東京大学入試地理B

東京大学入試問題(前期)地理Bの問題・解答・解説。2006年・2007年の2年分。

東大地理B第1問設問A

2006年09月14日 | 東京大学
東京大学2006年前期入試地理B第1問設問A

第1問 南アメリカの自然と産業について、各問いに答えよ。
設問A 図1のア~エは、図2のa~d(各国の首都)の月平均気温と月降水量の年変化を示す。
(1)ア~エは、a~dのいずれか。
(2)イの判断理由を60字以内で書け。


   

   


第1問設問Bに続く

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解答
第1問
設問A(1) ア-d イ-a ウ-b エ-c
(2)年中13℃で,気温年較差がほとんどない。赤道直下の高山と考えられる。aは赤道エクアドルの首都、高山都市キトである。(58字)
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解説
第1問設問A

1.気候型-都市
(ア)地中海性気候-(d)サンチャゴ(チリ)
(イ)高山気候-(a)キト(エクアドル)
(ウ)砂漠気候-(b)リマ(ペルー)
(エ)高山気候-(c)ラパス(ボリビア)


2.グラフ(ア)はどこの気候か。
◆理科年表2000年版  376-Santiago 期間1951~80年
   年平均気温14.3℃  年降水量265.6mm 
    14.3×20=286
   → この場合の気候はステップ気候BS
◆理科年表2002年版 180-Padahuel 期間1971~2000年
   年平均気温13.8℃  年降水量300.3mm
        13.8×20=276
  → この場合の気候は地中海性気候Cs
◆理科年表の比較
    Santiago 南緯33.26度。西経70.41度。高度520m
    Padahuel 南緯33.23度。西経70.47度。高度474m
Padahuelは北に300m、西に1000m、高度で46m移動した新観測点である。Santiago市内であり、旧観測点の気候とほとんど同じであろう。
しかし,旧観測点がステップ気候,新観測点が地中海性気候であり、なかなか同じとは考えにくい。
観測期間は,旧観測点が1951~1980年、新観測点が1971~2000年である。1971~80年はどちらでも観測されている。この重なった10年間に、新旧2地点で気温・降水量にどれだけの差があるのか、知りたいものであるが、この頃のチリは軍事政権の独裁が続いていて、正確な気象観測をし、その記録保存をするだけの人員が確保されていたのかどうか・・・・。
新旧2観測点のデータが正しければ,Santiago市内にステップ気候と地中海性気候の境界がある、と考えることができる。
あるいは1970年以降、Santiagoの降水量は増加した、とも考えられる。
グラフ(ア)はPadahuelのデータにもとづくグラフである。6月の気温と降水量から判定できる。したがって、(ア)は地中海性気候CsのSantiagoとなる。

3.グラフ(イ)はどこの気候か。
気温年較差が非常に小さいから、赤道直下の高山気候と判断できる。エクアドルEquadorは赤道の意味、首都は世界遺産に街全体が指定されたキトである。
雨季が2回ある。秋分・春分の頃の年2回、太陽が真上にあり、対流活動が盛んになり、スコールがあるためである。
◆理科年表2000年版。366Quito(1961~81)
00.09S 78.29W 高度2812m 
年平均気温13.3℃(13.2~13.5℃)、降水量1003.2mm
◆理科年表2002年版。177Quito Aeropuerto(1971~ 82)
  00.08S 78.28W 高度2794m
年平均気温13.7℃(13.4~13.9℃) 、降水量1044.7mm
キト空港(Quito Aeropuerto)が新観測点。経緯度のデータから西に100m移動したことが分かる。高度は18mほど下がった。平均気温は0.4℃ほど高くなった。
4月が最も降水量が多いことから、出題されたグラフはキト空港の観測値にもとづくことが分かる。
観測期間がキトは1961~1981年であるが、キト空港は1971~1982年である。2地点の観測期間には10年の重複がある。この重複期間のデータにはほとんど差がないはずである。


4.グラフ(ウ)のペルーは海岸砂漠である。
ペルー砂漠とアタカマ砂漠は、海岸砂漠である。寒流のペルー海流がチリとペルーの海岸を北上する。低温の海流のため、海面では大気下層が冷やされる。午前中は霧はできるが、降水量の記録となるほどの雨にではない。植物も生育しにくい。
寒流によってできる海岸砂漠は、ペルー海流のペルー砂漠・アタカマ砂漠以外に、アフリカ南西岸を北上するベンゲラ海流(寒流)が大西洋岸にナミブ砂漠をつくる。

5.ボリビアの首都はラパスか。
16.31S、68.11w、高度4058mである。緯度からは熱帯に属するはずだが、高度が4.000mを越え、最寒月平均気温が6.4℃であり、熱帯気候にはならない。7月の冬が乾季、1月の夏が雨季だから、Cwの区分でもよい。高山気候Hでもよい。ラパスはスペイン語の平和の意味。実質的にはラパスがボリビアの首都である。
ボリビアの憲法上の形式的首都は古都スクレ(下の写真)である。スペイン風の白い町並みが世界歴史遺産に指定されている。首都としての機能は最高裁判所があるだけである。


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第1問設問Aの総括
東大の頻出問題だが、詳細に検討すると、観測データが厳密には正しくなかったり、首都が2つあったりする。しかし、この程度のことには、入試ではこだわらない方がよい。結果的には解答が同じになるからである。
















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