。
(5)地熱発電。海嶺の陸地化部分の島であり、火山活動が盛んだから。
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第1問設問B解説
(1)火力発電
石炭火力発電所 世界的には火力発電は石油火力が中心だが、コストの低い石炭火力が増えている。また、石炭・石油の価格を比較しながら、安い方の燃料を選んで使う発電所も多い。石炭・石油を使う火力発電所は防止設備の程度にもよるが、温室効果ガスとしての二酸化他炭素が放出される。酸性雨の原因となる硫黄酸化物・窒素酸化物も放出される。
天然ガスは高価だが、環境を汚染しないクリーンエネルギーである。先進国の火力発電所で利用される。
デンマークでは1973年の第1次石油危機以降、コストの高い石油火力発電を減らし、低コストの石炭火力発電と、ウラン燃料の安定確保ができる原子力発電に転換を進めた。石炭火力発電所は増設されたものの、スリーマイルとチェルノブイリの原発事故で世論が変わり、原発建設計画は中断された。
デンマークでは原発の代わりに、クリーンエネルギーの天然ガス発電、無尽蔵エネルギーの風力発電を増強した。デンマークは北海油田から石油と天然ガスを採掘し、原油を輸出し、国内の火力発電は安価な石炭と、クリーンな天然ガスが主体である。
フィンランドの発電源内訳は石炭火力22%、天然ガス13%であり、石油火力の割合は5%以下である。石炭火力発電はコストが低く、安定的に国内外から供給できる。
***なおこの解答(速報)は、河合塾は石炭・天然ガス、駿台は石油・天然ガスである。河合塾が正しい。
(2)バイオエネルギー
アルコール自動車 バイオエネルギーは有機物の一次利用か、廃棄物のリサイクルである。低コストであるし、環境保護に役立つ点で意義がある。
しかし、エネルギー総量に占める割合は小さい。将来、化石燃料が枯渇して異常高値になるとか、新たな手段でバイオエネルギーの大量生産が可能になれば、重要なエネルギーとなる可能性はあるが、現在は補完的な役割を果たすだけである。
1980年代にブラジルでサトウキビのアルコールで走行可能な自動車が量産された。ブラジル政府がサトウキビのアルコールへの加工に積極的であった。アルコール自動車にも税制上の優遇措置を講じたが、エンジンの性能は低くアルコール自動車は普及しなかった。次の手として、ブラジル政府は、ガソリンにアルコールを混合することを考えている。
(3)風力発電
風力発電 風力発電は無尽蔵の自然エネルギーを利用できる。デンマークでは危険な原子力発電を中止し、風力発電の比率を高めた。デンマークの発電総量の12%が風力発電である(2003年)。風力発電はドイツとデンマークで盛んである。
風力発電には欠点も多く、なかなか普及が進まない。風力・風向は絶え間なく変化するので、電流・電圧も変化し、安定供給ができない。大型蓄電池に一度蓄えてから供給する方法もあるが、その場合の電力ロスが大きい。
広い土地に多数の風力発電機を設置し、発電ゼロのない状態にしている。このため、風力発電機は牧場、湖、浅海などに集中設置され、立地可能地域には限りがある。風力が2~20m/secという制約もある。
これからの研究によってはおおいに発展する可能性があるが、電力会社は投資の短期的回収のために原子力発電の復活を急ぎ、風力発電の進歩発展への投資を減らしている。
(4)水力発電
水力発電 ノルウェー、カナダ、ブラジルは水力発電の割合が高い。一度ダムを建設すれば、燃料代が非常に安い、という利点がある。
ノルウェーはスカンジナビア山脈からの急流河川が多いので、水力発電に適している。水力発電はエネルギーがほとんど不要であり、発電コストが低い。
集落に電力を供給するような、小型の水力発電所を数多く設置している。日本・ブラジル・アメリカのような、巨大ダムによる水力発電ではない。
(5)地熱発電
アイスランド アイスランドは大西洋中央海嶺の一部、広がる変動帯にある。海底の火山山脈の一部が陸地化した島である。島そのものが2分されている最中である。
島全体が多くの火山の集合体であり、地熱を大量に得ることができる。高温の水蒸気の噴出するエネルギーを利用して、発電用タービンを動かすのである。
世界中の地熱発電に共通することだが、水蒸気だけが噴出するのではなく、水蒸気には火山に含まれるような有害・有毒物質が含まれて、その無害化処理工場が必要である。地熱発電のエネルギーは地下から得られるが、処理工場の運転費用まで含めてコスト計算をすると、地熱発電のコストはタダではない。
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