2006年地理B第5問
第5問 ラテンアメリカについて、各問いに答えよ。
問1 地図中のABCの河川について、該当する説明を、①~⑤から選べ。
① 上流にはグランチャコといわれる草原があり、粗放的な牧畜が行われている。下流域はパンパといわれる草原であり、商業的な農牧業が発展している。
② 流域の大部分が森林でおおわれ、流域面積は世界最大である。本流・支流沿いには農産物・鉱産物などの輸出港があり、大型船舶が航行している。
③ 源流となる上流の支流域は多雨地帯である。中流・下流の砂漠でも流量の多い河川であり、外来河川といわれる。河口付近は原油産地である。
④ 流域にはリヤノといわれる草原地帯が広がる。下流部分では牧畜業が盛んだが、外国資本による鉄鉱石の採掘も行われている。
⑤ 河口部分の2国は、先住民インディオと移住して来た白人との混血メステゾが多い。ラテンアメリカでは最もメスチゾの割合が高い地域である。
問2 下図は南アメリカの1月と7月の降水量分布図である。その説明として、不適当なものを、①~④から選べ。
① K地点の月降水量は、1月に200mm以上、7月に100mm以上である。ここで1年中降水量が多いのは、赤道低圧帯の影響である。
② L地点の月降水量は、1月も7月も100mm未満である。ここで1年中降水量が少ないのは、沖合を流れる寒流と中緯度高圧帯の影響である。
③ Mの月降水量は1月に100mm以上、7月に100mm未満である。ここで1月に降水量が多いのは、前線や低気圧の影響である。
④ Mの月降水量は1月に100mm未満、7月に100mm以上である。ここで7月に降水量が多くなるのは、偏西風帯が北上するためである。
第5問は続く
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解答
問1 A④ B② C①
問2②
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解説
問1
① C:ラプラタ川。
上流ピルコマヨ川とパラグアイ川にはさまれたパラグアイとアルゼンチンに一部は、気候がAw・Cwである。夏の雨季には牧畜の盛んなグランチャコ(草原地帯)が湿原になる。牧畜は高地に移動する。
下流域はパンパといわれる温帯草原であり、商業的混合農業が盛んである。
② B:アマゾン川。
流域の大部分が熱帯雨林セルバにおおわれる。19世紀のマナウシは天然ゴムの積出港としては世界最大であった。
③------該当なし。
アフリカのサハラ砂漠を流れるニジェール川。源流のギニア・シエラレオネ・リベリアは降水量が非常に多いため、の支流域は多雨地帯である。中流・下流のサハラ砂漠でも流量の多い河川である。ニジェール川は外来といわれる。ニジェール川河口付近のナイジェリアは原油産地である。
④ A:オリノコ川。
上流はベネズエラとコロンビアの熱帯草原リヤノを、東に向かって流れ、肉牛放牧地帯になっている。ベネズエラのサバナを東に流れる。ベネズエラはOPEC加盟の産油国でマラカイボ湖底油田が有名であったが、オリノコ川河口付近で油田が発見され、採掘が始まった。また、アメリカ企業がオリノコ川流域て鉄鉱石を発見(エルパオ)、アメリカに輸出している。
ベネズエラは原油がアメリカとオランダの支配下にあることに大きな不満があり、中国への石油量を増やしている。
⑤ Cの説明だが、メスチゾの多いことが誤り。Cのラプラタ川河口には、左岸がウルグアイ、右岸がアルゼンチンである。ウルグアイの白人割合は91%であり、先住民インディオとの混血メスチゾは8%である。アルゼンチンは白人95%、メスチゾは3%である。
ラプラタ川河口はパンパといわれる温帯草原であり、スペイン人が先住民インディオを追放してヨーロッパ型の混合農業を展開した。アルゼンチンもウルグアイも典型的な白人国家である。
問2 赤道、南回帰線、北回帰線を記入するとわかりやすくなる。赤道付近は年中多雨、回帰線付近は夏の乾燥する傾向がある。
1月は南半球は夏である。7月は南半球は冬である。太陽は赤道より北にある。
①正しい。Kはペルーのイキトス。アマゾンの船舶の遡及限界であり、熱帯雨林セルバが広がる。年中多雨であるのは、赤道低圧帯の強い影響で、ほぼ毎日スコールがあるためである。
②誤り。赤道直下のため、亜熱帯低圧帯(中緯度高圧帯)の影響は誤り。また沖合を流れるには南赤道海流(暖流)である。降水量が冬にやや少ないのは、南東貿易風が吹いた時、地形的に風下になるからである。
③正しい。Mは年中多雨だが、それでも夏に多く、冬はわずかに少ない。夏は移動性低気圧が多いからである、
④正しい。Nはチリ南部の地中火星気候Csの地域である。夏1月は亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響と、夏には冷たいペルー海流(寒流)の影響で乾季である。ペルー海流は寒流だが、チリ南部の海水温は年中10℃であり、冬には暖かく感じられる。冬7月には偏西風の北上とペルー海流(暖かい寒流)の影響で、多雨域が広がる。
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寒流の影響について、少し詳しく説明。
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ペルー海流(寒流)の影響。
海水温は年中10℃である。南極に近い地域では暖流のような暖かさである。
中・低緯度ではペルー海流の海水温は、常に気温よりも低いから、霧ができて太陽光がささない。上昇気流ができず、雨が降らない。このため、アタカマ砂漠、ペルー砂漠のような海岸砂漠ができる。さらに亜熱帯高圧帯が夏の乾燥を加速する。
10年か15年の間に2、3年、ペルー海流の水温が上昇し、海岸砂漠に雨を降らせることがある。砂漠が草原や花園になる。エルニーニョ現象といわれ、世界の異常気象と密接につながっている。
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カリフォルニア海流(寒流)の影響。
北アメリカを南下するカリフォルニア海流は、寒流である。カリフォルニア沿岸の海水温は冬12℃、夏16℃でる。
カリフォルニア海流は冬は気温よりも高いので雲をつくり、雨を降らせる。冬が雨季である。
夏は気温よりも水温が5~10℃も低いので、午前中は低層に霧ができて日射をさえぎる。昼には霧が解消するが、海水温が低いために雨雲はできず、夏は晴天が続く。夏は乾季である。夏が乾季の他の要因として、夏だけは亜熱帯高圧帯の影響があるということである。
カリフォルニアは夏は乾季、冬は雨季の地中海性気候Csである。
カリフォルニア海流、北赤道海流、黒潮、北太平洋海流、カリフォルニア海流というように、北太平洋では名前を変えて海流が一回りする。これが環流である。大西洋にも環流が存在する。