パイナガマビーチの突き当たり、一番、
隅っこに、今もトーチカが残っている。
戦時中、日本軍が米軍の上陸に備えて作った
もので、銃を据えていた場所。
20年前、ビーチでよくジェットスキーをして
遊んでいた。
そのときにこのトーチカの前に立って、いつまでも
眺めていた老人を覚えている。もしかしたら、
この中で銃を構えていた人かも知れない。
今なら、色々と聞きたいことがあったが、あの頃は
このトーチカのことさえ知らなかった。
62年前、この中で銃口を向けていた人がいたことは、
まぎれもない事実だ。きっと暑かったろう、蚊にも
食われただろう、満足に食料さえなかったと聞く。
ビーチに来てここに座って海を眺めるたびに、62前、
この中にいた人が何を考えていたのか考える。
サイパン島が玉砕して、硫黄島が玉砕し、次は
本土決戦の防波堤となる沖縄で、もう戦争に勝てる
なんて思わなかったと思う。
まして生き残れるなんて思わなかったに違いない。
今のビーチを想像できただろうか?
夜中に隠れて酒を飲む高校生、裸のような水着で
日光浴をする女性、大きな排気音をあげて海の上を
滑走するジェットスキー彼らの考えた未来の
日本の姿とは大きくかけ離れているだろう。
現代の姿を知っていたなら・・・・
それでも敵とぶつかって死ぬしかなかっただろう。
このトーチカを見ると今でも銃口が向いている
ように見える。
