偶然にも再会したあつ子と僕は、電話番号を交換し、次に会うことを約束した。
最初は、コーヒーショップで会った。
2度目は、映画を見に行った。あつ子が買って来てくれたマックのハンバーガーを齧りながら映画を見た。
3度目に、僕の馴染みのBARに行った。
あつ子は、ジャージ姿が多かった高校のバスケ部のあつ子ではなかった。
綺麗にお化粧をし、少しショート丈のスカートに白いブーツを合わせた彼女はとてもファッショナブルで、何の取り柄もないネイヴィーのブレザー姿の自分が恥ずかしいほどだった。
BARでは寺尾聡の「Reflections」が流れていた。
「私、寺尾聡好きなんだ」あつ子が言った。
「Kevin君、寺尾聡に似ているよね」
「えっ・・・」
そんなこと言われたのは初めてだった。
「Kevin君は、高校時代からずっと私の王子様だったんだよ」
「皆でラブ・ホテル行ったことを覚えている?私、Kevin君と一緒になってラッキーだと思った。でも、Kevin君といったら怒ったように黙ったままで、私、すごく寂しかったんだよ」
そう言って、僕の目を覗き込んだ。
その時、僕はカンパリ・ソーダを飲んでいた。
カンパリのグラスを空けてしまう前に、僕はあつ子に酔ってしまった。
そして…、
僕達は、恋に落ちた…
二人は猛スピードで恋に落ちた。それは真実であったが、同時に二人の錯覚でもあった。
あつ子は僕の向こうに別の男性を見ていた。そういう僕も、あつ子の向こうに別の女性を見ていた。
あつ子は、僕のことを王子様と言った。しかし、あつ子には別の王子様が居た。その王子様とは色々な訳があって、別れた。
そんな時に、僕と再会したのだ。
同時に、僕も同じような状況にあった。
僕も三年間毎日会っていた女の子と別れた直後だった。
あつ子と僕は、毎週末に会った。最初のうちは、天国のように楽しかった。
しかし、会えば会うほど、二人の心はすれ違うようになった。
あつ子は、常に僕と別れた王子様を比べていた。
僕も、別れた彼女とあつ子を比較して見ていた。
あのラブ・ホテルの夜から、随分と時間が経ってしまったことを、苦い気持ちの中で実感した。
あの日以来、僕達の糸は交わらなかった。
その間に二人が過ごした時間は、全く別のもので、二人の距離は高校時代とは比較にならないほど離れてしまった。
何故か、偶然にもこうして糸が交差したが、それは単なる交差でしか過ぎず、しっかりと絡み合うものではなかった。
会うたびに、喧嘩するようになった頃、僕は二人の関係は「終わった」と思った。
お互いに連絡が途絶えて、半年ほど経ったときに、あつ子から電話があった。
あつ子から沢山レコードや本を借りていたが、それを返して欲しいという用件だった。
僕は、REO SPEEDWAGONとかWILSON BROS.などあつ子の好きなレコードや本を両手に持って、彼女の家の近くの喫茶店に行った。
でも、返すはずのレコードから1枚だけ抜き取った。
それが、寺尾聡の「Reflections」だった。
その「Reflections」は、今でも僕のレコード棚の中にある。
最初は、コーヒーショップで会った。
2度目は、映画を見に行った。あつ子が買って来てくれたマックのハンバーガーを齧りながら映画を見た。
3度目に、僕の馴染みのBARに行った。
あつ子は、ジャージ姿が多かった高校のバスケ部のあつ子ではなかった。
綺麗にお化粧をし、少しショート丈のスカートに白いブーツを合わせた彼女はとてもファッショナブルで、何の取り柄もないネイヴィーのブレザー姿の自分が恥ずかしいほどだった。
BARでは寺尾聡の「Reflections」が流れていた。
「私、寺尾聡好きなんだ」あつ子が言った。
「Kevin君、寺尾聡に似ているよね」
「えっ・・・」
そんなこと言われたのは初めてだった。
「Kevin君は、高校時代からずっと私の王子様だったんだよ」
「皆でラブ・ホテル行ったことを覚えている?私、Kevin君と一緒になってラッキーだと思った。でも、Kevin君といったら怒ったように黙ったままで、私、すごく寂しかったんだよ」
そう言って、僕の目を覗き込んだ。
その時、僕はカンパリ・ソーダを飲んでいた。
カンパリのグラスを空けてしまう前に、僕はあつ子に酔ってしまった。
そして…、
僕達は、恋に落ちた…
二人は猛スピードで恋に落ちた。それは真実であったが、同時に二人の錯覚でもあった。
あつ子は僕の向こうに別の男性を見ていた。そういう僕も、あつ子の向こうに別の女性を見ていた。
あつ子は、僕のことを王子様と言った。しかし、あつ子には別の王子様が居た。その王子様とは色々な訳があって、別れた。
そんな時に、僕と再会したのだ。
同時に、僕も同じような状況にあった。
僕も三年間毎日会っていた女の子と別れた直後だった。
あつ子と僕は、毎週末に会った。最初のうちは、天国のように楽しかった。
しかし、会えば会うほど、二人の心はすれ違うようになった。
あつ子は、常に僕と別れた王子様を比べていた。
僕も、別れた彼女とあつ子を比較して見ていた。
あのラブ・ホテルの夜から、随分と時間が経ってしまったことを、苦い気持ちの中で実感した。
あの日以来、僕達の糸は交わらなかった。
その間に二人が過ごした時間は、全く別のもので、二人の距離は高校時代とは比較にならないほど離れてしまった。
何故か、偶然にもこうして糸が交差したが、それは単なる交差でしか過ぎず、しっかりと絡み合うものではなかった。
会うたびに、喧嘩するようになった頃、僕は二人の関係は「終わった」と思った。
お互いに連絡が途絶えて、半年ほど経ったときに、あつ子から電話があった。
あつ子から沢山レコードや本を借りていたが、それを返して欲しいという用件だった。
僕は、REO SPEEDWAGONとかWILSON BROS.などあつ子の好きなレコードや本を両手に持って、彼女の家の近くの喫茶店に行った。
でも、返すはずのレコードから1枚だけ抜き取った。
それが、寺尾聡の「Reflections」だった。
その「Reflections」は、今でも僕のレコード棚の中にある。
直木賞!