小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」

小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」の連載と、上場投信日興225の勉強会をします。

小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」二十九

2010-09-23 | 「目覚める人・日蓮の弟子たち」

 法華経の行者 三 *  

「ところで釈迦は後世の人師によって、自分の教えが間違って伝えら
れることを予測し、”法によって人に依らざれ”と最後に言い残して
います。
釈迦の教えを書いた経典によるべきで、後世の学者や僧の言う事を用
いてはならないと、遺言ともいわれる涅槃経で何回も何回も念を押し
ています。
 そこで私が思いますのに、上人は釈迦の経典が真実で後世の人師が
書いた論釈に誤りがあることを見通しておられるが、他の僧は先人の
論釈にこだわり、釈迦の教えを外れているゆえ真実が分かっていない
のではないか、と考えたのです。

 上人が、このことを知っているのは日本国で自分だけだ。
と申されるのも、他の多くの僧はこれを知らないのだ。と暗に指摘さ
れているのだと思います。」

「なるほど、さすが大学どのじゃ、この上はいよいよ上人にお目にか
かって教えを乞うほかあるまい。」

 と小源太は言った。

「それにとの、釈迦は苦しむ民衆を救うために、国の隅から隅まで法
を説いて廻りましたが、今の僧侶のなかで釈迦のように説法して、人
を導いている方は日蓮上人のほかにいないようです。」

「大学どの、よく調べてくださった。ありがたい。
聞くところによると上人の庵で法座というのがあり、だれでも説法を
聞けるそうじゃ、わしは是非それに行ってみようと思うが、そなたも
一緒にどうかのう」

「はい、是非私もそうしたいと思います」

 小源太と三郎は時のたつのも忘れ熱心に話しこんでいた。
気がつくと持仏堂のなかが薄暗くなった。女中の峰が明かりを持って
きて、

「との、お話がはずんでいるようですが、準備のほうも出来ましたの
で奥へおいで下さいますよう、奥方さまが申されています」
と言った。

続く