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◆ファラデーの法則 ファラデーの法則の重要な点は、電子のモル数と電気量とをつなげる橋渡し的存在だということです。
ここがつながることによって、電気分解での計算を可能にしているのです。
では具体的にどういうことなのかというと、
電子1mol(1F) = 96500C
これがファラデーの法則の要です。
電子が6.0×10個集まると、それが 96500 C(クーロン)もの電気量に相当するということ。
ところで、この"1 F(ファラデー)"なんですが、これは別に難しいことをいっているのではなく、モルと全く同じ意味なんです。
昔からの慣習として、電子のモル数のときだけは"mol"ではなくてこの"F"を使おうってことだったんですね。
ところが、結局"mol"と同じならわざわざ"F"を使わない方がシンプルでいいし、混乱を防げる、ということになって、僕の世代の次からこの"F"という単位は教科書からなくなりました。
ただ、やはり過去問等で、どうしても"F"が出てきてしまうのでその意味を知っておいてください。
といっても"mol"と全く同じなんだな、と思っていればそれで十分です。
さて、電気量と電流の関係式を確認しましょう。
電気量(C)=電流(A)×時間(秒) 電流1Aが1秒流れたときの電気量が1Cだということです。
ここで気をつけてほしいのは、時間の単位が「秒」だということ。
これを忘れて「時間(hour)」や「分」のまま計算してしまうミスがけっこう多かったりします。
以上の知識を総動員して問題を解くことになります。
典型的な問題を解きながら、その考え方をマスターして下さい。
[例 題]
右図のような装置を組み立て、1.0Aの電流を流して電気分解を行ったところ、電解槽Aで気体が標準状態で112ml発生した。
発生した気体は水に溶解しないものとして、次の問いに答えよ。
問1 それぞれの電解層の陽極はそれぞれどb[1]~]フうちから選べ。
問2 [1]~[4]の極板で生じるイオン反応式をそれぞれ書け。
問3 電流を流した時間を求めよ。
問4 電解槽Aで析出した銀の質量を求めよ。
問5 電解層Bで発生した気体の合計の標準体積での体積を求めよ。
問6 電解槽の電解液を500mlとすると、電気分解後のpHはいくらか。ただし、log2.0=0.3 とする。
[解 説]
問1
図を見てすぐに陽極と陰極の区別ができないといけない。
そこで知らなくてはいけないのが、「電池の正極は電解槽の陽極と、電池の負極は電解槽の陰極とつなげる」ということです。
陽極で電子を放出する酸化反応、正極で電子を受け取る還元反応が起こるんですから、この組み合わせでないといけないわけです。
負極と陰極についても同様で、負極で電子を放出して陰極で電子を受け取るのでスムーズに反応が進行します。
もし、陽極と負極をつなげると、お互い電子を放出するのでおかしなことになってしまいます。
以上、 …ー が陽[2]、[4] 、?が陰極です。
問2
[1] 2H2O→O2+4H++4e-
[2] Ag++e-→Ag
[3] 2Cl-→Cl2+2e-
[4] 2H2O+2e-→H2+2OH-
問3
ここからが電気分解のメインである計算問題です。
与えられているデータは電流1.0Aと発生した気体112mlの2つ。
これをどうつなぎ合わせればよいのでしょう?
それを可能にするのが「ファラデーの法則」なんです。
すべてのデータを「電子のモル数」を介する事でつなぎ合わせる事ができます。
ですから常に考えなくてはいけない事は、「この電気分解でいったい何molの電子が流れたか」ということです。
問題文で言っている気体は、もちろん酸素のことです。
その反応式である"2H2O→O2+4H++4e-"から、重要な情報が得られます。
それは、「酸素1molが発生するには電子が4mol必要」だということです。
これこそが電気分解で中核をなす大事な考え方なんです。
モル比が係数比と同じになる、という化学での基本的な考え方こそがここで威力を発揮します。
標準状態では、あらゆる気体が22.4l(=22400ml)となるので、112mlは112/22400=5.0×10molに相当します。
ここで、「酸素1molが発生するには電子が4mol必要」ということは、電子のモル数は酸素の4倍だとわかる。
よって電子のモル数は、 5.0×10×4=2.0×10(mol) この装置は直列です。
直列ではすべての極板に流れる電流(電子)は等しい。
ということは、すべての電極に電子 2.0×10-2molが流れている、つまり電池から2.0×10-2molの電子が流れたんだとわかる。
ただし、これはあくまでも直列での考え方です。
ときどき応用問題で並列構造が出てきてきます。
並列では、それぞれの電解槽に流れる電流の和が電池からの電流に相当します。
ですから、直列と違い、電解槽ごとに流れる電子数が異なります。
この点で直列とは異なることを覚えておきましょう。
直列構造→すべての電極および電池に流れる電子のモル数は等しい 今求めたいのは電流を流した時間です。
これをt(秒)とおくと、流れた電気量は 1.0×t = t (C) ここでファラデーの法則の登場です。
これから、電気量t(C)に相当する電子のモル数は、t/96500 (mol)だとわかる。
この数値が2.0×10-2になるので、 2.0×10-2= t/96500 t=1930(秒) 1930秒は32分10秒に等しいので、これが答えとなります。
もちろん秒のままでもよいです。
問4
一度流れた電子のモル数がわかってしまえば後は簡単です。
銀の析出した極板?でも2.0×10-2molの電子が流れたのですから、これから銀の質量を求めればいい。
反応式"Ag++e-→Ag"から「電子1molが流れると銀が1mol析出」とわかる。
つまり電子のモル数と銀のそれは等しい。
よって銀のモル数も2.0×10-2mol。
あとはこれを質量にするために原子量をかければいい。
2.0×10-2×108=2.16(g)
問5
電解槽Bでは陽極 [3] から塩素が、陰極 [4] から水素が発生します。
それぞれ反応式"2Cl-→Cl2+2e-" "2H2O+2e-→H2+2OH-"から、「塩素1mol発生には電子2mol必要」、「水素1mol発生には電子2mol必要」だとわかる。
これはちょっと視点を変えると「電子1mol流れると塩素1/2mol発生」、「電子1mol流れると水素1/2mol発生」ということと同じ。
ということは、「電子1molが流れると両極合わせて1mol(1/2+1/2)の気体が発生」と考えてしまってよい。
電子は実際には2.0×10-2mol流れたので、発生した気体のモル数は同じく2.0×10-2mol。
これを体積に直して、 2.0×10-2×22400=448(ml) このように体積なので一緒に計算して構わないわけです。
ちなみに、もし「質量は何gか」だったらそれぞれの分子量をかけなくてはいけないので一緒にはできません。
問6
ちょっとした応用問題ですが、「酸・塩基」でのpHに関する基本知識がしっかりしていれば難しくないです。
忘れてしまった人は、【水素イオン濃度とpH】で確認してみてください。
B槽では陰極の [4] で、"2H2O+2e-→H2+2OH-"から水酸化物イオンOH-が放出されていることがわかり、これが液性をもともとの中性(NaClaqだから)から塩基性に変えていることが分かります。
電子が2.0×10-2mol流れたので、反応式からOH-も同じ2.0×10-2mol生成したとわかる。
よってこれを濃度に直した[OH-]は [OH-] = 2.0×10-2×1000/500 = 4.0×10-2(mol/l) pOH = -log(4.0×10) = 2-log4 = 1.7 よってpH = 14 - pOH = 14 - 1.7 = 12.3。
[解 答]
問1
[1]、[3]
問2
[1] 2H2O→O2+4H++4e-
[2] Ag++e-→Ag
[3] 2Cl-→Cl2+2e-
[4] 2H2O+2e-→H2+2OH-
問3
32分10秒
問4
2.16g
問5
448ml
問6
12.3
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◆ファラデーの法則 ファラデーの法則の重要な点は、電子のモル数と電気量とをつなげる橋渡し的存在だということです。
ここがつながることによって、電気分解での計算を可能にしているのです。
では具体的にどういうことなのかというと、
電子1mol(1F) = 96500C
これがファラデーの法則の要です。
電子が6.0×10個集まると、それが 96500 C(クーロン)もの電気量に相当するということ。
ところで、この"1 F(ファラデー)"なんですが、これは別に難しいことをいっているのではなく、モルと全く同じ意味なんです。
昔からの慣習として、電子のモル数のときだけは"mol"ではなくてこの"F"を使おうってことだったんですね。
ところが、結局"mol"と同じならわざわざ"F"を使わない方がシンプルでいいし、混乱を防げる、ということになって、僕の世代の次からこの"F"という単位は教科書からなくなりました。
ただ、やはり過去問等で、どうしても"F"が出てきてしまうのでその意味を知っておいてください。
といっても"mol"と全く同じなんだな、と思っていればそれで十分です。
さて、電気量と電流の関係式を確認しましょう。
電気量(C)=電流(A)×時間(秒) 電流1Aが1秒流れたときの電気量が1Cだということです。
ここで気をつけてほしいのは、時間の単位が「秒」だということ。
これを忘れて「時間(hour)」や「分」のまま計算してしまうミスがけっこう多かったりします。
以上の知識を総動員して問題を解くことになります。
典型的な問題を解きながら、その考え方をマスターして下さい。
[例 題]
右図のような装置を組み立て、1.0Aの電流を流して電気分解を行ったところ、電解槽Aで気体が標準状態で112ml発生した。
発生した気体は水に溶解しないものとして、次の問いに答えよ。
問1 それぞれの電解層の陽極はそれぞれどb[1]~]フうちから選べ。
問2 [1]~[4]の極板で生じるイオン反応式をそれぞれ書け。
問3 電流を流した時間を求めよ。
問4 電解槽Aで析出した銀の質量を求めよ。
問5 電解層Bで発生した気体の合計の標準体積での体積を求めよ。
問6 電解槽の電解液を500mlとすると、電気分解後のpHはいくらか。ただし、log2.0=0.3 とする。
[解 説]
問1
図を見てすぐに陽極と陰極の区別ができないといけない。
そこで知らなくてはいけないのが、「電池の正極は電解槽の陽極と、電池の負極は電解槽の陰極とつなげる」ということです。
陽極で電子を放出する酸化反応、正極で電子を受け取る還元反応が起こるんですから、この組み合わせでないといけないわけです。
負極と陰極についても同様で、負極で電子を放出して陰極で電子を受け取るのでスムーズに反応が進行します。
もし、陽極と負極をつなげると、お互い電子を放出するのでおかしなことになってしまいます。
以上、 …ー が陽[2]、[4] 、?が陰極です。
問2
[1] 2H2O→O2+4H++4e-
[2] Ag++e-→Ag
[3] 2Cl-→Cl2+2e-
[4] 2H2O+2e-→H2+2OH-
問3
ここからが電気分解のメインである計算問題です。
与えられているデータは電流1.0Aと発生した気体112mlの2つ。
これをどうつなぎ合わせればよいのでしょう?
それを可能にするのが「ファラデーの法則」なんです。
すべてのデータを「電子のモル数」を介する事でつなぎ合わせる事ができます。
ですから常に考えなくてはいけない事は、「この電気分解でいったい何molの電子が流れたか」ということです。
問題文で言っている気体は、もちろん酸素のことです。
その反応式である"2H2O→O2+4H++4e-"から、重要な情報が得られます。
それは、「酸素1molが発生するには電子が4mol必要」だということです。
これこそが電気分解で中核をなす大事な考え方なんです。
モル比が係数比と同じになる、という化学での基本的な考え方こそがここで威力を発揮します。
標準状態では、あらゆる気体が22.4l(=22400ml)となるので、112mlは112/22400=5.0×10molに相当します。
ここで、「酸素1molが発生するには電子が4mol必要」ということは、電子のモル数は酸素の4倍だとわかる。
よって電子のモル数は、 5.0×10×4=2.0×10(mol) この装置は直列です。
直列ではすべての極板に流れる電流(電子)は等しい。
ということは、すべての電極に電子 2.0×10-2molが流れている、つまり電池から2.0×10-2molの電子が流れたんだとわかる。
ただし、これはあくまでも直列での考え方です。
ときどき応用問題で並列構造が出てきてきます。
並列では、それぞれの電解槽に流れる電流の和が電池からの電流に相当します。
ですから、直列と違い、電解槽ごとに流れる電子数が異なります。
この点で直列とは異なることを覚えておきましょう。
直列構造→すべての電極および電池に流れる電子のモル数は等しい 今求めたいのは電流を流した時間です。
これをt(秒)とおくと、流れた電気量は 1.0×t = t (C) ここでファラデーの法則の登場です。
これから、電気量t(C)に相当する電子のモル数は、t/96500 (mol)だとわかる。
この数値が2.0×10-2になるので、 2.0×10-2= t/96500 t=1930(秒) 1930秒は32分10秒に等しいので、これが答えとなります。
もちろん秒のままでもよいです。
問4
一度流れた電子のモル数がわかってしまえば後は簡単です。
銀の析出した極板?でも2.0×10-2molの電子が流れたのですから、これから銀の質量を求めればいい。
反応式"Ag++e-→Ag"から「電子1molが流れると銀が1mol析出」とわかる。
つまり電子のモル数と銀のそれは等しい。
よって銀のモル数も2.0×10-2mol。
あとはこれを質量にするために原子量をかければいい。
2.0×10-2×108=2.16(g)
問5
電解槽Bでは陽極 [3] から塩素が、陰極 [4] から水素が発生します。
それぞれ反応式"2Cl-→Cl2+2e-" "2H2O+2e-→H2+2OH-"から、「塩素1mol発生には電子2mol必要」、「水素1mol発生には電子2mol必要」だとわかる。
これはちょっと視点を変えると「電子1mol流れると塩素1/2mol発生」、「電子1mol流れると水素1/2mol発生」ということと同じ。
ということは、「電子1molが流れると両極合わせて1mol(1/2+1/2)の気体が発生」と考えてしまってよい。
電子は実際には2.0×10-2mol流れたので、発生した気体のモル数は同じく2.0×10-2mol。
これを体積に直して、 2.0×10-2×22400=448(ml) このように体積なので一緒に計算して構わないわけです。
ちなみに、もし「質量は何gか」だったらそれぞれの分子量をかけなくてはいけないので一緒にはできません。
問6
ちょっとした応用問題ですが、「酸・塩基」でのpHに関する基本知識がしっかりしていれば難しくないです。
忘れてしまった人は、【水素イオン濃度とpH】で確認してみてください。
B槽では陰極の [4] で、"2H2O+2e-→H2+2OH-"から水酸化物イオンOH-が放出されていることがわかり、これが液性をもともとの中性(NaClaqだから)から塩基性に変えていることが分かります。
電子が2.0×10-2mol流れたので、反応式からOH-も同じ2.0×10-2mol生成したとわかる。
よってこれを濃度に直した[OH-]は [OH-] = 2.0×10-2×1000/500 = 4.0×10-2(mol/l) pOH = -log(4.0×10) = 2-log4 = 1.7 よってpH = 14 - pOH = 14 - 1.7 = 12.3。
[解 答]
問1
[1]、[3]
問2
[1] 2H2O→O2+4H++4e-
[2] Ag++e-→Ag
[3] 2Cl-→Cl2+2e-
[4] 2H2O+2e-→H2+2OH-
問3
32分10秒
問4
2.16g
問5
448ml
問6
12.3
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