Ken doc. 犬と猫のブログ

当院での症例や出来事等何でも言っちゃう暴露ページです。自分勝手なブログのためご意見等にはお答えできませんのであしからず。

狂犬病集合予防接種の派遣獣医師として頑張ってきました。

2011-05-11 20:53:13 | 院外活動報告
2011年5月11日


昨日は豊田市藤岡町という所に行ってきました。

藤岡町は豊田市の北部に位置し、そのほとんどが山間部となっています。



午前10時開始でしたが、1時間前に集合場所に着いてしまいました。

かなり時間があるので、いそいそといつものネタ探しのため、写真を取り捲る・・・。



集合場所の藤岡支所です。





今日は台風の影響か、かなり空はご機嫌が悪い様子。

いつ降り出してもおかしくない感じ。



こんな感じ・・・。




っと思った瞬間、バカ雨がドッサリ降ってきた。

急いで車の中に退避。

これから午後3時まで屋根も無いようなところで仕事なのに困ったな。

替えのパンツは持ってきてないなぁ・・・。





開始時刻の15分前になって、どこからとも無く犬を連れた飼主が集まってきた。

こちらも雨合羽を着て準備完了。

飼主も犬もずぶ濡れ。こちらも気にしてなんていられない。

覚悟を決めて、始めようとしてきたら、バカ雨が小雨になってきた。


小雨の中、何とかこなし、次の会場へ移動。

狂犬病集合予防接種は市内を町村ごとに分け、それぞれに約5~10ヶ所程の接種会場を設けて、時間を区切ってその会場を回ります。

大体接種会場になるのはその地区に住んでいる人なら誰でも分かるような公園や公民館の駐車場になることが多いが、「ココどこ?」っというような、ゴミ集積所の前で行うなんて事も珍しくない。



チームは獣医師2名と役所の担当者数名で組み、各々の車で移動する。



もしはぐれたら、迷子というより遭難するな・・・っと思うこともある。


会場はこんな感じ。





ここは古い神社の境内でした。



今日パートナーになっている先生は豊田市開業の稲垣獣医科医院院長の稲垣先生。

写真の中で注射を行っている先生です。

ベテランの先生でとても優しく評判もとても良い先生です。

私自身、お気に入りの先生です。



会場の前はこんな感じ。



山と畑のみ。目印ナシ。

実に長閑な山間の会場。




今日は運が良かったのか、会場移動中は大雨だったが、開始時刻になると小雨になって、なんか変な感じ。

でもおかげで朝はいてきたパンツで帰れました。




トラブルも無く無事終了し、午後4時に病院へ戻れたので、何とか午後の診察には間に合いました。





ここで少しグチをこぼしますが、ここ1か月近くまともな休みを取ってない。

やや疲れが溜まってきた感じ・・・。



明日は休診日なので、今夜はゆっくり休みたい!!!




・・・っと言いたいところですが、今日は当直3連チャンの2日目。


この当直が精神的にも肉体的にも結構ツライ・・・。




当直医は緊急外来診療の対応や入院患者の治療を行います。

ですからオフはもうしばらく延期です。



明後日は桑原先生と当直交代なので、明後日の夜にゆっくり寝ることにします。



文責:佐羽

子宮蓄膿症の重症例

2011-05-10 20:14:37 | 症例報告
2011年5月10日


久しぶりの投稿です。
ここしばらく忙しさにかまけて、サボっていました。

今回は子宮蓄膿症の重症例の報告です。


症例は5歳のシーズー犬の女の子。
当院へは今回が初めてのワンちゃんです。


主訴は一週間前から食欲が無く、2日前から下痢が続いているとのこと。

触診にて腹部緊張が強く、やや腹囲増大。
ちょっとお腹が痛そうだな。

発熱なし。
聴診上も問題なし。
可視粘膜も正常。

未避妊犬でしたので、まず子宮蓄膿症を疑い、診察中にその場で腹部エコー検査を実施しました。



お腹の中は蓄膿状態の子宮でいっぱいでした。



問診ではこの疾患でよく聴取される「多飲多尿」は無いとのこと。

開放性子宮蓄膿症(陰部から膿液が漏れ出てきている)ではなく、今回の症例のように閉塞性子宮蓄膿症の場合は、飼主が気が付かないことが多く、発見が遅れることが少なくない。

他の情報は一か月前に生理(発情出血)があったこと。



これが最終的なきっかけとなりました。

この疾患は発情出血後に認められることが多い。




即入院で治療開始です。
静脈ラインを確保し、輸液の準備をします。
抗生剤はこの輸液ラインから投与します。
敗血症に対処するため、イミペネム系を選択しました。

手術の準備と他の検査を同時にして行くことにしました。

検査の結果、胸腹部レントゲンでは特筆すべきことなし。
血液凝固検査でも異常認めず。
血液生化学、血算も問題なし。

おおっ!!結構直ぐにでも手術行けるかもと思った矢先に甲状腺ホルモン検査にて

T4=0.9μ/dl


ビミョウに低いなぁ・・・。

卵巣や子宮等の生殖器の病気や腹部にかなりの不快感や痛みなどのストレスの多い疾患では、この甲状腺ホルモンの血中濃度の低下が認められることが意外と少なくない。このような状態で手術や麻酔によって、更に身体的、精神的ストレスをかけることで甲状腺機能低下症が発症し、てんかん発作、嗜眠傾向、麻酔覚醒遅延、種々の術後合併症を起こす症例を何度も見て来た。



でも様子見ている場合では無いので、甲状腺ホルモンのプレ投与で、手術にGOサインを出しました。


執刀と助手を桑原先生と私で、麻酔管理及び外回りを河野主任動物看護士と島田動物看護士の計4人のチームで行いました。




手術を開始して数分も経たないうちにチームのみんなが唖然。



お腹の中に既に膿が出ている・・・。




本当に微量だが、間違いなくこれは子宮から出た膿液だと直ぐに分かった。


「おいっ!!どこからだ!!!」

よく探してみるも明確な裂開部は見当たらない。

子宮頚管部に近いところまで子宮を引きずり出して見ると、なんと子宮頚管に近い子宮体の裏側にピンホールを発見。



腹腔内にこれ以上漏れ出ないようにしながら摘出を開始。


今回も超音波メス「SonoSurg X」が大活躍。
間膜の剥離や切開が本当にストレス無くスムーズに行えるので、非常に便利。



子宮間膜も重度の炎症。




腹腔内洗浄に使用した滅菌済生理食塩水のパックは7パック。

このようなケースはこの腹腔内洗浄を手を抜かず、シッカリしかもガッチリ、これでもかって言うぐらいやることで予後の明暗を分ける。

腸から腹膜から揉み荒いをするように洗浄し、膿をキレイさっぱりお腹の中から洗い流しました。

吸引ビンはあっと言う間に一杯になってしまたった。

手際良く閉腹し、今回も難なく無事終了。

気が付けばもう日が変わる少し前。

今日も良く頑張ってくれた優秀なチームスタッフに感謝!!!



摘出した子宮です。




ピンホールのような穿孔部位。






術後の敗血症が心配されましたが、これでもか腹腔内洗浄と抗生剤が良かったのか、2日目からガッツリご飯を食べていました。

術後の経過も順調で、5日目には無事退院されました。

若いから回復も早いですね。



3日後に検診予定です。
甲状腺機能低下症の治療は継続して行うことにしました。



ピンホールほどの穿孔だったけど、もしあの時手術を決行していなかったら、もしあの日飼主が病院へ来院されず翌日まで様子を見ていたら今頃どうなっていたか分からないなぁ・・・と考えながら退院を見送りました。


「動物の命も飼主と獣医師の決断次第という事か」としみじみと思ってしまった。


この子は本当に幸運だったな・・・。



文責:佐羽