カヤ日記

活動する研究者、かやちゅ。@カヤニストの行動記録
カヤネズミの研究&保護活動や野生生物の保全に関する話題をつれづれに

甲賀市レッドリスト2012公開

2013-03-12 | 研究日誌

滋賀県の甲賀市が改訂版レッドリストを公開。→甲賀市レッドリスト2012
カヤネズミは前回(2007年)の「要注目種」から「絶滅危機増大種」(*)にランクアップ。
選定理由として、半自然草地の減少があげられている。
「農地付近のススキ, チガヤ草地など定期的に手が入る半自然草地が減少していることから要注目種より移動した」哺乳類概要(pdf))

2003-2004年に滋賀県でカヤネズミの広域調査をした時に、甲賀市でも何カ所か調べた。
今はどんな状況になっているのだろうか。
時間が取れれば、かつての調査地点を再訪してみたい。

*「絶滅危機増大種」・・・生息地が数ヵ所より多いが, 生息地が確実に減少している種


全国カヤマップ2012近畿版

2013-02-25 | 研究日誌

3月3日(日)に大阪で開催される関西自然保護機構2013年度大会でポスター発表します。
2009年から2012年に市民のみなさんから寄せられた情報と、私自身のフィールド調査をもとに、近畿地方の最新4年分の調査結果をまとめました。
演題:近畿地方におけるカヤネズミの生息状況~「全国カヤマップ2012近畿版」

「全国カヤマップ」は1999年から実施してきましたが、マンパワー不足のために、2008年度版を最後に情報の更新を停止していました(→謝辞にかえて)。
ですが、以降も毎年数十件の生息情報が寄せられており、個人研究の一環として、少しずつ整理を進めてきました。
情報提供いただいたみなさまには、お礼を申し上げるとももに、情報の公開が遅くなりましたことをお詫びします。

今回発表するカヤマップ2012近畿版は、後日インターネットで公開します。
他の地域の調査結果についても、なるべく早く公開できるように準備を進めていきたいと思います。

なお、近畿地方におけるカヤネズミの分布の現状については、関西自然保護機構会誌第39巻2号に掲載されました。おおむね1970年代~2006年までの生息情報を収録しています。
大会当日、ポスター会場に別刷りを持参しますので、ご入り用の方はお声かけ下さい。

以下、大会の案内です。
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関西自然保護機構(KONC)2013年度大会
●日時:2013年 3月3日(日) 午前10時~午後5時
●会場:大阪市立自然史博物館 講堂、及びその前
●参加費:無料。ただし植物園に入る場合は入園料、博物館の展示をご覧になる
場合は入館料が必要。
●主催:関西自然保護機構、大阪市立自然史博物館

●プログラム
 10:00~17:00 ポスター掲示
<午前>
 10:00~10:30 2013年度 総会 
 10:30~10:45 2012年度 四手井賞 授賞式
 10:45~11:30 四手井賞授賞記念講演
◆受賞論文:「大阪府南部におけるコガタブチサンショウウオHynobius yatsui
Oyama)の分布と生息環境」秋田耕佑・平井規央・石井実 (大阪府立大学大学院生
命環境科学研究科)

 11:30~12:30 ポスター発表 コアタイム
<昼休み>
<午後>
 13:00~14:45 2012年度研究助成事業 受給者研究報告会
◆1)「兵庫県宝塚市西谷地区における準絶滅危惧種スズサイコ Vincetoxicum
pycnostelmaの繁殖特性および訪花昆虫相」中濱直之(京都大学大学院農学研究
科森林科学専攻森林生物学教室)
◆2)「タコリグ式釣獲法によるオオクチバス駆除技術の開発」
 小西 雅樹(近畿大学バスバスターズ)
◆3)「大阪府河内長野市における希少魚類の生息調査とその保全に関する研究」
大門 聖(近畿大学大学院農学研究科農業生産科学専攻・南河内水生生物研究会)
◆4)「香川県小豆島における淡水魚類相」
井藤 大樹(近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻水圏生態学研究室)

 15:00~16:45 緊急シンポジウム「中池見湿地の保全と新幹線建設問題」
  15:00~「趣旨説明」村上興正(京都精華大学)
  15:10~「アセスの内容並びに今期計画の概要と問題点」笹木智恵子
(NPO法人ウエットランド中池見)
  15:30~「水生動物から見た中池見湿地」平井規央(大阪府立大学生命環境
科学研究科)
  15:50~「中池見湿地の植物」角野康郎(神戸大学理学部)
  16:10~「総合討論;新規アセスの必要性について」
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改訂版富山県レッドデータブック

2012-09-08 | 研究日誌

「富山県の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブックとやま2012」が発行された。
2002年度に初めて県版RDBが発行されて以来、10年ぶりの改訂。
カヤネズミのランクは、前回は「情報不足」だったが、今回新たに「準絶滅危惧」に指定された。
該当項目のページには、私が提供したカヤネズミの写真を使っていただいた。
 
前回のRDBが発行された翌年(2003年)に、富山県でカヤネズミの生息調査を行った。
これまでカヤネズミの生息が確認されていないとされてきた富山県で巣が見つかったという情報がRDBに記載されたためで、どんな生息環境なのか、ぜひ自分の目で見てみたかった。
カヤネットで有志を募り、富山市ファミリーパーク、ねいの里と合同調査を行い、カヤネズミの新産地を発見し、県内で初めて繁殖を確認した。
その報文が、改訂版RDBにおいて、カヤネズミの参考資料として使われている(→富山県のカヤネズミ)。

カヤネズミが準絶滅危惧種に記載されたことは、決して良いことではないが、少なくとも私たちの調査によって、生息状況の評価に貢献できたことは良かったと思う。

カヤネズミに限らず、野生動物の生息状況は、現地調査による地道なデータの積み重ねでしかわからないことがたくさんある。
しかし、開発に絡む調査は別にして、現地調査はボランティアレベルで行われていることが多く、なかなか進まないのが現状だ。

今回の改訂版発行で、さらにカヤネズミも含めた富山の生き物の保護保全が進むことを願う。

「富山県の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブックとやま2012」
富山県生活環境文化部自然保護課 2012年
(PDF)改訂版レッドデータブックとやまの発刊について - 富山県
県レッドデータ初改訂 18種絶滅 248種増899種を選定(中日新聞、2012/9/1)


暑中お見舞い&近況報告

2012-07-17 | 研究日誌

暑中お見舞い申し上げます。
京都は、山鉾巡行が終わり、梅雨も明けていよいよ夏本番です。

このたび、滋賀県立大学環境科学部の客員研究員に着任しました。
東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)とは兼任になります。

5月に、CSISのO先生と今後の研究方針を相談した結果、GISを使える環境が近くにあった方がいいでしょうということになり、学位を取得した滋賀県立大でGIS関連の研究を進めていくことになりました。

思いがけず、2つの大学に籍をおいて研究を進めることになりましたが、積極的に取り組んでいきたいと思います。


頭骨標本(経過その1)

2012-06-17 | 研究日誌

先日処理したカヤネズミの頭骨(→仮剥製作り)、ポリデント溶液に浸けてから1週間経ったので、溶液の入れ替えを行った。
溶液の入れ替えの際に、経過の写真撮影。 

漂白前(6月10日)。
取り切れなかった組織がこびりついた状態。頭骨自体も黄ばんでいる。

漂白7日目(6月17日)。かなり白くなった。
脳髄を取り出す際に、下顎を少し傷つけてしまい、下顎の一部がはみ出して見える。
まだ少し黄ばみが残っているので、もう少しこのまま様子見。

小動物の骨格標本を作る場合、余分な組織を除去するのにミルワームが使われることもある。
ただ、それだと軟骨組織までぼろぼろになってしまうので、ほねほねくらぶでは、ポリデントを使っているということだった。
ミルワームを飼育した経験から言えば、すぐに増えるし後の処理も大変なので、扱わなくて済むなら幸い。