読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

東京都市計画の遺産~防災・復興・オリンピック 越沢明2014

2015年01月05日 | 国土・都市(国土政策局・都市局)
 大正昭和初期に東京市長を2度務めた永田秀次郎、帝都復興院や内務省の都市計画技師近藤謙三郎、民主導の区画整理や道路整備に尽力した鈴木喜平(歌舞伎町)、窪寺伝吉(新井薬師)、坂井虎三郎(中杉通り)らに光を当てている。
 他方、東京の戦災復興事業が、他の都市に比べ立ち上がりが遅れ、しかも大幅に縮小され、広範囲な木造密集市街地や都市計画道路の未整備という「負の遺産」を今日まで残したことを指摘、その原因として、安井誠一郎知事の熱意のなさと都庁内部の組織の問題を挙げる。さらにその後の東京都の不作為も。

☆教訓
 行政は頑張るべき時には頑張らないと将来に大きな禍根を残す。(p83)

☆この本で得た東京の都市計画トリビア
・戦災復興計画でJR線沿いの緑地帯が計画されたが、計画縮小により大半が廃止。残った4か所のうちの2つが渋谷の宮下公園と池袋駅前公園。
・中杉通りはもともと空襲による大火を防ぐため計画され、駅南は1952年、駅北は1981年完成だから私が近隣に住むちょっと前。

(感想)
 都市がこれから成長発展するときに、都市計画の予算や努力を惜しんで事業を縮小すると、無秩序な密集市街地が形成され、劣悪な住環境、交通渋滞、災害に対する脆弱性など、将来に負の遺産を残すことを本書は教えてくれる。
 逆に、都市が成熟から縮小ステージに入るときに、過大な都市計画事業を行うと、住民の生活再建を阻害したり、自治体の財政負担を増すことを、塩崎『復興災害』は教えてくれた。


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