きじとら小部屋

ねこちぐら きじとら猫の個人部屋

題詠100首一覧

2006-11-04 08:43:33 | 題詠100首blog
題詠100首blog投稿歌をまとめました。
自分の歌が100首並ぶのってすごいなー。

001:風  
行き先は気の向くままにどこへでも私を乗せた風力鉄道
002:指  
荒れ果てた小手指ヶ原(こてさしがはら)古戦場 武士(もののふ)たちの無念渦巻く
003:手紙
今日もまた長い手紙をしたためる投函場所は引き出しの奥
004:キッチン
なにもかもグルメな君の舌のため吾がキッチンは戦場と化す
005:並
電球の小さな灯りをともすだけ微笑むふたり並列つなぎ
006:自転車
自転車の後輪脇のフレームにあの日の嘘が隠されている
007:揺
気持ちなど振り子のように揺れるもの君の背中が教えてくれた
008:親
大声で「おはなしゆびさん」歌うとき太っちょなのはいつも親指
009:椅子
誰よりも椅子取りゲームは強かった君の隣も奪ってみせる
010:桜
また会える瞼の奥の芝桜ピンクの絨毯待っているから
011:からっぽ
おやすみのひはぬけがらになってみるすっからかんのからっぽあたま
012:噛
「噛み合わせ、ずれていますね」そんなこと初対面では言われたくない
013:クリーム
いつだって火傷するんだたっぷりとクリーム浮かぶウインナコーヒー
014:刻
行き先は猫の尻尾にきいてくれ時刻表など持たない旅へ
015:秘密
路側帯はみ出しているわが恋は秘密じゃなくて機密レベルで
016:せせらぎ
音もなく流した涙が筋となり大河に注ぐせせらぎとなる
017:医
柔らかな春の陽ざしと過ごす午後 医学辞典を枕に眠る
018:スカート
純白のスカートに風孕ませてあなたと蛙つかまえにゆく
019:雨
すっぽりとふたりを包む黒傘と雫を想う 雨の匂いに
020:信号
タブレット手渡す仲でいたいよね信号なんて味気ないから
021:美
昼休み美術教師が棲む部屋でテレビ観ながらラーメンすする
022:レントゲン 
被写体がはにかむことも許されぬ何故にあなたはレントゲン技師
023:結
長年にわたる恋愛裁判が桜の下で今宵結審
024:牛乳
「牛乳は腐るとヨーグルトになる」言った翌日腹こわす君
025:とんぼ
喜びを告げる電話に夜明け前始発を待たずとんぼ返りで
026:垂
華やかなときは短く夏空に枝垂れ柳の未練が残る
027:嘘
玉葱の皮むき作業するように剥がしても嘘剥がしても嘘
028:おたく
イヌにネコ飛脚に鳥にカンガルーおたくの国の宅配戦士
029:草
蒲公英の綿毛吹き吹き草の上 金蛇たちと握手を交わす
030:政治
君という堅固な城を落とすにはまだ政治的手腕がたりぬ
031:寂
寂しさと気楽さをスパイスにして煮込んだカレーひとりで食べる
032:上海
水底の青に染まってしまいたい私の頭上海猫が啼く
033:鍵
新しい鍵を手にしたその日から開くことないあなたの扉
034:シャンプー
「シャンプーは使わない主義」あなたからふうわり香る化粧石鹸
035:株
一株の苺が徐々に殖え続け甘い香りが埋め尽くす庭
036:組
ゆっくりと腐敗が進む組織だが生まれ変わるか二〇〇七年
037:花びら
真白なマーガレットの花びらを嫌い、嫌いと毟り続ける
038:灯
行灯の油めあてに忍び寄る桃色の舌ちろりちろりと
039:乙女
ひとりではどうにもならない現実に抗いつづけ乙女は孤高
040:道
交わらずされど離れることもなく私は歩道あなたは車道
041:こだま
お互いを確かめあったささやきが今も微かにこだましている
042:豆
ほころびは直さないとね縫い目から涙の数だけこぼれた小豆
043:曲
黒板の忘却曲線ながめつつ彷徨いあるく反復の海
044:飛
今ごろは天使が抱かれているんだね 私が飛びこめなかった胸に
045:コピー
私を広告塔にする君は毎日ちがうコピーをつける
046:凍
初めてのデートの記憶はガラガラに空いたスタンド冷凍みかん
047:辞書
一冊の辞書を片手に明日からお城の塔に幽閉される
048:アイドル
学ランでグランドピアノを弾くきみの指先だけがアイドルだった
049:戦争
恋愛は戦争だよね君だって僕の前ではA級戦犯
050:萌
やわらかな色で心を染めてゆく水彩絵の具「浅葱」と「萌葱」
051:しずく
もやもやの気持ち両手でかき集めできたしずくを小瓶に詰める
052:舞
舞い落ちる木の葉が積もるその下で私はそっと土になりたい
053:ブログ
ブログなら逃げ切れるかと思ってたトラックバックで追うのはずるい
054:虫
あなたからもう逃げられぬ団子虫ころりころりと手のひらの上
055:頬
頬紅のつけ方すらも忘れたが触れた手のひら忘れられない
056:とおせんぼ
少しだけ意地悪をしたとおせんぼ動けないのは私の方だ
057:鏡
くるくると模様を変える万華鏡 ひとの心に永遠はない
058:抵抗
感情の抵抗測る回路計わずかに針が振れる瞬間
059:くちびる
あまりにも子供じみてる言い訳を紫煙燻らせ許すくちびる
060:韓
お小言の真っ最中に数えてる韓国海苔の塩の粒々
061:注射
注射針刺されぬように皮膚の下 血管たちは息をひそめる
062:竹
今のうち育つがいいさ青竹よ根が同じなら枯れるは一緒
063:オペラ
白球をグラブでつかむ君の背をオペラグラスで追いかけている
064:百合
鬼百合の花びらそっとふくらまし手のひらの上はじける記憶
065:鳴
運命が身体の脇をすり抜ける鳴りそこなったシンバルひとつ
066:ふたり
ひとりよりふたりの方が淋しいと沈黙だけが語り続ける
067:事務
はじまりも終わりのときも事務的に戸籍係の銀縁眼鏡
068:報
夏物の服と一緒にたたみ込む報われなかった想いをひとつ
069:カフェ
均衡を保てぬ夜が怖いからプース・カフェなど飲めないふたり
070:章
腕章と委員バッジが重たくて若輩者は肩こり頭痛
071:老人
広告の裏に筆ペン走らせて歳時記めくる老人の指
072:箱
大切なウサギを箱に詰める午後 引越し前は犯罪めいて
073:トランプ
トランプの札を配ってゆくように配属される新入社員
074:水晶
水晶のおんどり達が肩並べ集うひよこの結婚式に
075:打
直球で攻めるばかりじゃ能がない 打たせて捕るがあなたの手口
076:あくび
眠たげなあくび顔すら愛しくて人差し指をそっと突っ込む
077:針
どこまでも樹々の緑が深すぎて二度と出られぬ針葉樹林
078:予想
青空をちぎれた雲が走り去る明日の自分は予想できない
079:じゃがいも
じゃがいもの芽をていねいに取り除く 小さいけれど毒があるから
080:響
幾度も響いてしまったことだろう 三十一文字(みそひともじ)が放つ調べに
081:硝子
絶望と孤独を抱え歩き出す曇り硝子の向こうの未来
082:整
今はまだひとりにしといて欲しいから「調整中」の貼り紙をする
083:拝
心だけ置き去りにして旅に出る「拝島行」の電車に乗って
084:世紀
滅亡を宣告された世紀末あまりに長い余生を過ごす
085:富
助手席の君の寝顔にささやいた「窓の向こうに富士が見えるよ」
086:メイド
何着もレディーメイドを試したが私の身体に合う恋はない
087:朗読
朗読のおだやかな声こだまして盲人たちの世界広がる
088:銀
「さようなら、路銀の足しに」と渡されたメイプルリーフ金貨がひとつ
089:無理
無理ならば無理でよかった手に入れたものを抱えて途方に暮れる
090:匂
おひさまの匂いにそっとくるまって秋の夜長を待ち受けている
091:砂糖
お砂糖を煮詰めたような関係はすでに冷たく固まっている
092:滑
滑らかに口を飛び出す言葉など薄味すぎて信用できぬ
093:落
ピーナッツ南京豆に落花生どう呼ばれても私は私
094:流行
ランドセル背負って歌う流行歌 二十年後も全く同じ
095:誤
難解なあなたのページ繰ってゆく 読めば読むほど誤読がつづく
096:器
感情がにわかに数値上げてゆく測定不能を示した計器
097:告白
「告白」と「告発」きっと同じこと どちらも後に引かない覚悟
098:テレビ
一台のテレビを奪う烈しさを知らぬ私は電器屋長女
099:刺
平穏な暮らしを抱え生きている うなじの傍に見えない刺客
100:題
「宿題を前の日までに終えること」大人の今もできない課題


詠み逃げ大賞@題詠blog2006

2006-11-03 20:48:20 | その他
友達のワンコ山田さんのブログ、歩道を走る自転車のこども
「詠み逃げ大賞@題詠blog2006」を開催中です。

これは、「素直にお題を詠みこまなかった歌」を集めて
大賞を決めちゃおうという企画です。

例:水底の青に染まってしまいたい私の頭上海猫が啼く
                    (きじとら猫 032:上海)

このように普通に「上海」と詠みこまず
こそっと紛れさせていたり、
お題の言葉を他とは違った使い方で
詠みこんでいる歌が選歌の対象となります。

ここでいう「詠み逃げ」とは、
タイトルに「逃げ」という言葉を使ってはいますが
「固定されたイメージを払拭し、全く別の言葉としてとらえる」
という言葉についての知識とセンスを要求されます。
技術としてはかなり高度なものかと思われます。
(私のは単なる「逃げ」ですが^^;)

実は私、きじとら猫も実行委員として参加中です。
(手伝いたいときしか手伝わない身勝手な実行委員ですが

ひとりでも多くの方の参加をお待ちしております。